次に意識が戻った時は、私が剛腕の鬼に殺されている場面だった。
……あぁ死んでしまった…、ダメだったか。もう一度過去に遡ってやり直そう。そう諦めた瞬間。ワタシは驚きに目を見開いた。


なぜなら、私が死から再び甦ったからだ。しかも、鬼の力を奪って。


《ワタシトチガウ……》


予想外の出来事に固まっていたけれど、その内にあぁ、そうか…と気付く。この私も、ワタシと同じ《殺した相手の能力を奪う力》だと思い込んでいたけれど、黒い彼岸花の力は、《死んだ時に強く願った、願望を叶えるための、力を得る》だ。要は死んだ時に何を願っていたかによって、得られる力は違うという事。
ワタシと私は、復讐という根本の願いは一緒だったけれど、死んだ時や状況が違うから、願いに僅かな違いが生じたのだろう。

その僅かな願いの差が、ワタシとは違う、《殺される事で相手の能力を奪う力》になったのか。


「………フフ、スバラシイワ。モウヒトリノ、ワタシ」


虚を見つめ絶望する私を優しく抱きしめた。
どうしたって最初の内は無力だ。それを逆手に取るかのような、素晴らしい能力。強い鬼の能力を奪う時は、殺すより死ぬ方が簡単だ。死んで死んで死にまくれば、あっという間に強くなれる。


来もしない助けを求めるように震える私を、慰めるように頭を撫でた。
私が黒い彼岸花の力に染まる度に、ワタシと私が同一の存在として近づく度に、今だに抵抗してくる花の力を弱めることが出来るのだろう。その証拠に、花の力が弱まっていくのを象徴するように、近くに咲く野花が枯れていく。


「私は……これからどうしたらいいの…。だれか…おねがい。誰か、た」

「タスケテアゲル」

私が祈るように組んだ両手を、黒の左手で上から重ねた。

貴女はただ死ねばいいだけ。そうして強くなったら、ワタシが吸収してあげるからね。ね、それって私にとっても、ワタシにとっても救いになるでしょう。




-9:枯れていく
黒い彼岸花の発動条件は「自身の死」
黒い彼岸花が発動して得られる能力は、「自分が死んだ時に願った内容」で変わる。
関連話 108


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