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  016 俺とベルトヤカの長男


前話、幕間の内容(読み飛ばした人用)

・ベルトヤカの長男は巨根
・ベルトヤカにはショタがいる
・ベルトヤカは拷問というか人体破壊がお仕事?
・ベルトヤカは世界の敵を殲滅する神様を崇めてます
・病原体をやっつけてくれるのはベルトヤカだけ!!
・だからベルトヤカは境界で必要とされているよ
・病原体に侵されている人間は電波を受信しだす?
・壊れたラジオが流暢に喋ったと思ったら出てきた言葉が「彗星」

はてさて、どういうことなのか……。


 
 人の格好に注文つけられるような人間だとは思ってないよ。
 俺は現在ちょっとヘンテコですからね?
 
 でも、コレはないだろ。
 
「エイリトルフラウ・ベルトヤカだ。ベルエイと呼ばれることが多い」
 
 やっぱベルAなのか。
 お兄さんは長男だと自己紹介してくれた。
 手を伸ばされたので握り返す。
 なんだか不思議な顔をされた。
 握手の文化がないってことはないはずなんだけど……。
 ってか、日本の情報があるなら俺の行動は意外でも何でもない。
 顔も動作も全部普通だ、普通。
 
「どうして下半身が濡れてるんだ」
 
 くそっ。ツッコミ入れるなよ。分かれよ。
 Zに食べられててZのよだれでベトベトなんだよ。
 家ではZを自由にさせてあげて欲しいと俺がDに言ったけど遠回りどころか直接ズボンプリーズしたのに聞き流されたからね。
 心配しているのか離れる時にZが丁寧に舐め舐めしていったせいで一見して濡れているのが分かる状態。恥ずかしさで死ねる。
 
「ぜっと……が」
 
 ボソッと言うとA兄さんは理解してくれたのか頷いてくれた。
 意外にいい人かもしれない。
 Dも何だかんだ言いつつ心優しい(と思い込むことにした)お兄さんだし。
 
「弟にスイと呼ばれているようだが?」
 
 相手の名前を聞いておいて自分の名前を口にしないなんて抜けている。
 A兄さんが変な顔をするわけだ。
 この屋敷に入る時もそうだったけどA兄さんを前にして思考回路はショート寸前。
 
「溝口彗星です。……彗星と呼んでくださいっ」
 
 頭を下げる俺にA兄さんは口の中で「彗星」と繰り返す。
 蜜鳩以外に俺を彗星と呼んでくれる人をゲットできるのか!?
 
「えい兄さんは――」

 俺の呼び掛けに変な顔をされた。A兄さんって呼び方はダメだったか?
 
「いいや、好きに呼んでくれていい。長男とは呼ばれるが誰も兄さんと言ってくれないからな……意外だっただけだ」
 
 実は「お兄ちゃん」って言って欲しい系?
 弟からも「長男」呼びなんだろうか。
 たしかにDは「あそこに座っているのがウチの長男です」って紹介してくれたけどさ。
 地味に傷ついてたの?
 
「お兄ちゃん?」
「……何だか照れ臭いからさっきのでいい」
 
 これは何かをねだる時にお兄ちゃんコールをすればイイって感じか?
 俺は内心でニヤついていたせいで、つい口が滑った。
 
「えい兄さんのその髪型は趣味?」
 
 A兄さんはベルトヤカの特徴である水色の髪……なんだけど問題はそこじゃない。
 水色の綺麗な髪の毛でしている髪型がリーゼント。
 強面なお顔に大変よくお似合いなんですけど結構前髪の出っ張りが長いリーゼント。
 遅れてきた反抗期みたいで見てて居たたまれない。
 服装は黒のスーツで中は紫色のシャツ。
 前髪が控えめだったらヤのつく自由業かと思うんだけどさっきのお兄ちゃん呼びの反応からしていい年こいた大人がやんちゃしてるように見える。
 ガタいがよくて見上げると首が痛い、そんなA兄さんなんですけどリーゼント。
 せめてオールバックだったらただの強面ながらに格好いい人だったのに水色のリーゼント。
 違和感しかない。
 ってか、屋敷の周囲にいるのはベルトヤカの手足みたいな作業構成員だとDに教えてもらったんだけど、その人たちもスーツに色のついたシャツでリーゼントか丸坊主。
 なんで? Dと合わせてせめて香港マフィア風で良かったじゃん。
 ってか、スーツあるってファンタジー破壊だ。
 ただでさえ日本語および日本文化が皆さんの脳内にインストールされているらしいのに見た目も壊すとかどういうことだよ!!
 ベルトヤカの周りは機械っぽいものはないけど近代文明な空気がするし。
 高度成長期的な高いビルがあるってなんで?
 灯台とかじゃない、マジでビル。研究塔だってDは言ってた。実験動物ならあそこに連れて行かれてたらしい。
 
「趣味じゃない、義務だ」
「え? ベルトヤカはそういう髪型しないといけないの?」
「正装はこれだが……俺以外しない」
 
 それ騙されてるんじゃないの。
 A兄さんしかリーゼントじゃないとか……A兄さん騙されてる。
 真面目っ子にこんな酷い仕打ちをするなんて!!
 
「弟が無理をさせてないか?」
 
 メチャクチャ紳士!!
 A兄さんのファンになってしまうわっ。
 
「平気ならいい」
 
 そう言いながら屈んだA兄さんは俺に顔を近づけてくる。
 逃げようにも腰を抱き寄せられて身体が動かなくなった。

 目を瞑ると予想したように唇にやわらかな感触。
 やめてぇー、やめてぇー。
 
「キスは嫌いか?」
「ってか、初めてなんで」
 
 うん、これが初めて扱いでいいよね?
 A兄さんは「俺も初めてだ」と言い放った。
 見た目は三十手前って感じのお兄さん。
 
「お兄さん、何歳なの?」
 
 恥ずかしさもあってA兄さんに抱きかかえられたままDに向かって聞く。
 Dは俺とA兄さんのキスにも動じることなく座ってお茶を飲んでいる。
 止めてくれたっていいと思う。
 ペットとキスってそんなに一般的なのか!?
 虐待じゃないの??
 子供へのキスって大人からは愛情表現でも嫌がってたら虐待だよね。
 ペットだってイヤだと思ってたらやっちゃダメだってば!!
 
 フェラはいいけどキスはイヤだ。
 
「二百か三百歳です」
「振り幅大きいよ! え、この世界って人間の寿命長い?」
「ベルトヤカは特別です。役目があるせいか長寿になりがちですね」
 
 役目なかったら早く死ぬのか?
 だらだら生かされている現代社会との差が怖いわ。
 
「二百か三百年もキス経験がない?」
 
 思わず顔をA兄さんに戻して聞いてしまった。
 かわいそうになった。キスぐらい別にいくらでもしていいとか言いたくなった。
 それにしても、もしかして童貞?
 魔法使いか?? 上級職に就いているのか?
 A兄さんに寛大な気持ちになってくる。
 
「キスをしたいと思ったことがない」
 
 俺にはしたかったと。
 ありがとうと言うべきなのか照れるべきか。
 
 つい手が伸びてA兄さんのセットされていた尖った前髪を乱した。
 というか髪の中に手を突っ込んだ。
 整髪料で固められていた外側はともかく中はやわらかいDと同じような髪質をしている。
 
「そんなにいやらしいことをして欲しいのか?」
 
 何の話だ。
 髪の毛に手を入れる行為がエッチしたいの合図とかそんなわけわからない事なはずないよね?
 Dを見ると驚いた顔をしつつ手を振られた。
 いってらっしゃいって、何処へ?
 

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