少女が落とされた場所は無数の彼岸花が咲き乱れる空間であった。

無限に感じる程の空間には、人工物も生命体も他の自然も何一つなく、彼岸花だけしかなかった。彼岸花はほとんどが赤色だったが、青や黒、白など、他の色もわずかに存在していた。

見上げれば空はあるが、朝でも夕方でも夜でもない、不思議で不気味な空模様。風もなく、温度も感じない。音も聞こえない。匂いもしない。食べる物も無い。一向に変わらぬ景色。五感は奪われ、培った経験などまるで役に立たない、気の狂う場所だった。



けれどこの空間には、出口とも言える扉がちゃんと存在していた。その扉こそが、《彼岸花そのもの》である。



どこの世界でもない、どこの時空でもない、どこの時間でもない、この時空の狭間。扉である彼岸花の先には様々な世界へと繋がっていた。

今までに幾もの生命が迷い込み、彼岸花を通し他の世界へと渡って行った。その先の世界は、地獄のような世界、天国の様な世界、幽霊だけの世界、親子で殺し合う世界、狐が支配する世界など、百万の世界が広がっていた。彼岸花の向こうに見る景色は百万通り。故に彼岸花の別名が1000以上もあるのは、この事が関係しているのかもしれない。



けれど、扉は常に開いている訳ではない。鍵がかかり、閉ざされている状態だ。

彼岸花を扉として機能させるには、鍵が必要となる。その鍵とは、《彼岸花の祝福もしくは呪いを受けた自分自身》である。

祝福もしくは呪いを授かるには、触れる、見る、匂いをかぐ、耳を傾ける、食べる等の行動を行いながら《願う》ことである。ただし、何が基準で選ばれるのかは定かではない。触れても駄目だったが匂いをかいでよかった、帰りたいという願いでダメだったが、生きたい願いでは良かった、白い彼岸花は駄目で、青い彼岸花はよかったなど様々で、その全貌が解明された訳でない。



この彼岸花だけの空間から出られる方法はただ一つ。扉である彼岸花に何かを行動しながら願うと、祝福もしくは呪いを授かる。そうすると自身が鍵となり、別世界への扉が開く。これがこの空間の真実。仮にこの空間に名前をつけるなら、《狭間の彼岸花》だろう。





-5:狭間の彼岸花



※大正コソコソ噂話※
サイトのトップページは、この狭間の彼岸花の空間をイメージしています。夢を見に来た自分自身が鍵となり、彼岸花という名の扉(障子)を開く。その先には別の世界(鬼滅)に繋がっている。サイト開設日が7月7日なのは、一年に一度、天の川がつながって彦星と織姫が会える。と同じように、現実と鬼滅の世界が繋がって運命の人と出会える。をイメージ。また、サイト名の背景が星空で、下にスクロールするにつれ、明るい色に変わるのは【夜明け】をイメージしており、鬼滅の世界観を表しています。そしてサイト名は狭間の彼岸花。管理人の名前は花星(夢主の能力花と、夢主の名前の由来が星)。サイト自体が伏線であり、サイトまるごと全て、鬼滅夢連載のために作りました。
関連話 66


ル戻


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -