α扱いされているβ会長は弟に甘い(非王道学園α弟×β兄/異母兄弟)
※α弟×β兄(異母兄弟)
非王道学園が舞台ですが、この話ではその要素は薄いです。



 火鉢(ひばち)優作(ゆうさく)は微妙な立場で身動きが取れずにいた。
 物理的にも身体の大きな弟に抱きしめられて動けないが、そういうことではない。
 
 
「秀(しゅう)くん起きなさい」
 
 
 異母兄弟とはいえ、同じベッドで寝起きするのは異常だ。
 優作としては弟に自立して欲しいと思う反面、今の状況にそこそこ満足していた。
 αであり火鉢家の当主として教育されている弟は中学の時に酷い反抗期を迎えた。
 詳細は記憶が飛んでいて思い出せないが監禁されて性的な暴行を受けた。優作の記憶は他人事でそういうことを弟にされた実感はなく具体的なことはぼやけている。
 
 中学のころは避けられていたような気がする弟だが今はもう見ての通りにべったりくっついている。
 これは兄として素直に嬉しい。
 母が違うとはいえ弟と仲違いしたい気持ちは一切ない。
 
 兄とはいえβである優作(ゆうさく)はαである秀作(しゅうさく)の補佐に回る。
 それはこの世界では有り触れた構図だ。
 長男であることよりαであることが優先される。αがいる家庭でβに跡を継がせる家はないだろう。
 
 とくに火鉢の一族はα至上主義の傾向があるのでΩを親に持つ優作は最初から期待されていなかった。
 
 
 この世界にはα、β、Ωという性別がある。
 男女というのは肉体的な特徴に過ぎずそこまで重要視されることはない。
 
 βはβの男女でしか婚姻できない。
 それしか子孫が残せないからだ。
 
 最近ではβとΩでも子供が作れると研究データが出ているがあまり世間で広まってはいない。
 αのためのΩという意識が崩れてしまうとαの数が減ってしまう可能性があるし、αとβによるΩの争奪戦になりかねない。
 
 αはβと子づくりはできない。
 β同士からはほぼβしか生まれない。
 α同士の男女から子供が生まれる確率は極端に低い。

 αとΩの親から生まれるのはαかΩであるのが一般的だ。
 
 優作と秀作はそれでいうと二人ともが希少と分類される事例だった。
 
 αとΩの親から生まれたβである優作。
 αとαの親から生まれたαである秀作。
 
 この国ではαのみ多重婚が認められている。
 優作を産んだΩも秀作の母もαである父の妻として認知されている。
 これはαとΩにある運命の番という絆のせいだ。遺伝子的な共鳴なのか、αとΩは本能で相手を求めてしまう。
 運命の番に出会えない可能性もあるが出会ってしまえば、相手が既婚者であろうとも惹かれあってしまう。
 国の法律や制度というのは大多数の人間であるβが関わって作り上げたのでα用、Ω用なんていう柔軟なものではない。
 社会的に運命の番というのは都市伝説やΩの浮気の言い訳とされていた。
 長いこと自分たちの身体の作りを人間は把握できていなかったのだ。
 
 だが、研究が進むにつれて昔から言われ続けていた運命の番というのは本当にいるらしいとなり、運命の番を求めるのは人間として当たり前のこととして、既婚者が運命の番と肉体関係を持っても不貞行為に当たらないと裁判で認められた。
 
 そして、αはαの男女で結婚して低い確率とはいえα同士の子をもうけたり、Ωと結婚して子供を作る。人によってはαでもβと結婚するが、たいていの場合は子供ができないのでΩに産んでもらった子供をαとβの夫婦で育てる。
 
 αは優秀なので高給取りになることが多い。複数人の妻を養っていけるので問題はないとされている。
 火鉢の一族はα至上主義なのでΩである優作の生みの親やβである優作は肩身の狭い思いをする、はずだが、父が火鉢の次期当主として目覚ましい活躍を続けるαなので、何も言われたことはない。
 
