・人に好かれる努力をしない人間が愛されるわけがない

「一周年記念単語リクエスト企画」
リクエストされた単語はラストに掲載。
先に知りたい方は「一周年記念部屋、単語リクエスト企画」で確認してください。

※非王道の脇役受け。わりとエロ?


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 その人は微笑みながら僕に告げた。
 脇役なんてこの世界には居ないのだと。




 はじまりは転入生がやってきたことだ。
 それはきっと間違いない。
 僕は地味で目立たない生徒だった。
 誰にも気にされない平均点な容姿と頭。

 誰かにハッキリと意見するのは得意じゃない。
 かといって自分の意見がまるでないわけでもない。

 同じような地味平凡グループの倉持の部屋に転入生がやってくると聞いても何も感じていなかった。
 僕の鈍さはきっと世界への無関心さだ。
 転入生がくるクラスは僕とは違うので関係のない話だと倉持の表情が暗くなるまで思っていた。
 平穏という名の停滞感がある学園の中で転入生はどうやらエキセントリックな魅力を放ったらしい。
 興味のなかった僕は細かいことは知らない。

 ただ短い間で少数に好かれ、大多数に嫌われた。

 他人に与える影響力をきちんと持っている人間というのは大変なのだと自分の通う学園の混乱を他人事としてながめていた。
 倉持が巻き込まないようにと僕たち、地味平凡グループから距離をとったことを知っても何も感じない。
 それは倉持のことが嫌いなのではない。
 好きでも嫌いでもなかったから離れても近くてもどうでも良かったのだ。


 変わっていく学園の空気に倉持は暴力にさらされ、ついには病院に入院してしまう。
 もちろん大問題になるはずだが学園は事件を隠し一連の不祥事をなかったことにしようとする。
 そこで立ちあがったのが地味平凡グループ。
 倉持と友人だったり知り合いだったりした生徒がこの学園はおかしいと生徒会や風紀に訴えた。
 学園のおかしさの根源みたいな生徒会や風紀の人間だけれど意外にも権力至上主義じゃなく僕たちの話を聞いてくれた。

 結果として転入生はまた転校したのか消えて、倉持が戻ってくる頃には学園はまた違った姿になった。
 風紀委員長が倉持と付き合うことを表明したからかもしれない。
 誰も倉持をいじめたり邪険にしない。
 倉持にとって平和な学園になったが僕の周りは違う。
 生徒会役員たちと倉持の友達である地味平凡たちの交際が始まったのだ。
 倉持を思う友情や正義感に心を打たれたという。
 転入生に感銘を受けたのとあまり変わらない流れに僕は彼らが怖かったので遠巻きに見ていた。

 それぞれ、嫌がったり疑ったりしながら最終的に僕以外の地味平凡たちに彼氏ができた。
 美形の人気者たちと地味平凡たちの組み合わせは不釣り合いだがこれだけの恋人同士がいれば周囲は認めざるえなかったのか反発は少ない。
 敵にもしなかった相手に自分の意中の人をとられた形の美人やかわいい親衛隊たちは何故か僕を攻撃し始めた。

 地味平凡グループで僕に相手がいないので庇われることもなくいじめ放題。

 倉持をはじめとして恋人ができたばかりの地味平凡のみんなは自分のことにいっぱいいっぱいで僕の状況に気がつかない。
 僕もまた彼らに助けを求めなかった。
 耐えていればいいとか倉持のように友人を巻き込みたくないという考えからじゃない。
 卒業すれば終わることだと思うと大きなことだと思えなかった。

 倉持の時の反省を生かしてか誰も入院するような大怪我をさせようとか複数で強姦しようとしたりしない。
 ちょっとした意地悪。チクチクとした悪意。気持ちの悪い支配欲。そういったものが僕に絡みついてくるだけだ。

 僕は脇役で主役にはならない。
 これはすぐに飽きられて終わる限定開催のイベントだ。



 そう思って数カ月が経って、泥のついた制服とボサボサの自分の髪に違和感を覚える。
 平均的であったはずの僕はすでに底辺だった。
 鏡を見てわかる痩せてこけた頬とかさついた唇。
 瞳に生気はなく胸はアバラが浮いてガリガリ。
 いつからか気持ちが悪いと地味平凡グループから避けられ始めた。
 地味平凡ではなく不気味な人間になってしまったのだから仕方がないんだろう。

 倉持を助けたことでこうなったとまでは思わないが僕が酷い有り様になっても誰も気にしない。
 むなしさから無意識に涙がこぼれる。
 下を向いていたら誰かの靴が見えたので顔を上げると生徒会長が立っていた。
 綺麗ですこし雰囲気がこわい人。
 美形というよりも美人という表現をしたくなるが中性的とか女性的なわけじゃない。
 異国の血が混じっているせいか肌が白く目鼻立ちがくっきりとしていて日本人離れしている。
 長身で筋肉もついているので格好いいのは間違いないがどこか妖しい魅力が強くて面と向かって会うのを避けていた。

