お風呂でバッタリ☆炭治郎12歳編

※炭治郎12歳。1章13話直後くらい(竈門家で目覚めてから3日以内)の時間軸。





傷口が塞がったとはいえ、怪我が完全に癒えた訳ではないので、お湯に浸かるのは厳禁だと言われ、今現在身を清めるれるのは、この蒸しタオルだけ。

「はぁ……。お風呂入りたい…」

熱めのお湯が入った桶にタオルを浸けて固めに絞り、右腕を擦りつけるように拭く。
清潔を心掛け毎日2回拭いてはいるのだけれど、お湯で身体を洗う解放感には程遠い。
怪我のない下半身だけでもお湯に浸かりたいと思いもするが、今は居候の身。助けてもらいここに置かせてもらっているのに、これ以上の我儘など言えない。


「あとは背中だけ」

なるべく迷惑をかけないように自分一人で何とかしたいのだけれど、どうしたって背中は自分一人では拭けない。してもらってばかりで、申し訳なさが募る。

(早く動けるようになって仕事を探さなきゃ…)

再度深いため息を吐いた時、後ろで戸を引く音がした。お湯の桶を持ってきてくれたのが葵枝さんだったので、疑いもせずに後ろ向きのまま話しかける。

「葵枝さんご迷惑をおかけしてすみません。背中お願いしてもいいですか?」

数十秒待っても反応がなかったので、無意識に長襦袢で胸元を隠し振り向くと、葵枝さんではなく、炭治郎君が立っていた。
私の背中をじっと見つめている瞳には、同情心が色濃く出ている。


「あの〜炭治郎君?そんなに無言で見られると、さすがに恥ずかしいというか……」
「はっ!」
「羽織るから、ちょっと外に出てもらってもいい?」
「す、すみませんでしたぁ!!」

戸が大きな音を立てて閉められた。





もう大丈夫だよ、と声をかければ、真っ赤な顔をした炭治郎君がおずおずと部屋に入ってきた。手に薬と水を持って。

「すみません…女性の…その……を不躾に」

床を見ながら、もごもご話すように謝る炭治郎君に、笑って答える。

「あはは、気にしないで。それよりお薬ありがとう」
「その、……背中はまだ痛みますか?」

飲み終えた苦い薬に顔をしかめていると、炭治郎君は辛そうに眉をよせた。その姿を見て、あぁ、成る程と納得する。先程は、見えてしまった私の背中の傷の酷さにショックを受けたのだろう。

「傷痕結構残ってたでしょ?」

炭治郎君は、痛ましそうに頷いた。

目覚めた直後、合わせ鏡で見た自身の背中には、大きな三つの爪痕があった。縫合され肌は引きつり、固く盛り上がった部分もある。

「痛みもそんなにないし、傷痕も気にしてないから、大丈夫。ありがとう優しいね」

大正時代の価値観はまだよく分からないけど、女性に消えない傷痕が残るのは世間的によろしくないのだろう。
かける言葉が見つからず、哀れむ様子の炭治郎君に、人の痛みに共感出来る優しい子だなと思いつつ、そんなに気に病まなくていいのに、とも思う。

だって、本当に気にしていないのだから。確かに傷痕が一生残るとなったら、流石に落ち込む。けれど、大正時代の治療では無理でも、未来の治療なら、この傷痕を消す事が可能だ。何事も無かったように綺麗さっぱりと。恩返しが終わって、未来に帰ったら直せばいいかと、一人気楽に考えていた。



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