2:歴史博物館

私はどこにでもいる、普通の高校生だった。
優しくしっかり者の母に、真面目で天然な父。8つ年の離れた弟はやんちゃ者。料理上手な祖母と、頑固な祖父。家族仲は良かったし、半年に一回の家族旅行を思えば、随分と裕福な家庭だったのだろう。
彼氏や親友はいなかったけれど、気心知れた友達が数人。友達と学校帰りに遊んで身のない話で盛り上がったり、家に帰れば家族でご飯を囲いその日あった事を語り合う。家族や友達と過ごす何気ない毎日が楽しかった。幸せだった。
私は、そんな平和な日本で生温く生きる、ごくごく普通の17歳の女子高生だったのだ。………1年前の、あの日までは。




その日は高校の授業の一環で、歴史博物館に来ていた。旧石器時代から現代までの時代の移り変わる暮らしや価値観を分かりやすい説明と共に展示しており、歴史が苦手な私でも楽しむことが出来ていた。特に興味をひいたのが大正時代の服やインテリア。洋と和が混ざり合う独特のモダンな雰囲気は可愛らしく、しばらく大正時代の一角から離れられずにいた。
そのまま時間を忘れるまで堪能し、充分満足できたと顔をあげた瞬間。
ほんの瞬きの間に博物館は消え、私は、彼岸花が無数に咲き乱れる場所に一人立っていた。



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