008 ド鬼畜野郎じゃないですか!
俺は裸にされてバスルーム的なところにぶち込まれた。
本当に動物扱いだと思いながら他のメンバー含めてこの後に王様に会うから必要な義務らしい。
俺だけが汚物扱いされているわけじゃなくて安心したものの未だにD以外と会わない。
「なあ、でぃー、食事事情的なものって聞いてもいいか?」
砕けた言い方をしないとDはちょっと不機嫌になるのが短い時間で分かったので俺は赤滑くんに対する時よりも馴れ馴れしくDに接することにした。
なんせペットですから、好き勝手してもいいよねっていう開き直り。
ちなみに飼い主であるD自ら俺を洗ってくれている。
飼い主の義務だと言われれば断れないので好きにさせることにした。
ここで自分でやるって言って他に手伝いが必要な時に「自分でできるんですよね?」とか言われたらどうするよ。
Dは絶対に根に持つタイプ。
笑ってるから外からは分かりにくいけどムカッと来たら永遠に忘れない。
ここぞというタイミングで憂さ晴らしてくる副会長と同じ性格の悪さを感じる。
でも、Dは俺を愛玩する気があるみたいで俺が反抗的な態度さえ取らなければきっと大丈夫。
屁理屈は言うかもしれないけど約束を破るタイプじゃない。
そこは信じてもいいと性的な触れ合いのない手つきに思う。
本当に俺の身体を洗っているだけで性的なイタズラをしてくるわけじゃないD。
俺にその気が起こらないっていうのもあるのかもしれないけれど緊張がちょっと緩和された。
「食事ですか? 日本食が食べたいってことですか?」
これの狙いはこの世界への理解度を上げるのは元より俺の心に安心を与えつつ、王様の知識とやらがどの程度のものなのかを見るためだ。
食べ物や調理法は流行り廃りがある。食生活で元がどんな生活をしていた人間なのかも把握できる。
日本人の王様のことはどうも禁句な空気があるから間接的に情報を仕入れて、仲が良くなってから細かいところを聞くのがいい。地雷を踏んだらたまらない。たとえ禁止ワードを口にしても大丈夫なようになりたい。
「頼めば作るでしょうけど、この国では受けが悪いので食材がすぐには揃わないと思いますよ」
「主食が米じゃないってこと? 別にパンも好きだよ」
それともまさかのオートミールか!?
俺はあれを食べたことがない。
英国で一般的な朝食は日本人の口に合わないと聞いて特に食べたい気持ちにもならなかった。
食に関して俺は保守的だ。
好物はイングリッシュマフィンとパルメザンチーズたっぷりのミートソーススパゲティー。
この世界で食べられるのか知らないけれど火内優成に口に入れさせられた謎の肉以外を口にしていない俺は緊張が解けたことからお腹が空いてきた。
「晩餐会には早いから陛下に会ったら紹介を兼ねて家族でお茶会にしましょう」
そのDの言葉に俺は今更疑問が出てきた。
俺たちが理事長の家に不法侵入していたのは間違いなく夜。
そう思っていたけれど違うんだろうか。
寮の廊下や各設備はまだ消灯してなかったから確か二十一時前。
意識を取り戻した俺がタンポポ畑で目覚めた時だってまだ夜だった。
理事長の家で俺が目覚めた時は地下の階段を下りている最中で時間の感覚は分からない。
夜中、理事長の家を漁っていたわけじゃないと思うけれど実は俺が目覚めた時にすでに朝方で異世界トリップでこっちに来て何だかんだで昼過ぎになった。
そう考えると不自然ではない気もするけれど五時間分ぐらいズレがあると考えた方がすんなりと納得できる。日本的な知識を持っていて俺に注釈をしないところから見て時間感覚きっと俺とDに違いはない。
「スイは綺麗な髪の毛ですね」
母譲りの黒髪は痛み知らずでサラサラだ。
顔は平凡だけど髪は誰にも言わないけど自信がある。
だから、褒められるのは嬉しかったりする。
「毛並がいいのは食べ物のおかげでしょうか」
食事を考慮しようと思ってくれているんだろう。
人権を投げ捨てたことに見合う好待遇を俺は期待せざるえない。
ベルトヤカという家がこの国の重要な位置を占めているのならそのペットだって贅沢ができるはずだ。贅沢じゃなくてもいい安全と安心があるならいい。外で怪鳥の声みたいな「ギャー」とか聞こえてくるのが落ち着かない。人の声じゃない。鳥っぽいものが鳴いているんだ。いいや、それもそれで怖い。絶対に一人で出歩かないことを俺は自分に誓っている。
我が儘なペットとしてDにくっついて安全な場所まで移動するんだ。
そんなことを思っていた俺の頬をDは撫でる。
やっぱり俺の頬っぺたに用があるようなD。
首を傾げると浴室の床に直接座るように言われる。
ちょっと衛生面というか気分的に気になるから膝立ちみたいにしたら頭を撫でて褒められた。
見上げるとDの股間部分が俺の眼前にある。
まさかという思いが俺の中で湧きあがるが早合点はいけない。
「でぃー?」
違うよねと思いつつ俺は何も知りません、見てませんって顔で勃起状態のDを無視して首を傾げる。
身体を洗われても俺の性器とかそういうのは俺は自分で洗った。
Dも特に何も言わなかった。
触れてくる指先も変なところはなかった。
油断していた。だってペットですよ。ペットにチンコしゃぶれとか言いません。
言うならそいつはド鬼畜です。
動物愛護団体は黙ってません。
徹底抗戦の構え。
俺は断固抗議するぞと思っていたら、頬っぺたにチンコをペチペチ当ててくるわけです。
Dさんや、それは正しい飼い主の仕草じゃないですよ?
