逃避行


風を切る音と車両の軋む音
流れていく窓の外
黒と黄色の縞模様を通り過ぎた頃、隣のあなたの手が重なる

(このまま、夜になるまでこうしてようか)

開けた窓から入る空気は幾分か生暖かくなっていて、少ししたら町は春を告げるのだと思い知る。
はらはらと風に散る春の姿が瞼の裏に浮き出て、私の頬を滑り落ちた。

(もし、このまま宇宙に行ってしまえたら、どこかの星で二人きりで暮らそう)
(宇宙で、結婚式したいな)
(そしたら月に向かって永遠を誓うよ)

たくさんの小さい光が紺色に染まってきた空を飾る。終点に着く頃には真っ暗だろうか。
終点に着いたら彼女を攫ってしまいたい。手を離さずに、本当に宇宙に行ってしまいたい。嬉しそうに「もしも」の話をする彼女の横顔がなんとなく泣きそうだから、言いたい事が言えなくなる。
無自覚に強められた握る手は少し痛かったけど、どこか心地良くて、そのまま骨を折って欲しいとまで思った。

(全部分かってるのに、どうしてこんなに離れがたいの)



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