・俺だけが幸せな世界のために他はみんな、不幸になれよ。

※アンチ王道の話です。
暗かったり暴力的だったり変態的な要素が苦手な方は読むのはお控えください。
(変態的要素を先に知りたい方はページの一番下の部分を先に見てください)

平凡受け。


 
 不幸になあれ、不幸になあれ、不幸になあれ。
 
 頭の中で繰り返し続ける呪いの言葉は俺の気持ちを安定させた。
 人を呪うことで俺は穏やかな気持ちになれる。
 
 俺がこんなに不幸なんだから人類はもっと不幸になるべきだ。
 
 そうしたら俺のこの有り余る悲しみと絶望と遣る瀬無さが少しはマシになる。
 今更、諸々の感情が消えることはない。
 けれどみんなが不幸になったなら俺は少しぐらい世界に優しくなれるに違いない。
 俺よりも不幸でかわいそうな存在が出来るんだから心にゆとりを持てるはずだ。
 
 世界に裏切られてアンチヒーローになった悪役の気持ちがよく分かる。
 ヒーローに絶望して力を求めて悪に手を染めていく。
 悪の絶対的な力でないと助けられないものがある。
 順番を守って出来ることからコツコツとなんていう綺麗事では何も解決しない。
 何もかもが遅すぎる。
 ヒーローが救うのはヒーローの目に映る人間だけだ。
 ヒーローの目に映るのはヒーローが手に負える問題だけ。
 驚くほどに少ない人数だけしかヒーローは救えない。
 悪役の方がよっぽど優しい。
 
 個人的な不幸をヒーローは救ってはくれない。
 自分で心に整理をつけろというんだ。
 ヒーローは強いから弱者の気持ちを理解しない。寄り添ったりしてくれない。
 立ち上がれない人間だっているのにヒーローは分からない。
 声をかけられないと動けない人間の痛みはなかったことにされてしまう。
 
 俺を助けてくれるヒーローはいなかった。
 どこにもいなかった。
 
 そして、俺は一つ大人になる。
 
 誰かに助けを求めるんじゃない。
 いつかの救いを待ってるんじゃない。
 
 俺が俺を助けなければならない。
 俺だけしか俺を助けようとは思っていない。
 俺を大切に出来るのは俺だけだ。
 
 もっと早く気付くべきだったんだ。
 俺以外のみんなは俺よりも幸せなんだから引きずり下ろしたって構わない。
 みんなが不幸になることで俺は少しだけ楽になる。
 どんな手段を使って、誰にどう思われようとも俺は俺を幸せにする。

 そのためにみんな、早く俺より不幸になれよ。
 
 願い続ける、念じ続ける。
 
 不幸になあれ、不幸になあれ、不幸になあれ。
 
 
 天田(あまだ)雄平(ゆうへい)が転入してきたことで学園は無茶苦茶になった。
 生徒会役員から風紀委員そして教師も含めて学園の人気者は全部、天田雄平を愛していて取り合っている。
 仲が良かった役員同士がギスギスしだして学園はとても荒れている。
 
 天田雄平の悪口を言えば生徒会や風紀に喧嘩を売ることになる。
 とはいっても親衛隊たちは現状に怒り狂っていた。
 天田雄平さえいなければこんなことにならなかったと思っている。
 
 けれど天田雄平が一人になることはないので手が出せない。
 いつも役員や風紀の誰かが天田雄平のそばにいて守ってる。
 天田雄平がかわいらしい美少年だったり男前な美形なら何も言われないかもしれない。
 誰もが認める才能や能力や容姿があれば問題にならなかったはずだ。
 学園の人気者たちが夢中になるのも納得だと親衛隊たちは見守ったかもしれない。
 
 ただ残念なことに天田雄平は普通の顔の平凡な生徒だ。

 特技があるわけでもないし身長も声も発言も何もかもが普通。
 いいや、その脳内は腐りきったクズかもしれない。
 生徒会役員を使って天田雄平は全校生徒に爆弾を投下し続けている。
 フラストレーションを溜めた親衛隊たちがどんな行動をするのか笑って見ているのだ。性格の悪い最低なやつ。
 
 転入生の天田(あまだ)雄平(ゆうへい)、それは俺のことだ。
 
 俺は誰に対しても最低最悪。保身のためなら何だってする。
 自分を守ることを第一に考えている。
 それの何が悪いんだろう。
 
 周りは俺を守るつもりがないのだから俺が俺を守るための鎧を身に着けるしかない。
 俺は何も悪くない。
 
 
 不幸になあれ、不幸になあれ、不幸になあれ。
 
 
 この学園中の不幸がきっと俺を幸せにしてくれる。そう信じないとやってられない。
 
 
 
