あなたが居るから






一人、夜の誰も居ないテラスのベンチに腰をかける。


満天の星空を見上げ溜め息を一つ吐く。




「はぁ、私、なにしてるんだろう……」





好きになった人がたまたま既婚者。

それを知らずに付き合い、事実を知っても別れることが出来ずにズルズルとここまできてしまった。


別れよう、と何度も思った。



でも無理なんだ。
彼だけが私を必要としてくれる。



「でも、こんな関係やめなきゃ…ね」



最近、一部で彼と私が不倫をしていると言う噂が出てきてしまったのだ。

潮時なのかもしれない…。
























「……まだ帰ってなかったのか」



後ろから突然かけられた声に驚き、振り返るとそこには懐かしの顔。
候補生時代からの先輩のクラサメが立っていた。





「クラサメさん、お久しぶりです」


「まだ帰らないのか?」



そう言うと彼は私の隣りに腰を降ろす。




「クラサメさんこそまだ帰ってなかったんですか?」


「まあ、な」




ゆっくりとした静かで優しい時間が流れる。

彼と居ると昔からそうだった。


朱雀四天王と呼ばれていた彼、たしか私の初恋は彼だった。


でも初恋は実らないとよく言う。
それは本当だ。

私の場合は気持ちすらも伝えることが出来なかった。



お互い軍に入ってからはあまり会わなくなり、たまに会うぐらいだった。

軍では孤独だった。


そんな孤独を感じていた私の前に現われたのが今付き合っている彼だったのだ。





「……元気にしていたか」


沈黙を破ったのは彼だった。



「元気ですよ」


なんて嘘を少し笑いながら言うと、彼はまた黙る。



「クラサメさんは相変わらずですね」


そう笑顔で言う私に彼もユリアも相変わらずだ、と言われた。




「元気、ではないだろう?」



そんなことを言う鋭い彼に私は何も言うことが出来なくなった。




そうだ。

彼は候補生時代から鋭くて、いつも私の異変に気がついてくれていたのだった。





「……本当に相変わらずですね」



そう言った私を彼はジーッと見つめた。







「なぁ、ユリア」

「…はい?」





「もう、やめるんだ」





その一言で私はわかった。

クラサメさんは私と彼の不倫関係の噂を、事実を知っている。




「な…に…、言ってるんですか?」



「自分が一番理解しているだろう」





あぁ、一番知られたくなかった人に知られちゃったなぁーなんて思ったりして。

私は返事に困った。








「そんな関係続けていてもお前が辛いだけだろう」


そうは言うけど、わかってはいるけど……





「でも、彼が居なきゃ私は……」






そう言いかけた私に彼は言葉を遮るように優しく言う。





























「……私にしておけ」




クラサメさんが言っている意味がわからなかった。

私は頭ん中が真っ白になってなにも言えなかった。








「……お前のことを守りたいと思っている。辛い想いはさせない」






彼はそこまで言うと一息吐き、私の手を優しく握った。

彼の瞳から目が離せない。


















「ユリア、好きだ。……昔から、な」







いつの間にかポロポロと涙がこぼれ落ちた。

そんな涙を彼はもう一方の手で優しく拭いてくれた。






「クラサメ…さん…っ」



名前を呼ぶと彼は優しく私を引き寄せ、抱き締めると頭を優しく撫でた。


こんなに優しく抱き締められたのも、
こんなに優しく頭を撫でられたのも、

生まれて初めてだった。



クラサメさんの匂いに包まれているうちに涙は収まりはじめ、それと同時に彼への想いが溢れ出した。





「私…もっ、昔からクラサメさんのことが……」


そう言い出そうとしたら、彼は何も言わなくていい、と言って私の頬を撫でた。






「もう、やめられるな?」



そう尋ねる彼に私は大丈夫と、伝える。









だってね、











――あなたが居るから




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また意味のわからないものを産物してしまったー!

候補生クラサメさんは恋に鈍感でヒロインちゃんのことも自分の気持ちにも気付いてなくて。
気付いた頃にはヒロインちゃんに彼氏が出来てて。
でも不倫関係って知ってどうしてもそんな関係はやめさせたくてタイミング見計らってたらいいよ^q^

ただ略奪して欲しかっただけww←

うちのクラサメさんの夢は特殊設定が多いなw


ここまで読んでくださってありがとうございました!



2011/12/07


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