送り火


一筋であった立ち昇る煙が、瞬く間に勢いを増し、爆ぜる音を立てながら辺りを包み込んだ。
杏寿郎は、焼かれていく仲間の遺体を茫と佇み、長らく見つめていた。
そうしてこの手を零れ落ちていく幾つもの生を抱きながら、誰もが尽きることのない戦いに身を投じていた。
せめて傷ついた者たちがもう思い煩うことのないようにと、どうかその先へ続く道が安らかであってほしいと一心に願うのであった。

隠と呼ばれる事後処理部隊が、火葬の終えた者を順々に帳簿に記載していく。
鬼殺隊は身寄りのない者も多い。こうして骨を送る先のない者は、親方様が手厚く所有地で保護し弔っていた。

鬼殺隊、鬼を滅する為に組まれたこの隊はいつしか巨大な組織へと拡大したが、未だ鬼たちの襲撃は収まることはない。
その頂点に立つ柱たちと肩を並べることが、己の目標であった。しかし柱となった今、思うのはかつて同じ道を歩んだ父が、その胸に何を抱いて戦いの場へ赴いていたのかということである。




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