「自分が他人にとって嫌われない存在だとなんで思った?」

 美人な見た目に反してだいぶ低い声。
 わざとそういった声を出しているような顔と違和感のある渋みのある低音。
 洋画の髭の男にあてられそうな凄味がある。

「この状況でもまだいじめられてるって受け入れてないだろ。途中経過でしかないって楽観視して自分は何も悪くないしタイミングが変われば全部が終わると思ってる、そうだろ」

 口調は普通の学生のものだが声だけ考えると賢者が迷える若者に語りかけてくるような重々しい場面を連想する。
 会長に話しかけられているだけでまるで自分が物語の主人公になったような錯覚に陥る。

「脇役なんてこの世界には居ない」

 微笑みながら会長は僕は僕として生きるべきだと囁いた。
 会長が言うのなら間違いないと思ってしまった。
 それがどんな内容であったとしてもこの時の僕の精神状態では拒絶できなかったかもしれない。
 

 会長は僕に語る。
 僕がどれだけ嫌われているのかを語る。
 そして、僕が嫌われないためにするべきこともまた教えてくれた。
 簡単な道ではないが逃げるわけにはいかない。

 僕はずっと自分が嫌われていることから目をそらしていた。
 倉持が転入生の騒動で入院することになるまで気にしないでいたようなずるさで自分のことも考えずにいた。
 事件の主役がいなくなったら物語を整理する必要がある。 
 その役を僕は脇役として買って出るのは構わなかったが僕が主役としてクローズアップされるのは嫌だった。
 倉持がいる前で倉持を庇わなかった理由はそういうところにある。
 主役である倉持が病院に行ったからこそ僕は地味平凡グループのみんなを扇動して生徒会と風紀に抗議しにいった。
 自分に火の粉がかからないタイミングと勝てる証拠と時期があるからこそ強気な発言をする、ある意味でとても普通な僕。

 地味で目立たない人生を今後も過ごすはずだったが、その生き方はできない。
 なぜなら僕の心の中に嫌われたくない、愛されたいという願望が芽吹いてしまったからだ。
 今をやり過ごして高校生活を忘れて生きていこうと思っていた僕を会長は直視させる。
 きちんと自分の今の姿を見るのだと裸にされて鏡を突き付けられた。

 僕の以前とは比べ物にならないほどに見苦しくなった姿に自嘲的な笑いがこみ上げる。
 会長が僕の髪を切りながら僕の悪いところを上げていく。
 お坊さんの説法を聞くような心地で僕は内容をうまく考えることもせずに会長を敬った。
 会長が何を言っても会長が正しいように思えた。

 身だしなみを整えてもらいおいしいご飯を食べさせてもらって抱きしめられながら会長は僕を断罪する。
 僕の様々な悪い面、そのせいで嫌われるのは当然なのだと言われた。
 ここまでよくしてくれた会長に言われると僕が悪いからこそこの状況になったのだと納得してしまう。
 それまでは流れが悪くて自分は悪くないと僕は自分の罪から逃げていた。
 

 人に好かれる努力をしない人間が愛されるわけがないと会長は言う。
 僕はその通りだと思った。



 会長は学校には通わずまずは愛されるための努力をするべきだと教えてくれた。
 僕はそれに従って会長の部屋でお尻の穴を拡張することになった。

 肉体的な快楽はとても原始的な喜びだ。
 例外を除いて人は気持ちのいいことが好きで気持ちのいいことをしてくれる人が好き。

 最初は男同士ということで引き気味だった地味平凡の彼らも美形の人気者たちとほぼ毎日のようにエッチなことをしている。
 僕がいじめられている間にずっと愛を深めあっていた。
 人は誰でも気持ちがいいことに夢中になるし、気持ちが良ければそれでいいと思いがちだ。
 わざわざ気分の悪いことに首を突っ込んだりしない。トラブルは誰でも嫌いなのだ。
 恋人とのセックスよりも僕と付き合うことが気持ちいいと思わせられなかった時点で負けなのだと会長は言う。

 友人と恋人のどちらも大切にするのが理想だがそう上手くいかない。
 僕は地味で存在感がなかったこともあって蔑ろにされた。
 恨みはしなかったけれど、やっぱり悲しかったのだと会長に僕の悪いところを教えられるたびに思った。
 悪いところを減らすことが好かれる努力だ。

 お尻の穴をほじくりながら、乳首を撫でたりつねる。
 気持ちがよくなるまでの道のりは遠そうだけれど地味平凡のみんなが気持ちよさそうに喘いでいる動画を参考にしながら頑張った。
 学校の授業に出ない代わりに会長からの指示は絶対だ。