 まず初めに言い訳をさせてもらえるなら天田(あまだ)雄平(ゆうへい)、俺は魔性の男でも何でもなくごく普通の一般生徒だった。
 今だって本当はそのつもりでいる。
 
 全寮制の男子校に中学から入って校風に馴染みながら高校一年になった。
 その年のゴールデンウイーク明けにやってきた転入生のせいで何もかもがおかしくなった。

 普通にいた友達は俺を避け、周りは俺を嫌な目で見るようになった。悪意は視線だけではなく毎日いじめを受けて身体は傷だらけで心もまたつらかった。味方はどこにも居なかったのだ。
 
 こうなった理由は転入生がなぜか生徒会役員に好かれてその渦の中に俺を引っ張りこんだからだ。
 
 最初は意味が分からず自己主張も出来ずに転入生に手を引かれて、あっちこっちへ連れ回された。やっていいこと悪いことの区別がつかないのかと風紀委員に罵られ続けた。どうして俺が悪いことになるんだろう。どうして俺が怒られるんだろう。疑問を挟む余地もなく怒涛の日々に精神が擦り減っていく。俺の意思で転入生に着いていったわけでも何でもないのに厳しい目を向けられる。誰も俺の話を聞いてくれない。
 
 生徒会役員たちは美形だから睨まれると怖くて仕方がない。
 いつでも緊張して気が付けば俺は拒食症になっていた。
 人から向けられる悪意が恐ろしくて食べ物を口にしても吐いてしまう。
 俺は強さなどない普通の人間だったからたった数日のいじめでも心がすぐに疲弊した。
 身体も心もボロボロになった俺を誰も助けてくれなかった。
 
 そんな限界な俺に更なる災難がやってきた。
 
 親衛隊から俺を襲うようにと指示を出された不良に空き教室に連れ込まれた。
 複数に取り囲まれたこの時点で俺はすでにパニックを起こして普通じゃなかった。
 
 俺に生徒会役員に取り入ったなんて事実はない。
 彼らは転入生が目当てであって俺のことを嫌っていた。
 それなのに生徒会役員に近づく最低な生徒として俺は制裁の対象にされたのだ。納得がいかない。でも、俺の言い分など誰も聞こうとしない。
 
 俺よりもだいぶ大きな体格の男たちに取り押さえられ顔やお腹を殴られた後に服を乱された。
 
 そして「これからコレを入れてやるからな」と気持ちの悪い男性器を顔に押し立てられた。限界だった。気持ちは最初からついていっていなかったけれど、もう無理だ。もう耐えられない。自分の心の底からの叫びをそのとき聞いた気がした。
 
 俺の中の何かが弾けた。
 
 具体的に不良の拘束をどうやって解いたのかは覚えていない。ただ気づいたら俺は血だらけな椅子を持って不良たちは死にかけていた。一人は今も意識不明の状態らしい。意識を取り戻した不良も男性器に被害が大きすぎて不能になったという話だ。
 
 俺はただ怖かっただけだ。中途半端な反撃では相手が立ち上がって俺を殴りつけてくると思った。だから俺はあいつらが絶対に起き上がらないように椅子で殴りつけて、足で踏みつけ続けた。
 俺に危害を加えようとした場所を重点的に攻撃した。
 思い出すと残酷な行為かもしれない。けれど、あの瞬間の俺にとっては必要な自衛だった。
 
 今回のことが過剰防衛に当たるのかどうかなんて考えることもなく俺は泣いて震えながら兄に連絡を取った。
 兄はまだ大学生だが知り合いに各大手企業のトップがたくさんいる。俺の家は驚くほど裕福というわけではないけれど有名私立に子供たちを通わせることはなんてことないぐらいには親は稼いでくれている。だから、兄の知り合いの弁護士を雇おうと思ったのは当然の対処だ。
 
 俺がイジメられていた証拠は腐るほどあったし、そのせいで精神が普通じゃなかったのも立証された。不良たちを血だるまにした件は何のお咎めも受けずに済んだ。
 
 ただ、半端な時期とはいえ転校せざる得なくなった。
 俺に非がないとしても学園に居続けることはできなくなった。
 あんな学校に通いたくないのでそれは構わない。
 地獄から早く抜け出したかった。
 事件の後も俺は食事が上手く摂れないし睡眠をとるのも難しい。
 新しく通うことになる学園は兄の手によって選ばれた。
 どこになるのかは薄々気づいてはいたけれど俺が拒絶していた場所だ。
 それはもう仕方がない。
 
