5万打 | ナノ

愛すべき
オポチュニズム


特別に何かがあったわけじゃない。理由をつけるならば、天気が良すぎるからグラウンドに行きたくないとか。友達の彼氏と別れたって愚直を聞き飽きたとか。体育の先生が好きじゃないとか。とてもどうでもいい理由を引っ提げて、私は人生で初めて授業をサボった。


体育の授業を受けるため更衣室へ向かう途中に、教室に携帯を忘れた事に気づいて引き返す。そして再び体育館へ戻ってくると、クラスの女子たちは既にグラウンドへ向かったようで更衣室がやけに静かだった。おまけに体育館も静かで、窓から差し込む日の光が床に反射している光景がどうしようもなく綺麗で。何かに誘い込まれるように体育館へ足を踏み入れた。

誰もいない静まり返った体育館。眠っているような静寂。広すぎる空間で私は一人大の字になって寝転んだ。そうしていると始業のチャイムが鳴るが、起き上がる気にはなれなかった。授業をサボるなんて初めての経験に、罪悪感だとか背徳感は生まれない。私の胸はこの体育館のように静かなまま。一定のリズムを静かに刻むだけ。目線の先にある高い高い天井にあるライトの数を無心で数えていると、体育館を歩く足音が鼓膜を揺らした。そしてだんだんと大きくなる足音が真横で止り、私に影を落とす。

「なにしてんだ?」

そう言って私を覗き込んだのは同じクラスの瀬見英太。人当たりがよくクラスの人気者。あまり会話をした記憶がないから、今のこの状況が不可思議だ。

「人生について考えてたの」
「なんだそれ」
「瀬見くんは何してるの。バレー部がサボったりしたらやばいんじゃない?」
「俺はボールの空気入れ取りにきただけ」

じゃらりと音を立てて体育館の用具入れの鍵を私に見せる。

「それなら早く行きなよ」

瀬見くんから再び天井へ視線を動かすと、私の言葉を無視して床へ寝転び、私と同じように天井を見上げる瀬見くん。

「え? 何してるの」
「何って、ミョウジの真似」

そんなことを言う瀬見くんを横目で盗み見れば、高い鼻筋に、瞬きをする度にばさりと音が出そうなくらいの長い睫毛。綺麗な顔。それなのにボコりと飛び出た喉仏が男らしい。さすがバレー部イケメン、モテ男。その眩しい横顔に思わず溜息が漏れる。

「なんかあったのか」
「なんで?」
「ミョウジって体育好きじゃん」

確かに体育は好き。けれど体育は男女別なのに、それを知っていることが不思議。

「私を男子小学生みたいな言い方しないでよ」
「でも事実だろ」

歯を見せて小さく笑う顔に、ムッとした気持ちがすっと消えていく。瀬見くんってそういう笑い方をするんだなって、思わず見惚れてしまった。そんな私の視線に気付かず「ミョウジってサボったりするようなヤツじゃないだろ」と、また私を知ったような口振り。それを不快には思わないが、不思議だと重ね重ね思う。

「体育館が、綺麗だったから」
「綺麗? 体育館が?」
「そう。光が差してて綺麗」
「ああ、埃がキラキラしてんな」

埃。その一言に笑いが込み上げてきて、それを我慢できずにケラケラと笑ってしまった。ロマンの欠片もないこの男は本当にモテるのだろうかと、可笑しくて可笑しくて仕方がない。体育館に響く私の笑い声が妙に軽快で、それを良く思わなかったのか瀬見くんは笑いすぎだと少し声を低くする。

「瀬見くんってさ、モテるんだろうけど長続きしないでしょ」
「は!? お前失礼だな!」
「でもそうでしょ?」

目立つ瀬見くんは噂の的。だから付き合った別れたなんて話は結構耳に入ってくる。その噂によれば、瀬見くんはモテるが長続きしないらしい。たぶん噂は事実なのだろう。言い返す言葉がないのか、変な声を出して唸り瀬見くんがこちらへ双眼を向けた。その事によって私と瀬見くんの鼻先の距離が想像より近くて、びりびりと全身が痺れるような感覚と共に目を見開いてしまった。距離の近さに驚いたのは私だけではないようで、瀬見くんが「悪い」と慌てて身体を起こす。一瞬ではあったが間近で交わった視線に私の心臓が一度ドンと音を立てて騒いだ。それをきっかけにどんどん速度を増す鼓動。

