あれ?寝ちゃった?

※1章67話と68話の間の話





東の町に来る時は毎回お世話になっている老夫婦の経営する宿屋に、今回も宿泊している。俺たちの顔も覚えてもらい、常連になりつつあると言ってもいいだろうか。
今回は一部屋取り、食事も入浴も終えたので、布団を並べ後は寝るだけとなったのだが…。
なんだか妙に落ち着かず、目が冴えてしまい眠れる気が全くしない。
家でも家族と共に桜さんと布団を並べて寝ているはずなのに、変な居心地を感じて意味のない動きばかりをしてしまう。無駄に布団を直したり、荷物を何度も整理したり。こう、胸がそわそわ?ふわふわ?するようだ。

「よし!明日も稼ぐよ〜!お土産いっぱい買って帰るんだから〜!」

桜さんは籠の底から小袋に入った沢山の種を取りだし、俺たちを囲むように種を適当に並べていた。

「よし咲かせるぞ〜!あれれ、でも、もうこんな時間だ〜。これだと、イメージしながら咲かせてたら夜が明けちゃうな〜」

困ったな〜、大変だな〜、と大きな声でわざとらしく独り言を言う桜さん。

「………」
「……」
「……」
「ギュッポンして」
「う……」

咄嗟に呻き声が出てしまったが嫌ではないんだ。ただ、桜さんにその、ぎゅ……とされると、顔も体も燃えてしまうのではというくらいに熱くなり、心臓の音が耳元まで聞こえる程激しく鼓動し、思考は固まり動けなくなってしまうだけなんだ。

「炭治郎君まちでーす」

両手を広げ待ち体制の桜さん。いつもなら、しぶしぶいけるのだけれど、今日はなぜか、宿に二人という事実が頭の中から離れなくて、動けずに固まってしまう。桜さんはしびれを切らしたのか


「う☆そ☆自分から行っちゃうもんね〜」

と言って飛びつくように抱き着いてきた。咄嗟の事だったので反応できずに、桜さんに下敷きにされるように、倒れこむ。

「ふふ。炭治郎君いい匂い〜。お日様と石鹸の匂いだ」

部屋中の花が微かな白い光を纏い、一斉に咲き乱れる。部屋に充満する多様な花の匂いと、桜さんの匂い、柔らかさを感じた以降の記憶はない。






※大正コソコソ噂話※
今日一日とても楽しかったのでテンションが高いままの桜さんと、13歳のまだ初心な炭治郎さん。


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