 母方のいとこが教師をしていて、父方のいとこが生徒会長と生徒会副会長をしている学園。
 今でも連絡を取り合っている幼なじみも数人その学園に通っている。
 
 全寮制男子校ではあるけれど以前と違って俺の味方しかいない場所。
 そもそも初等部まではそこの学園に俺は通っていて中高もそこで進学するはずだった。
 
 いとこたちや幼なじみは嫌いじゃなかったが一緒にいて周りの視線や反応が煩わしかった。
 彼らといると交友関係が閉じていて自由がない。それが幼かったあの頃は息苦しかった。
 何処に行くにも誰かがついてくる生活。
 監視されている気がして神経が尖って口が悪くて攻撃的になっていた。
 
 思い返すとただの反抗期だったのかもしれない。
 何でもかんでも手を出してくる彼らに一人で起きられるとか、部屋を片付けるなと母親に文句を言う子供と一緒の反応をしていた。自分がきちんと出来ていないから手を貸されてしまう。親切に対して、いちいち苛立って不満ばかりを溜めこんでいた。
 
 もう俺はわがままな子供でいい。
 
 他人からどう思われようとも構わない。
 いとこたちや幼なじみがいるこの学園が如何に俺に優しく楽であるのか知ることが出来た。
 親族の集まりで顔を合わせながらも学校の話題は避け続けた俺を今更どんな風に受け入れてくれるのか不安があった。でも、いつでも変わらない彼らがそこにいて俺を出迎えてくれた。
 
 母方のいとこ兄弟の弟のほう、俺と同い年の副会長は会って早々に俺に跪いて口を開けた。
 
 ずっと待っていたと犬のように息を荒げて待ち構えられた。
 仕方がないので人目がないことを確認して副会長の口の中に尿を吐き出した。
 量が多すぎると飲み干せないし少なすぎると飲むタイミングが上手くいかずにむせてしまう。
 これはなかなか気を遣う。
 けれど俺は尿を出す量を調整するのが上手いと思う。
 
 誰よりも美しく微笑むなんて言われているらしい副会長が平凡な顔の俺の尿を飲んで恍惚とする姿は倒錯的だ。
 
 二人して一仕事終えたような達成感を共有しながら身支度を整え理事長室へ向かった。
 このあたりの空気はさすがいとこ同士というところかもしれない。
 
 副会長が俺の尿を飲むようになったのはテレビで健康法として飲尿を取り上げられていたからだ。
 好きな相手の排泄物を取り込むのは最高の快楽だと考えているせいもある。
 副会長が俺を性的な目で見ているのかは知らない。
 好きだとは何度となく言われているけれど性愛が含まれているのかは分からない。
 
 初等部の頃はトイレに行くたびに便器の前を陣取られて仕方がないので彼の口に尿を出していた。人に見られてからかわれるのが嫌だったのでやめて欲しかったけれど今はもう気にならない。
 
 副会長の手綱を握った気がして安心できる。
 
 以前の俺はいとこたちや幼なじみから甘やかされていた。
 それを理解せず煩わしいと思っていた。
 でも今は彼らの優しさが分かる。
 その引き換えとして差し出さなければならないものもある。
 けれど転校する前のいじめられていた生活に比べれば苦痛はありはしない。
 この学園で俺をいじめることが出来る人間なんているわけがない。
 
 逆に俺こそがこの学園を不幸に陥れる人間だ。
 俺が以前に受けた屈辱をこの学園でいとこたちや幼なじみを使って晴らす。
 それはもう決めていた。
 
 俺がしていることはただの八つ当たりで自分たちは無関係だと生徒たちは思うのかもしれない。
 
 学校は違っても在籍している生徒たちの種類は同じだ。
 仮に以前の学園と違っているなら見せてもらいたい。
 
 人の不幸を見ること以外で俺が幸せを感じられる方法があるなら教えてもらいたい。
 
 

※だいぶ前に「読んでいる」アンケートの項目に入れていたタイトルです。
それを知っている方は「連載じゃないのかな?」と思われたかもしれません。

ヤンデレ/匂いフェチ/M攻め/飲尿/脚フェチ/生徒会役員たちは変態という注意書きを入れる予定だったのでわかりそうですが、生徒会役員たちプラスアルファ全員の性癖と主人公との関係をやっていくと長いと思ったので短編SS行きです。

飲尿はサラッとやっていますがダメな人は地雷でしょうから取り扱いに悩むところです。

アンチ王道転入生に連れ回されていた脇役がいろいろあって別の学園に転校してきた話。
酷い生活を味わったせいでとても人間不信で性格が歪んでいます。
根っからのクズというよりも虚勢を張らないと自分を保てない不憫な子。

善意でいいやつな攻めに癒されたりする続きなどを書きたいと言えば書きたいですが予定は未定状態です。

足舐めまわされたり臭いを嗅がれまくっても挿入以外は許してくれる主人公は心が広い気がするので機会があったらそのあたりをきっちり書きたいのですがいつになるやら……。

 
2017/01/13
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