広い体育館に二人きり。私に背を向けて座る大きな背中に触れてみたい。もう一度あの双眼を間近で見てみたい。床についた指先の温度を知りたい。瀬見くんを知りたい。

「瀬見くんって彼女いる?」
「あ? え? いるけど」
「そっか。残念」
「残念って、は?」
「うん。残念。よし、今から体育出ようかな」
「え、お、おい!」

立ちあがり、床に腰を下ろしている瀬見くんに視線を落とせば、見たことのない慌てた顔をして私を見上げていた。

「私、瀬見くんのこと好きになっちゃった」
「はあ!?」

目も口も大きく開いた瀬見くんの間抜け顔が面白くて笑える。そんな顔もするんだねって、思わず顔が綻んだ。

「瀬見くんもそろそろ戻った方がいいよ」

呆ける彼を置いて更衣室へ小走りに向かった。瀬見くんの彼女はどんな人だろうと想像しながら、高鳴る胸に合わせて鼻歌を歌い首もとのリボンを緩める。さて、これからどうやって瀬見くんの気を引こうかと思考を巡らせれば、驚くほどに高揚した気分になった。


‐‐‐‐‐‐‐


「瀬見くん、おはよう」

朝の昇降口で偶然居合わせた瀬見くんに向かって、にっこりとわざとらしく笑って声をかければ「お、おう」とぎこちない返事と変な顔。下駄箱に手をかけたまま身動ぎしない姿に、随分意識してくれているんだなと自分の顔が緩む。

「教室行かないの?」
「いや、行くけど……」
「一緒に行こうよ」
「は?」
「どうせ同じ教室に行くんだからいいじゃん」

駄目なの?と精悍な顔を覗き込めば肯定も否定もせずに、ようやく下駄箱から手を離し歩き出した。

「ねえ、現国の課題やった?」
「やった」

ちっともこっちを見てくれないから怒っているのかと思ったが、会話はしてくれるらしい。瀬見くんって優しいんだなと、観察するようにペラペラと口を動かせば律儀に答えてくれる。迷惑は迷惑だが、拒絶するほどではないのか。それが出来ない人なのか。

それから私は瀬見くんに拒否されない、ギリギリのラインで彼に話しかけ続けた。


「瀬見くんノート見せて」
「なんで俺?」
「駄目なの?」
「駄目じゃ、ねーけど……」

渋々といった顔で差し出されたノート。いかにも男らしい文字で埋まっているノートは結構間違いだらけ。スポーツ推薦は大変だなと、赤ペンで修正してノートを返却した。後日「お前は教師か」と、突っ込まれただけで、特に私の行動を咎めることはなかった。


「瀬見くん移動一緒に行こうよ」
「は?」
「駄目なの? 今から行くんでしょ? どうせ目的地一緒だよ?」

押しに弱いのか、顔を歪めつつも隣を歩く私を突き放したりはしない瀬見くん。そうやって何かと断りづらい理由を用意して瀬見くんにまとわりついてから数週間。


放課後、職員室での用を済ませて教室へ戻ればポツンと一人で机に向かう瀬見くんがいた。どうやら日誌を書いているらしい。そういえば今日の日直は瀬見くんだったと、なんの迷いもなく前の座席に座れば「おい」と分かりやすく眉間に皺を寄せた。

「あのさミョウジ」
「ん?」
「俺彼女いるんだけど」
「知ってるよ?」

骨張った指に握るペンを何度か持ち直して、言葉を続けられずにいる瀬見くん。言わんとしたいことは、なんとなく分かる。簡潔に言えば私が煩わしいんだろうな。

「クラスメイトに挨拶したらおかしいの? ノート借りたら変? 目的地が同じなのに避けて歩いた方がいいの?」
「お前なぁ……」
「わかりました。もう話しかけませんー」
「そうは言ってねえだろ」
「じゃーなに?」
「彼女いるから、その……。ミョウジの気持ちには応えてやれないっつうか……」
「私がいつ見返りを求めた?」

言葉を発しない変わりに、瀬見くんの重たげな溜息がどんよりと二人を包む。

「話しかけるくらい、いいじゃん」

私の開き直った言葉に反応はなく、呆れて諦めたように日誌にペンを走らせる。

「ね、彼女この学校?」
「そうだけど」
「どうやって付き合ったの?」
「告白されて」
「それで?」
「それで……付き合った」
「それだけ? 顔で選んだの?」
「その言い方やめろよ」

一度チラリと視線を上げて、私を上目使いに見る表情がその辺の女子より艶美であった。そんな瀬見くんと付き合う女子はどんな子なんだろうか。

「どこが好きなの?」
「……いい子だな」

笑った顔が可愛い。弁当作ってくれる。勉強教えてくれる。連絡がまめ。月並みな言葉に「ふーん」って感想しかでなかった。

「なんだよ」
「いや? いいなあって」
「なにが?」
「瀬見くんの彼女。瀬見くんと付き合えていいなあって」
「……だから、そういうこと言うのやめろって」

がしがしと耳の辺りを乱暴にかいて、困ったようなちょっと怒っているような。それでも最後には呆れたように笑ったその顔が、なんでかどうしようもなく好きだなって思った。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐


