・ぽっちゃりな僕の異世界トリップ
ぽっちゃりは自己申告なのでデブ度はご想像にお任せします。
いじめられっこデブが異世界で……というお約束ネタ。
どんな感じでも大丈夫な人向け。
目が覚めるとまったく知らない場所で知らない人たちに囲まれていた。
彼らはみんな裸でそれを恥ずかしいとは思っていないようだった。
そして、僕を心配そうに見て服を脱ぐように態度で示す。
たしかにみんなが裸なので服を着ている僕は目立つ。
扉の方をチラチラと見ながらみんなが僕を急かすので理由は分からないなりに服を脱がなければならないと理解した。裸は恥ずかしいけれど周りの人間がそもそも裸だし、よく分からないから僕は従うしかない。流されやすい性格は今に始まったことじゃない。
僕の脱いだ服は隅っこに隠すように押しやられる。
それを止める言葉も行動も僕にはなかった。
どうして僕がここに居るのか、ここが何処なのか気になるけれど裸の彼らは唸り声のようなものを上げるだけで言葉を発しない。声をかけてみるが反応はない。首を左右に振られるので意味が通じていないというよりも話しかけること自体がマズいのかもしれない。静かにしていろと目で言われている気分になる。
日本人というか東洋系の顔が見当たらないので言葉が通じなくても当たり前かもしれないと納得して僕は部屋の中の状況を確認する。
あかりは窓からの日差しだけ。
天井には電灯はない。
いまは昼前といったぐらい。
太陽の位置が自分の知っているものと同じだとは限らないので過信は出来ない。
ぼんやりと日本ではないのかもしれないと感じていた。
ノックの音がすると思ったら部屋にいた全員が正座をして両手を床につける前傾姿勢になる。
よく分からないなりに僕も真似をしてみた。
開く扉にドキドキする。
「よぉ、犬ども!! 元気かいっ!!」
ウエスタンスタイルとでもいうのか日本で普通に歩いている人のファッションではない西部のガンマン風なおじさんが現れた。場所が場所ならこういう人も日本にいるのかもしれない。僕に馴染がないだけかもしれない。
どこからどう見ても海外の人なのに流暢な日本語を話している。
滑らかな発音に濃い顔でも日本生まれ日本育ちで英語ができないというタレントを思い出す。
目の前のウエスタンスタイルなおじさんもそのタイプかも知れない。
僕は気分が上向きになりここが何処なのか声を上げかけた。
それは僕の手を隣にいた小さな子がつかむことで出来なくなった。
咎めるように首を横に振られて、姿勢を低くするように手を引っ張られるので僕は従った。
どうしてなんでと思いはするけれど彼の表情から僕をハメようとしているようには見えない。
むしろ、助けてくれているように感じた。
こういう直感を僕は外さない。
僕は遺伝的なものなのかどうにも痩せにくい。
気を付けて食べていても母に似てふくよかな体型になってしまう。
おばあちゃんは孫である僕にケーキやお菓子なんかを食べさせることをライフワークにしているので物心ついたときには人よりもぽっちゃりな感じの身体が出来上がっていた。
小学校の頃、男子はみんな僕のお腹や二の腕をにぎっては「やわらか〜い」と笑ってた。
嫌な笑いじゃない。「この感触いいな」なんて言われたり「女より断然間宮だよな」と抱き着かれたりする。
たぶん、大きなぬいぐるみを抱っこする感覚。
照れくさかったが好かれているのは嬉しかった。
女の子もみんな「えー、なにそれ」なんて言いながら笑っていた。
僕につらくあたる子はひとりもいなかった。
間違いなく小学校の頃が一番楽しかった。
家から近い私立中学に進学したのが全ての間違いだった。
受験したのは頭がいいと言われる眼鏡な社交的とは言いにくい物静かな子たち。
小学校で友達だった同級生に私立の受験組はほとんどいなかった。
よくよく考えればいつも僕の周りにいた騒がしくて楽しそうなタイプが進学校でもある私立に行くわけがなかった。
変化する環境の意味を僕は知らず覚悟もなく地獄のような中学生活が始まった。
浜地(はまち)竜胆(りんどう)という同学年の中でも一番の美形で優秀な彼が僕の隣の席になった。
僕はその意味をあまり分かっておらず隣の席になった彼が一番はじめの友達だと勝手に思った。
友達になれなくても隣の席だから話しかけることは普通だ。
少なくとも僕の中ではそうだった。
『僕は、間宮幸太。浜地くんの名前……りゅう、きも?』
竜胆という漢字が読めなかった僕はそれが会話のきっかけになると思った。
読めないにしても「りゅう、きも」はない。
今ならそう思う。
入学式や説明、自己紹介もまだな時で、席に書かれた名前に周りはお互いがお互い会話を広げていた中でのことだ。
知り合いと固まることもあればポツンと一人でいる生徒もいるその中で隣の席だからなんていう理由で浜地竜胆に声をかけたのは軽率だったのだ。
彼は一言、僕を見て「ありえねえ」と吐き捨てた。
そして浜地竜胆を中心にしてクラスで学年で学校でイジメられた。
殴ったり蹴られたりは当たり前でケーキを顔に塗りたくられたりプリンを浜地竜胆の指を使って食べたりした。
裸にされて変な踊りを踊らせられたりその姿を写真や動画に撮られたりするのは普通だ。
ブタブタといじられ続けたのでダイエットをしようとしたけれど浜地竜胆に見つかって逆に毎日の食事量が増えた。
