運命の番には番がいた(平凡オメガ受け)

運命の番(つがい)との運命の出会い
 運命というものがあるのだと、その日に初めて知った。
 
 
 
 知り合いのいない場所で先の未来に不安しかない。
 そんな中で彼と出会った。
 
 目には見えない強い繋がりを相手に感じる。
 これはたしかに運命という言葉がふさわしい。
 酩酊感にふりまわされながら相手を求めた。
 年上の男に恐怖や嫌悪が湧いてこない。
 
 頭が追い付くよりも先に口から好きだとこぼれだす。
 身体の反応はもっと顕著であさましい。
 相手の指先が服を脱がそうと動くだけで我慢がきかない。
 
 ケダモノになった。
 理性を手放した肉体は性衝動に飲みこまれている。
 泣きながら快楽を求めて身体をゆらす。
 すこし動かないようにと叱りつけられたが、無理だ。
 相手のすべてを自分の体で感じていたい。
 出会って五秒もない相手を心の底から愛しいなんてどうかしている。
 熱に浮かされながら、これは間違いだと頭の中で繰り返す。
 
 口から出るのは自分でも驚くほど情熱的な愛の言葉。
 相手もまたストレートに愛をささやき求めてくれる。
 
 お互いのことをまだ何も知らないのに通じ合える不思議な絆。
 
 αと縁がない平凡な見た目のΩはこの世界で底辺の扱いを受ける。
 異世界からやってきた希少価値などあまりない。
 見た目の平凡さのせいで他のうつくしいΩたちの何倍も苦労する、そう言われた。
 
 Ωは発情期(ヒート)中にαにうなじを噛まれると番(つがい)になる。
 お互いの意思は関係せず行動が結果になる。
 愛し合っているかなど身体は考えてはくれない。
 だからαの客を相手に性サービスを提供する店でΩはみんなチョーカーをつける。
 これがこの世界での常識。
 
 下働きとはいえΩなので何があるか分からないと首にチョーカーを巻いていた。
 この場合、それは正解なのか不正解なのか。
 
 理性を失った野獣のように彼がチョーカーを取ろうと暴れる。
 チョーカーを噛めては舐め、舐めては噛む。
 怖いような嬉しいような感情が高まって失禁してしまった。
 それを汚いや気持ち悪いと言うこともなく彼はかわいいと笑う。
 
 こんなにも幸せで満たされたことはない。
 性的な欲求を発散しただけじゃなく精神が安定する。
 
 
「私にはすでに番(つがい)がいるんだ」
 
 
 そう聞くことになるまで、彼の腕の中で幸せだった。
 
 運命というものがあるのだと、その日に初めて知った。
 残酷で悲劇的な運命というのは確かにあるのだ。
 
 
 
2017/08/10
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