1:タダイマ

「あ!桜おねえちゃんだ!お帰りなさい!」
「桜おねえちゃん!」

外でお手伝いをしていた花子ちゃんと茂くんが私に気付き、目を輝かせながら一目散に駆け寄ってくる。

「花子ちゃん、茂くんただいまっ!」

一週間ぶりに二人をぎゅっと抱きしめると、お風呂に浸かったかのように全身がぬくもりにつつまれ、自然と言葉がもれ出た。

「あ〜幸せ〜‥‥」
「桜おねえちゃん町はどうだった?お花全部売れた?早く家に入って、お話しようよ!」
「桜おねえちゃん遊ぼうよ!とらんぷ、やろぅ!とらんぷ!」

上目遣いでおねだりをする二人の可愛らしさにほわほわしていると、薪割の途中だったのだろう炭治郎君と竹雄くんが裏庭から姿を現した。

「桜ねーちゃん、お土産は?」

思春期入りたて特有の、ちょっぴり生意気っぽさをもつ竹雄くんはさっそくお土産の催促である。
うん、うん。わかってるよ。素直にお帰りって言うのがなんとなく気恥ずかしいんだよね。と一人何度も頷く。

「竹雄。最初におかえりなさい、だろう」

炭治郎君は困ったように笑いながら竹雄くんにそう言った後、私の前に立ち、世界中の幸せを詰め込んだお日様のように笑った。

「桜さんお帰りなさい」

まだまだ子供らしい竹雄くん達と違い、炭治郎君は大人のようにしっかりしている。竈門家の大黒柱と言ってもいい。だけど、炭治郎君もまだ13歳。《あっち》の常識で例えると中学1年生。本来ならまだまだ遊びたいさかりだろうに、長男だからと妹弟の面倒を見て、家の誰よりも仕事を率先して行う。どんな人にも共感し寄り添う優しさと、助けを求めている人に手を差し伸べられる勇気を持つ子。そして、私の命の恩人。…私の神様。

「ただいま、竹雄くん、炭治郎君」

一週間分の気持ちを込めて笑うと、二人も同じ笑顔を返してくれた。
こうして、私が今《笑顔でただいま》と言えるのは、炭治郎君の、…いや、炭治郎君含め竈門家の皆が、地獄から救ってくれたおかげだ。



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