「本当は家族の前でやるつもりでしたけれど陛下が何かを言ってきたら困るので済ましてしまいましょう?」
「具体的に?」
「私の精液を飲んでください。それがこの世界でのペットの役割です」
話が違うじゃないか。
日本的な意味で愛玩されるペットだって言ってたのに!!
「日本でもペットの犬や猫に舐めさせているんでしょう?」
何の違いもないと断言するD。
待って、待って、そんなことやってるのはただのド鬼畜野郎じゃないですか!
バター犬って単語は俺だって聞いたことあるけど、けど、一般的じゃないからね。
「これが出来ないようでしたらスイは奴隷になるしかありませんよ」
奴隷はなんだか嫌な予感がヒシヒシするから遠慮したい。
主人の理不尽に応えて使いつぶされるイメージ。
「一週間もしないで死ぬ奴隷が多いからあんまり勧めたくないんですけれど……」
「なんで、一週間もしないで死ぬのか、聞いても?」
心臓が嫌な感じに高鳴る。
奴隷は使用人とは違う。
主人に使いつぶされる存在だ。
なんの保護もされない人の形をしていながら人扱いされない最下層。
「人間……この場合は最底辺の市民層も含みますけれど、人間にできないことをしていいのが奴隷です。オークションで落札した奴隷には何をしてもいいんです。研究に使う実験動物は実験するための使用しか認められていないので変な薬品を飲まされたり体を切り刻まれたりするかもしれませんが実験以外の用途には使用されませんし研究の結果を見るために待遇はそこまで悪くなりません」
現代社会で行われている研究だって人間に影響が出るかまずラットなんかで試すだろうけれどそのラットは健康状態が良好じゃないと意味がない。薬を与えたラットと与えていないラットの比較実験みたいなのはテレビでだってやっている。
結果として弱って死んだり健康に支障がきたしたとしても人間に投薬実験しているわけじゃないから動物愛護協会以外は何も言ってない。たぶん。
自分の理論を検証したり立証したりするための動物実験と奴隷の扱いは全く違うのは想像できる。
「まず奴隷の手足は折られるか切断されるのが一般的ですね。口や目を縫いつけるか薬品で喉や瞳を潰すかは好みみたいです。あぁ、焼きごてやロウソクを使う人もいるみたいです」
何の話か分からないと言いたいが、逃げないためというよりも奴隷を買う人間というのがサディスティック百パーセントなんだというのは理解したのでもういいです。
Dは優しいよね。美人だし。
何度でも言うけど俺に酷いことしないよねえぇぇ!?
「奴隷になってもちゃんと私がオークションでスイを落としてあげますよ。もちろん目や口は未処理にしてあげます。ただ持ち歩きを考えて膝から下と肘から下は切り捨てておきましょうね」
ニコニコ笑顔のDに俺の血の気は引くし出来たら意識も遠のきたい。
足がしびれたと今ふくらはぎに感じる感覚も俺の反応いかんでおさらば。
「でぃー、へたでも怒んなよ? 日常的にヤッてる人とペットは……その、いるかもしれないけど、一般的じゃないし、ペットが間違って噛んじゃう事故だって起きてるんだからな」
てめぇの口じゃイケねえから股開けみたいな展開にならないように釘をさしておく俺。
Dなら俺じゃなくても引く手あまたのはずだから、これは儀式! これは儀式!!
俺が本当にDのというかベルトヤカの家のペットになるのかって試しているんだ。
バター犬やる人は犬に食いちぎられる心配しなかったのかと思いながらDのチンコを口に含んだ。
強く拒絶すれば避けられたかもしれないけど、Dの心証は確実に悪くなる。
それならフェラぐらいなんてことない。
これはフェラじゃなくて儀式だし! 俺は試練を乗り越える勇者!!
考え方が少し蜜鳩に汚染されたかもしれない。
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