030 羞恥心は気持ちがいいという結論が恥ずかしい
「ひゃぁ、らぁ、……なにぃ?」
覚悟なんか微塵もしていなかったから思わぬ衝撃に腰が砕けるかと思った。
壁に寄りかかってなかったら確実にうずくまってた。呂律も回らない。「ふにゃあ」って猫っぽい声が出る。恥ずかしすぎる。抗議するように足を動かしてA兄さんを軽く蹴る。
「下着のチェックと一緒に聖石の確認もしようと思って……予告せずに悪い」
聖石とはあの仕込んでおくと排泄の必要がなくなるペット用品、不思議石。
魔法としか思えない効果をペットだけに使うという贅沢。
羽を生やしたり火を操れたりする蜜鳩や火内優成よりも身近な不思議ですごく実用品。
俺と物理的に密着してるから認めざる得ない勘違いじゃない不思議現象。
一生トイレに行かなくていいなんて人によっては奇跡かもしれない。
学校のトイレで恥ずかしくて個室に入れない、みたいなね!
ちなみに個室に入れない理由が出しているからじゃなくて、出し入れするために個室にこもる奴らがいるから個室のトイレに入るイコールでエッチみたいな方程式が薄っすら出来上がっている。男子高校生の欲望って醜い。
快便を祝われるのとビッチ疑惑をかけられるのはどちらも恥ずかしい以前に悲しくなってくる。
トイレ行かないでいいならこのあたりの悩みとはおさらばだから楽だ。
そもそも学園から遠く離れちゃったけど馴染んだものはある。
自宅のトイレと人の家のトイレはまた気分が違うし、この世界のトイレ事情が日本と同じとは限らない。海外だってウォシュレットなトイレは常識じゃないから不思議石には感謝している。ときどき入っているのを忘れるぐらいだから平気だ。
「聖石で痛みが出ることは普通はない。だが、何事にも絶対はないから見ておく」
その言い分は正しいのかもしれないとか思いながら俺は泣きそうになっていた。
お尻の方ではなくA兄さんはチンコに触れている。
敏感な器官なのでもう少し気を遣って欲しい。
思わず俺は目を擦る。こんなことで泣いてられない。
安全確認や医療行為で感情を高ぶらせるなんてご法度。
でも、なんだかA兄さんの無骨な感じの指先に腰砕けなのが悲しい。
これはただの確認作業であってエッチな意味とかないし! ないし!!
エッチじゃないのがエッチな気がして気持ちがいい。
A兄さんの声は冷静そのもので俺をぺろぺろしていたベルトルがハアハアしていたのとは対照的。
「尿道がパクパクしているな。……大丈夫か?」
チンコに入れられた方の不思議石が取られたのがさっき俺が感じた衝撃だったのだとやっと気づいた。
寝ている時も入れっぱなしだったものが外されたことで全身がビリビリするぐらいの気持ちよさがあったなんて冗談みたい。
尿道に棒なんて入るものなのかっていう今更なことも頭に浮かぶ。
入ってしまった俺に今更入るのかなんて疑問はおかしいんだけど。
「ひぃ、……ンて、なに?」
「彗星?」
息を吹きかけられたそれだけで引きつった声が出た。
ってか、なんで息を吹きかけた!?
A兄さんが空っぽな俺のチンコをぺたぺた触る。
それにいやらしい意味がないのに身体は震えが止まらないし顔に集まった熱は冷めない。
指先とは違う湿った感覚が先っぽに触れる。ねちゃねちゃと水音が響きだした。
舐められていると視覚以外の情報で理解する異常性に変に熱が煽られる。
息苦しくて全力疾走した後みたいに身体中が汗をかいてる。
「……い、……じょうぶ」
大丈夫じゃないのに何でか大丈夫とか言ってしまった。
強がりたい年頃は卒業したと思ってたがまだまだ俺は子供みたいだ。
混乱してる。確実に俺はパニクッてる。
だってすごく気持ちがいい。
俺は快楽に耐性ないかもしれない。でも、こんな気持ちよくされたのは初めてだ。
自分であんまり弄ったりしない場所を人に弄り回されて何も感じないはずない。
ベルトルにぺろぺろされたりしたしDに空イキしてるって言われたりもしたけど、エッチな気分にはならなかった。
昨日は戸惑いと気持ちの良さに翻弄はされたけれどエッチな気持ちよさに溺れるような状態じゃない。
兄弟三人が揃っていたからじゃれ合いな気持ちでいたのかもしれない。
気の持ちようでこんなに変わるものなのか、それとも禁断症状が出てきたのか。
「硬くなってるな、気持ちいいのか?」
ちゅっと聞こえたリップ音に恥ずかしさがマックス状態だというのにA兄さんは気にせずに玉をモミモミしてくる。
昨日からずっとベルトルといいA兄さんといい人の身体に愛撫を与え過ぎだ。
童貞処女の俺に刺激が強すぎるっていい加減分かって欲しい。
「っ、も、……きもち、いいっ」
でも、やめてって言えない。
口を開けば「ひゃふぅ」みたいな気の抜けた高い声が出てしまう。
恥ずかしいからダメだって思ってるのに全然伝わらない。
むしろ悦んでると思われて気を利かせてくるかもしれない。
A兄さんがズレてるのは短い時間で分かった。
優しいけどちょっと天然入ってるんだよ。
俺が気持ちいいなら、もっとやってやろうというお節介さんになりそう。
ベルトルがぺろぺろしてたのとは違う舌の感触。
舌自体の大きさや唾液の量が違う。
あぁ、唾液じゃなくて俺が先走り汁を垂れ流しているのかもしれない。
カウパーさんですね。お久しぶりです。昨日もお会いしましたけれど!
「おに、っちゃ……」
最終兵器お兄ちゃん攻撃をしようと思ったのに上手く発音できない。
A兄さんなら「お兄ちゃん」って言えば「どうした?」って手を止めて聞いてくれるはず。
それを期待して「お兄ちゃん、やめて」なんて俺の外見からすればそれこそやめろって台詞を吐こうとしていた。
甘えた声とか濡れた上擦った声とかでお兄ちゃん呼びはベルトルみたいなショタっ子がやるべきだと思う。
A兄さんがベルトルに襲い掛かる図とか想像すると体格差的にガチ鬼畜過ぎて引くけど。
ぴちゃぴちゃと聞こえる水音に俺の声なんか吐息も同然。A兄さんには当然聞こえてなさげ。
セットされた髪が乱れてツンツンさわさわ俺のお腹を刺激しながらチンコにあったかい感触を受け入れる。
ヤバい。このままだと確実にイっちゃう。
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