貴重な日曜日だというのに、友達との待ち合わせ場所で待つこと30分。まさかのドタキャンされた。それならもっと早く連絡してよだとか、なんで彼氏優先なのよだとか。むしゃくしゃした気持ちで街中を歩けば、前方に見覚えのある髪型を捉えた。まさかこんなところで会えるなんて思ってもみなかったため、ヒールなんか気にせず駆け出して背中を引けば勢い良く振り返った瀬見くんが、知らない女子の名前を口にした。

「あ、……ミョウジか。……悪い」

私の存在を確認すると分かりやすく落胆の色をみせたことが気に入らない。少しは隠してよって気持ちから、意地悪を言いたくなる。

「さっきの、彼女の名前でしょ? もしかして振られたの?」

どうせ痴話喧嘩でもしたのだろうと鼻で笑ってやれば、「うるせえな」と今まで聞いたことのないくらいの低い声。

「え、もしかして図星?」
「だったらなんだよ」
「うっそ。あ、なら一緒にどっか行こうよ」
「行かねぇよ」

なんで振られたんだろうと気になるが、今の私にはどうでもよかった。失恋の傷だとか過去の思い出だとかには興味がない。私が望むのは少しでも瀬見くんと一緒にいたいってこと。

「ならもう寮に帰るの?」
「ああ」
「私も今から帰るとこなの。私の家学校の近くなんだ」
「……そうかよ」

そう言って歩き出した瀬見くんの隣に並ぶ。私に文句を言わないことから、一緒に帰っていいってことなのだろうと勝手に解釈して駅まで歩いた。さすがにペラペラと話す気にはなれず、黙ってコツコツと鳴る自分のヒールの音を聞きながら、いつもより高くなった視線で瀬見くんを見つめた。

駅につき改札を通ってホームで電車を待つこと数十分。ここにきて漸く沈黙が破られた。

「なあ、俺の服ってダサい?」

私に正面を向いて、情けない声色。その瀬見くんの足元には季節感のない重たそうなゴツいブーツ。ダメージにしては穴の多いジーンズ。洗濯が大変そうな数える気にならないファスナーだらけのTシャツ。そして極め付きには胸元でデカデカと怪しく光るクロスが首から下げられている。
正直後ろ姿からダサいなとは思っていた。けれど会えたテンションと別れたなんて言われて、「瀬見くん私服ダサいね」って言うタイミングがなかっただけ。

「うん。ダサい」
「マジか……」
「もしかして私服がダサいから振られたの?」

ばつが悪そうに俯く瀬見くん。嘘、そんな理由ってある? それで冷めちゃうわけ?

「うわー。瀬見くん女見る目ないね。私ならそれくらいじゃ振ったりしないのに。ろくな女じゃないかったんだね」
「……お前なぁ」

唸るような声を出し、ゆっくりと顔を上げた瀬見くんの瞳は怒りに震えているようだった。

「よく知りもしねえで、んなこと言うんじゃねえよ」
「事実じゃん。たかが服装で振られるとか」
「お前さ、なんなの? 俺のこと好きとか言ってさ」
「好きだよ」
「好きなら何してもいいのかよ。何言ってもいいのかよ」
「なにそれ」
「そうだろ。彼女いるっつってんのに付きまとって。好き放題やりたい放題。普通じゃねえよ、お前。頭おかしいんじゃねえの」

ガンと鈍器で頭を殴られたような衝撃に襲われた。は? なにそれ。確かに強引で迷惑なことをしたかもしれないけれど、なに? 頭がおかしい?

「……やーめた」

怒りを通り越して冷えていく。指先から氷に触れたように冷たくなる感覚。頭に上った血は数回の深い呼吸と、冷めた気持ちによってみるみる冷えていった。

「確かに瀬見くんからしたら、さぞ私は煩わしかっただろうね。でもさ、その言い方はないんじゃない? 興醒め」

終わりを告げるようなタイミングで鳴ったホームのアナウンス。

「ばいばい、瀬見くん。もう声かけたりしないから安心してね。さようなら」

私と瀬見くんに壁を作るようにして吹き抜けた風が妙に爽快で、にっこりと笑い手を振って瀬見くんをホームへ残し立ち去った。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐


