014 結論→かわいいは正義
猫が王様という驚愕の展開に追いつけない俺たちを他所にDが夏村流水というか子猫に話しかける。
丁寧な感じなのが違和感しかない。だって相手は夏村流水の手のひらに収まるような子猫だ。
だが、ちょっと待て。
王様が猫であるのならペットの地位は高いんじゃないだろうか?
俺は正解を引き当てたんじゃないのか??
普通に考えてペットって言ったら飼い主があってこその存在って感じだけど中にはペットの下僕を自称する集団がいる。給料のほとんどをペットにつぎ込み自分がオカズがなくてもペットには豪華なごはん。
生き物を飼うのは大変だ。不自由させない状態にしなければならない。
温度管理に気を遣い、食べ物もペットに合わせて考えないといけない。
病気になれば高い治療費を払い、一人もとい一匹で放置なんかできないから長期的な外出なんて以ての外。
ペットはこの世界の頂点だと思っていいんじゃないのか!?
いいや、それはさすがに驕り高ぶったかもしれないけど生類憐れみの令な感じで俺をしっかりガッチリ手厚く保護してもらおう。
精液の件は諦めるとしてそれ以上はなしの方向で!
俺の尻穴は永久処女。
入口じゃないよ、出口だよ。
って、今は出口ですらないみたいだけど、気ニシナイ。
その内、こっそりペットの義務とやらの不思議石を外してもらおう。
ちょっとずつ人間の尊厳を取り戻しつつ愛玩される。
それって人生イージーモード?
王様の知り合いなわけだから変なことにはならないことが確定した!!
だよね? 俺は安全圏にいるよね??
ポジティブにポジティブに行こうじゃないか。
空元気とか目を反らしてるとかじゃないから!!
猫が王様なことにツッコミはお預けだ。
王様だって言ったら王様ですよね。わかります。わかりました。もう、触れません。
こんなところで夏村流水と再会するとは思わなかったけど、同い年からまさかの年上になってるとか思わなかったけど、俺は安全にペットやりつつ情報集めだ!
俺の世界は現代日本であってこの境界という場所じゃない。
「みんなの身の振り方は決まったんだな?」
夏村流水が尋ねたのは副会長ではなく火内優成。
短い黒髪の夏村流水とタンポポヘッドな火内優成は見た目は対照的だけど仲がいい。
というかぶっちゃけキャラが被っている。
火内優成は蝶々が飛んでいるからってハイキングコースを外れて迷子になるような協調性のない困ったちゃんだったが人の上に立った場合はちゃんと責任感のある行動をとっていた。
だから、生徒会長をしている火内優成は格好よく感じるので人気があるのは分かる。
俺に対してペンと呼びかけて俺の頭を撫でるのが本当にうれしいと言いたげな顔にちょっと思うところがあったとしても恋愛なんか無理もいいところ。
夏村流水に対して罪悪感があるのはどう考えてもあいつが俺に告白してきそうな空気を出していたからだ。さっきも生徒会役員を尻目に俺に声をかけてきた。
火内優成の扱いが適当なのはあいつは間違いなく俺を犬扱いしているからだ。
人間だと思ってないから気軽に触れてくるし俺の気持ちを考えないで近寄ってくる。
夏村流水が人気のない場所でしか接触してこなかったのとは逆。
「あ、ペンがどうしたのか、聞いていないな?」
火内優成の言葉でみんなの視線が俺に集まる。
やめろ、羞恥プレイやめろ。お前のそういう無神経なところがタンポポだって言うんだ。
猫が首を傾げたことに反応したのかDが自分の家の預かりになったと口に出す。
「ベルトヤカと一緒なら滅多なことにはならない……か?」
滅多なことが起こる世界なのかよ!!
治安の維持はどうなっているんですかって、王様は猫だよ。
どうやってこの国はまとまってるんだ。謎すぎるだろ。
「あ、ベルトヤカとの生活が慣れたらまた遊んでほしいって」
「陛下の言葉でしたら……」
猫を見ながら言った夏村流水の言葉にDの返しは歯切れが悪い。
猫じゃなくて夏村流水の考えだと疑っているのかもしれないが、そもそも猫とどうやってコミュニケーションとっているんだ?
実は夏村流水の腹話術みたいなことになってるのか??
猫の気持ちだって言って全部夏村流水の考え、みたいな。
「ベルトヤカは研究さん以外みんな疑り深いなぁー」
笑いながら玉座の近くにある台を正面に置くとその上に猫を乗せる。
Dが近寄るので俺たちも自然とその台を囲むように動いた。
一言で表現するならこっくりさん。
あいうえおの五十音と数字それと「はい」と「いいえ」だ。
「ペンと遊びたいよな?」
まさかと思っていたら猫が「はい」を前足で連打。
かわいい動作だけどこれで猫と会話してる国のトップたちってどういう事よ。
いいや、あえて言おう。
「ありがとう。俺もお前と遊びたい」
だろう? と言わんばかりのドヤ顔がどうにもかわいいから撫でてあげた。
王様に不遜かと思ったけど王様が満足そうな顔をしてるからいいよね。
猫は世界を征服できるかわいさだ。
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溝口彗星は気づかない。猫が日本食にこだわってくれないことを溝口彗星は思い至ることはない。猫が興味を持たないせいで主食がパスタなことを溝口彗星は考え付かない!!
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