 秀作の母であるαもΩである優作の生みの親を愛しているらしいのでβであっても親に似ている優作を大切にしてくれる。

 αの持つΩへの愛情深さや保護欲や支配欲といったものがβである優作にはわからない。
 三人の親に愛されるようにして育った優作はβながらに美しく品がよく穏やかで賢い。
 αっぽいΩと思われたり、Ωらしさがあるαと思われる。
 有能すぎるせいかβだと判断されることはほぼなかった。
 
 これがαである弟、秀作に反抗期をもたらせたと優作は断言できた。
 
 十分すぎるぐらいにお金をかけられた教育のおかげで優作はαと見間違えられるほど非凡な成績をおさめたが、α同士の親から生まれた純粋なαともいえる秀作は優作を飛び越えることがない。秀作は優秀だったが、βである兄と同じレベルだと陰口のように囁かれる。
 
 悪いのがαとβ、兄と弟、そういうものを比べて優劣をつけたがる人間なのか、受け流せない秀作の幼さなのか、監禁からの性的暴行という事件は起こってしまった。
 
 記憶がほとんどないので弟を許せないという感覚が兄である優作には湧いてこない。
 自分がされた行為を理解してもそういうことをしなければならないほど追い詰められていた弟がただただ哀れだ。
 
 高校から全寮制の学園に入学して秀作の居ない一年間を送って優作は自分に心の傷といったものを感じなかった。そのため同じ学園に進学したいと口にした秀作を歓迎した。
 
「秀作、早く起きないと一週間はオレの部屋に出入り禁止にするぞ」
「ん」
「……秀くん、はやく」

 優作の頭に顔を押し当てる秀作。弟に頭の匂いを嗅がれているようで優作は微妙な気分になる。
 待っているとうなじを舐めて秀作は寝室から出て行った。きっとシャワーを浴びているのだろう。
 
 いつものように優作はキッチンに立つ。
 
 二年生になり優作は生徒会長になった。会長特典として与えられる一般生徒よりも豪華な部屋に移った。
 家庭にあるようなちゃんとしたレベルのキッチンは使いやすい。以前は狭い流し台があるだけのキッチンとは呼べない水場だった。

 自分と秀作の分のお弁当と朝食を作り終えて一息つく。
 振り向くとシャワーから出てきた姿のまま仁王立ちになっている弟がいる。
 いつもの事として、朝から元気な弟の下半身を慰める。
 
 勃起した秀作のペニスはこのままでは下着の中におさまらないと主張している。
 兄として弟の手伝いをしてやりたいという優しい気持ちではなく放置するのも面倒という後ろ向きな理由で毎朝、手でしごいてやっている。リクエストがあれば口を使ったり他の場所もあるが朝はそこまで時間がないので優作からすると手短に済ませてもらいたい。
 
「秀くん、精液出る?」
「口に出したい。ゆーにぃの口に出す」
「はいはい、お兄ちゃんが飲んであげますよ」
 
 弟のわがままに応えるのも兄の務めだと優作は思っていた。
 外ではαらしく不遜な振る舞いをする弟が舌足らずに昔のように「ゆー兄」と口にするのが優作は少しうれしい。
 
 この全寮制の学園にΩはいない。
 
 αとβだけの学園、それはαにとってもΩにとっても安全な世界だ。αであることで感じるストレスが学園の中では減るのか、秀作はのびのびとしていた。反抗期があったことが嘘のような態度をとる。

 性欲を発散する手伝いを請け負いながら中学よりも今の方がお互いにとっていいのだと優作は思った。
 
 優秀であるせいでαだと勘違いされて生徒会長になどなってしまい苦労も多いが、弟との関係は良好なので今はとても幸せだ。弟の精液が喉を通過していくのを感じながら秀作の番になるΩが現れるまで性欲処理を手伝っていこうと優作は改めて思う。

 すこし、弟が自分の手から離れていくのは淋しいが優秀な弟なので立派な番を見つけるだろう。
 
 とろけた表情で「ゆーにぃ、すき」と言ってくる弟がかわいいので甘やかすのは仕方がない。
 βだからαに対して一歩引くというよりも兄なので弟を優先したいという気持ちが優作にはあった。
 
 
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中学のころの監禁の詳細とか、日常的にエロいことしてる異母兄弟な秀作×優作とか書きたいエピソードはいろいろあったりします。

2018/01/18
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