2、炭治郎視点で夢主と二人でお昼寝

「炭治郎君そっち側どうだった?」
「沢山収穫出来ましたよ。桜さんは?」
「私もいっぱい取れたよ!ほら、見て!」

自信満々の笑顔を向けて見せてくれた桜さんの籠の中には、ノビルやフユイチゴ、カキドオシ等の冬の山菜が籠から溢れそうな程に詰まっていた。

「凄い量ですね…」
「でしょ〜!すっごくいい場所見つけたの。あ、でも場所は秘密だからね。今度、私、禰豆子ちゃん、花子ちゃんの女子チームと、炭治郎君、竹雄くん、茂くんの男士チームで、どっちが山菜いっぱい取れるか勝負する約束してるから」
「いつの間にそんな約束を」
「昨日!炭治郎君には今話したからね!決戦の日は4日後だから」

だからか、と思った。昨日から妙に、竹雄と花子が競争心を剥き出しにし「負けないから」と言い合い、桜さんと禰豆子が「4日後のお弁当の中身何にする?」と楽しそうに会話をしていたのは。

「わかりました」

これはまた大騒ぎになりそうだと、笑いながら桜さんに答えた。








今日は桜さんと二人で山菜取りに来ていたけれど、予想より早く終えたので、「あの場所」で少し休憩を取る事にした。

町を眺望出来て、少し視線を上げるだけで雲一つない晴天が視界を埋め尽くす、少し開けたとっておきの場所に座り、桜さんが用意していた、未来のハンカチを巻き付けた竹筒からお茶をくみ、ほっと一息。
今の季節は初冬で、時折吹く風は肌を刺し身をぶるりと震わせる。けれど今は真昼かつ、しっかりと着込んでいる事もあり、柔らかい日差しでだけで充分温かかった。

あったかいお茶と心地良い日差し。隣には桜さん。お風呂に入っているような、ぽかぽかとした温もりを感じながら、景色を眺めた。

「平和だねぇ〜」
「ですね」
「日差しが気持ちいいねぇ〜」
「ですね」
「お茶美味しいねぇ〜」
「ですね」

独り言のような桜さんの言葉に相槌を打ちっていると、桜さんはその内に瞬きがゆっくりとなり、小さなあくびを何度か繰り返した。

「ねむい、ですか?」
「ちょっと…」

ちょっと、という割には、瞼を半分以上閉じてあくびをする様子は、だいぶ眠そうに見えた。

「寝ても大丈夫ですよ。少ししたら起こしますから」
「…それは悪いから、一緒にお昼寝しよう」
「え、」

桜さんはそう言って、俺の肩を押しながら共に地面に倒れ転んだ。地面の草が緩衝材となって衝撃を和らげたので、痛くはない。
桜さんの方を向けば、すぐ目の前に桜さんの顔があって、おもわず固まってしまう。その間に桜さんはひざ掛けに使っていた敷物を、桜さんと俺の胸あたりまで引っ張った後、俺のお腹をぽんぽんと、子供を寝かしつけるように叩いた。

「わ、桜さん…!て、もう寝てる」

桜さんの顔が近すぎて、気恥ずかしさから、もぞもぞと意味もなく身体が動き、視線が彷徨う。けど、気持ちよさそうに寝息をたてる桜さんを見ていると、どうしようもなく幸せな気分になれるのに気が付いた。

木々の葉がささやく音や小鳥のさえずりを聞きながら、桜さんを見ていると、その内に眠気が強くなってきて、心地よさに身を委ねるようにゆっくりと瞼を閉じた。



























「炭治郎!おい、炭治郎ってば!」
「ん……」

目を覚ますと、視界が黄色一色に染まっている。覚醒直後のボヤっとした思考の中、目の前の人物の名前を呼んだ。

「善逸、か…?」
「そうだよ、善逸だよ!!いい加減離せよ!!男にこんな事されても気持ち悪いんだよぉお!」
「……?」

善逸が視線で訴える先を見れば、俺の手は善逸の手を握っていた。しかもかなり強く。

「す、すまない」

力を緩めた瞬間、善逸は勢いよく手を引っ込め、「どうせなら禰豆子ちゃんが良かったーー!!!禰豆子ちゃん俺を癒してーー!」と大騒ぎを始めた。

善逸の声で完全に覚醒した俺は思い出した。そうだ、今は鼓屋敷の任務で三人とも肋骨を折り、藤の家紋の一族である、ひささんの屋敷にお世話になっているのだった。医者に絶対安静だと言われて三日目の今日。昼食を食べた後、少し横になっていたら、いつの間にか寝てしまっていたらしい。

「炭治郎ってばさ、どんな夢みたら俺の手を手跡がつくまで握ってるわけ?!」
「……昼寝をしている夢、を見ていた…」
「昼寝で昼寝の夢を見るなんてどんだけ昼寝が好きなんだよ!昼寝次郎にでも名前を改名しちまえ、紋三郎」
「いや名前全然違うからな?!伊之助お前名前覚える気ないだろう?!馬鹿なのか?!」
「あぁ?!バカとはなんだ?やるのか?!おっらあぁ!!」
「ひーーー!すぐに暴力に走るの反対!」
「うるせぇ!勝負だ!」
「ぎゃー!!」

善逸と伊之助が仲良く楽しそうに外に出ていくのを、ぼうっと眺めていると、いつの間にか箱から出てきた禰豆子が、俺の袖を引っ張っていた。

「ムー…?」

禰豆子が俺の顔を伺うように見つめてくる。どうしたの?と心配しているようにも見えた。

「懐かしい、夢を見たんだ……」

禰豆子の頭を撫でれば、禰豆子は満足気に目を細める。

確か、あの後。起きた時に俺は桜さんの手を握っていて、それを桜さんに揶揄われて……。山菜取りの勝負は引き分けで、家族皆で山菜を食べて………。………。

「むー!むー!」
「あぁ、すまない禰豆子」

思い出に耽っていれば、手が止まっていたらく、禰豆子が不満げな声を漏らした。


「桜さん…」

あのあたたかで幸せな感覚を思い出すように、浸るように、名前をそっと呼んだ。


戻ル


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