 朝に会長とキスの練習をする。
 玄関先で五分ほどキスをして会長を送り出す。

 Tシャツ姿になりお尻のアナルプラグのサイズを変える。
 パンツがなくてもアナルプラグを落とさないように締めつけながら部屋の掃除や洗濯をする。
 ふとした動きで前立腺が刺激されたり乳首が布でこすれて感じるようになった。

 日に日に敏感になる身体は人に愛されたがっている証拠だ。

 お風呂場でお腹の中を綺麗にして以前は入れることができなかったディルドを挿入する。
 人から好かれるということはどんなサイズのおちんちんでも受け入れるということだ。

 まだ最大の大きさのものは入れられないけれど、会長のおちんちんと同じぐらいのサイズのディルドなら挿入しても勃起したままでいられる。
 以前はアナルプラグでは前立腺を刺激できて勃起するのにディルドでは萎えてしまった。
 僕の努力の足りなさが人を傷つけると会長は言っていた。
 今はちゃんとディルドの出し入れで気持ちがいい。
 前をこすらずに後ろだけで射精できる。
 乳首をいじっていればまず間違いなく萎えない身体になった。
 僕はディルドを入れたままタオルを体に巻きつけてお昼を作る。

 そうしていると午前の授業が終わったので会長が部屋に戻ってきて僕の穴の具合を見ながらお昼を食べる。
 また玄関で五分ほどキスをして会長を送り出す。
 軽くシャワーを浴びた後は会長の精液をかき出してから色とりどりなローターを挿入する。

 メールで不定期に会長から色の名前が送られてくるのでその都度、指定された色のローターのリモコンに触れる。
 ローターは色だけではなく設定されている振動のパターンや形が違う。
 自分で好き勝手に動かしているわけではないので時折とても歯がゆくなるし、前立腺にあたりすぎたり、モーターの振動が強すぎて苦しくなる。
 それでも苦しいからといって逃げていいわけがない。

 夕方に会長が帰ってくるまでTシャツ姿かエプロンだけつけて掃除や料理をする。


 僕は今まで怠っていた愛される努力をしている。
 これが間違っているわけがない。

 僕はこの身体でいろんな人を愛せるし、いろんな人の愛を受け止められる。
 会長がまるで悪魔のような声音で「優秀だ」と褒めてくれるので正しいことをしている。


 地味平凡のみんなが会長が見せてくれた映像の中で「もう射精したくない」「たすけてっ」「やめて」「ゆるして」と泣き叫んでいても幸せのアクセントに違いない。
 いやだいやだと泣いて拒絶したところで中盤を過ぎるころには好きとか愛してると言いながら気持ちよさそうに喘いでいる。
 おいしそうに恋人のおちんちんをしゃぶってはエッチな顔でおねだり。
 地味平凡の友人たちの名前を上げて同じことをしようかと尋ねる美形の人気者たちにみんなそろって自分だけにしてくれと頼んでいた。


 僕はまるで知らなかった。
 顔や雰囲気が地味平凡でもみんなの身体は愛されるために敏感に調整されている。
 恋人の愛を一人占めするために全員が全員がんばっていた。

 僕はそれを知らずにいたから仲間はずれにされていた。
 会長はすべてを教えてくれた。
 友人たちの誰よりも愛され上手になれば僕の寂しさは消える。
 生徒会と風紀に抗議することを煽った後悔もなくなる。

 人に好かれる努力をしない人間が愛されるわけがないと会長は言う。
 僕はその通りだと思った。
 人の愛を受け入れるには努力が必要だ。

 倉持をはじめ地味平凡のみんなは努力をせずに恋人任せだからこそ最初はイヤだと逃げようとするんだろう。
 脅して身体を開かせてもワンパターンだから飽きてしまう。
 自分だけにしてくれと頼まれても彼らはそんなこと聞いてはいない。
 誰も恋人の言葉を守ってはいなかった。
 

 会長はすべてを教えてくれた。
 僕だけが安全地帯にいた幸せな脇役だと教えてくれた。
 幸せ者は嫌われるのだと教えてくれた。

 だから、これから僕は好かれる人間になるのだ。


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嫌われ、ヤンデレ、刷り込み洗脳」+「地味受け」NG「拷問」という単語リクエストからでした。

これにこそ、単語「ホラー」のリクエストですよと言いたいところですがオチの新鮮味を重視しました。(ホラーもリクエストでもらっていましたが別作品で使用済み)

オーソドックスな非王道脇役。
(これがオーソドックスかの議論はおいときたいところですが、あらすじを書き出すと定番ですよね?)


個人的に輪姦(強姦?)されるために自主的に開発していくとかエロいなと思います。
会長に飼われ続けるか、みんなの肩代わりをして落ちていくか、ただの3Pかはご想像にお任せします。
シチュエーションの薄暗さが好きなので普通に続き書いたらそれはそれで許して下さい。
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