朝から晩まで浜地竜胆に何かを食べさせられて僕の体重は増えていく。
制服がぱつんぱつんになって悲しくて泣くとそれはそれは嬉しそうに浜地竜胆は笑った。
その笑顔がおそろしいのに綺麗で怖かった。
僕は復讐されている。
ちょっとした言い間違えもプライドの高い浜地竜胆は許してくれなかった。
きっと馬鹿にされた、舐められた、そう思ったんだ。
見た目の劣った人間に気安く話しかけられるのも嫌だったのかもしれない。
浜地竜胆はよく僕のお腹をつかんでは「はずかしくないのか」と言った。
太っていることを恥ずかしいと思えと言いながらダイエットを許してくれない理由は分からない。
ただイジメる理由を減らしたくなかったのかもしれない。
二の腕やお腹だけじゃなく胸もよく揉まれた。
笑いながら「普通じゃない」とよく言われた。
悲しくなって泣いてもやめてくれない。
僕が「りゅう、きも」なんて口にしてしまったせいだ。
気が付くのが遅かったが要はそういうこと。
太っていることが悪いんじゃない。僕以外にも太っている生徒は少なからずいた。
それなのに僕だけがターゲットになったのは浜地竜胆を怒らせたから。
周りの顔色をうかがって合わせる卑屈な笑いが顔に張り付くようになった。
大声で怒鳴られれば怖いし殴られれば痛い。
でも、言われるままに食事をしていたら浜地竜胆は怒らない。
僕はそれを学習して怒られないように振る舞うようになってしまった。
心が負けたと思われるかもしれないが必死だった。
今もまた訳も分からない状態にかかわらず流されて怒られないように動いている。
裸のまま三人毎に檻の中に入れられる。
説明は何もない。
心細いが声を出すのは出来ない。
まわりが黙っているので自分が空気を読まずに口を開くことが怖い。
意気地がなかった。
時間が過ぎて状況が変わるのを待った。
そして、幸か不幸か変化は訪れた。
人が檻の周りに現れたのだ。
きちんと洋服を着た彼らは冗談みたいな仮面で顔を隠していた。
ヒソヒソと聞こえてくるのは間違いなく日本語。
助けを求めるという頭は僕にはなかった。
檻の外側にいる相手が助けてくれる人に見えなかった。
身体を抱えて震えていたら「間宮」と聞こえた。それは間違いなく僕の名前だ。
けれど、僕の見たことのある相手はどこにもいない。
しばらくして僕は檻から出された。
どうなるのかと思ったら目立つ場所に連れて行かれて長身の男に引き合わされた。
他の人たちと違い仮面をかぶっていない。
見下ろされてよくわからず震えていたら男の指先が僕の胸に触れる。
乳輪を撫でられて周囲の視線にさらされながら僕は勃起した。
気づいたら股間が反応していたのだ。
最低だと泣きたくなったがそれもできない。
泣いてうるさいと叩かれたらと思うと怖かった。
目の前の男は身長だけではなく横幅もしっかりあり、がっしりとしている。
彼の張り手で僕は吹き飛びそうだ。
「だいじょうぶ。今度はちゃんと自分に素直になって大切にする」
何が大丈夫なのかさっぱりわからない。
美丈夫という感じの男が僕の前にひざまずいた。
キスをしようとするような男から僕は顔をそむける。
なにかの誓いをかわそうとするようで怖かった。
溜め息を吐いた男は僕をまっすぐに立たせて後ろからやっぱり胸をいじる。
手で股間を隠して僕は目を固く閉じた。
人に見られていることを自覚すればするほど汗が噴き出て体は震えてそれなのに血は下半身に集まっていく。
後ろから首筋にキスされて胸を揉まれ続ける。
気持ちがいいのが怖い。
不気味な見世物にまわりは野次を飛ばさない。
それもまた恐ろしかった。
間違いなく見られているはずなのに静かだったのだ。
そして、僕が息を吐き出したその瞬間とんでもない衝撃が乳首を襲った。
失禁するほどの痛み。
痛いというよりも熱いと思った。
驚きが頭の中をしめていて僕は泣いた。
見ると左の乳首に何か輪っかがつけられていた。
何か言う前にその輪っかを引っ張られる。
痛くてうめくと僕の前に回り込んで男が乳首にキスをした。
不思議と痛みが引く気がしたけれどそういう問題じゃない。
なんで、こんなことをされないといけないんだろう。
涙をぬぐって鼻をすすっていると大きな拍手とともに「おめでとう」コール。
周りは口々に「おめでとう」と言った。
男はぽっちゃりな僕を抱き上げて鼻の頭にキスをした。
そしてそのまま歩き出す。
もう本当に訳が分からない。
「一生逃げられねえからな、間宮」
その言い方は、その言葉は、以前に聞いた。
浜地竜胆から憎々しげに言われたことだ。
同じ言葉のはずなのに男の瞳には苛立ちではない熱情があった。
左の乳首がなんだか熱い。
不思議な感覚の中で目の前の見知らぬ男と浜地竜胆とが頭の中で回る。
※あえて細かい説明はせずに伏せておきますが、この後に食事は全部ご主人様の膝の上でして食べている最中に身体をむにむに揉み揉みされまくるのです。
食べるのに集中できないとなったら手を止めてくれるかも?
おそるおそるダイエットの希望をご主人様に伝えると運動しようってことでセックス三昧。
余談ですが竜胆の花言葉は「悲しんでいる時のあなたを愛する」っていうドS宣言です。
つまりはまあそういうことです?
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