「昼、一緒に食わねえ」

昼休みになると私の前に立ちはだかった瀬見くんが唐突にそんなことを言い出した。

「なんで? 嫌だけど?」

苦虫を噛み潰したような顔をして「どうせ昼は食うんだろ」と、以前まで私が言っていたようなセリフ。

「話したいことあるんだよ」
「私はないよ」
「俺はあんだっての」

有無を言わせないような力強い眼光に折れて、仕方なく瀬見くんとお昼を共にする。食堂で向かい合って、会話のない食事。

「瀬見くん、言いたいことあるなら早くして欲しいんだけど」

食事を終え箸を置き瀬見くんを見据えれば、既に食べ終わっていた彼は水をがぶりと飲み込む。そしてゆっくりと私へ視線を向けた。

「この前、言い過ぎた」
「うん」
「……ごめん」
「律儀だね。別にもういいよ。話それだけ?」

もう行くねと席を立てば瀬見くんも無言で私に続いた。そして同じクラスなのだから教室までついて歩き、なぜか私が自分の席についても真横にはまだ瀬見くんの姿があった。

「話終わったんじゃないの?」

なんなのよって睨み付けると、重そうに「俺さ」と口を開くがその声を遮るように「瀬見」と彼の名前を呼ぶ声が教室に響いた。

「彼女呼んでんぞ」

その声につられて入口に視線を向けると、可愛らしい女子が瀬見くんへ視線を向けている。やり直そうって話かな。まあ、関係ないけど。

「早く行ったら? 待ってるよ彼女」

想像より剣のある言い方をしてしまった私は、不覚にもまだ瀬見くんに気があるらしい。呆れる。自分に心底呆れる。
彼女の元へ歩き出した瀬見くんの背中なんか見たくもなくて、用もないのにスマホを操作して興味のないニュースの記事を眺めた。世の中は目まぐるしく変化しているというのに、明日の私は滑稽にも瀬見くんがよりを戻した彼女の存在を気にしてしまうのだろう。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐


「はよ」

朝の昇降口。ぶっきらぼうに挨拶をしてきたのは瀬見くんだった。なぜ?

「……おはよう」

同じクラスだから会話をしないってのもおかしいってこと?なんのつもりよって上履きに足を突っ込んで足早に教室へ向かえばわざとらしく「今日小テストあるな」と瀬見くんが隣に並んできた。

「ねえ、なんなの?」
「なにが?」

無駄に爽やかな笑顔が腹立たしい。

「クラスメイトと雑談したら悪いかよ」

得意そうな顔をして、まるで仕返しだと言いたげな声色がさらに私を苛立たせる。

「悪いに決まってるじゃん。嫌だから話しかけないで」
「……自分は良くて俺は駄目なのかよ」
「瀬見くんがはっきり言わなかっただけでしょ」
「本当に、お前なぁ」

呆れたように笑うその顔はずるい。何も言えなくなるじゃんか。

「……彼女はいいの」

ぼそりと呟けば「は?」と聞き返される。惚けた表情でないことから本当に聞こえてなかったようだ。

「だから! 彼女! 彼女はいいのかって聞いたの!」
「彼女? 振られたって言ったろ」
「え? あー、うん。そう……だった、ね」

やり直したんじゃないの? その言葉は瀬見くんが「小テスト絶対やばいわ」なんて普通に会話を続けるものだから、呑み込んでしまった。


それから瀬見くんは、私がしていたようにいちいち声をかけてきた。それは挨拶だったり何気無い会話だったり。今の自分がどうしたいか測りかねている時に、瀬見くんのこの行動は厄介であった。そもそも彼の意図が読めない。クラスメイトとしてなのか、特別な何かがあるのか。


その答えを知るのは残暑を強く感じた日。

ギラギラとした日差しから「体調が悪いので」と木陰へと逃げ込んだ私。女子はテニスコートでラケットを振り翳し、男子はグラウンドでサッカーボールを追いかけ回している。
体育は好きだが日差しは嫌いだ。日光ってのは照らされるだけで体力を奪う。芝生に寝転んで視界を自分の腕で隠し木々のざわめきに耳を傾けていると、不意に芝を踏む音がした。

「大丈夫か?」

顔を見なくても分かる。声で分かってしまうことが憎らしい。

「ただのサボり」
「ならいいけどよ」

木の幹に背を預けて座る彼は何を考えているのだろう。私はもう好きだなんて言うつもりはないのに。

「どうして私に構うの」
「ん? わかんねえの?」
「分かるわけがないじゃん」

「そっか」と呟く声は揺れ動く葉の音のようだった。

「放っておけないんだよミョウジのこと」
「……なにそれ」
「たぶん、好きなんだと思う。付き合ってた彼女に振られたってのに、ミョウジのことばっか考えてたし」

たぶん、ってなによ。瀬見くんへ視線を向ければ、涼しい顔をしてグラウンドの方を眺めていた。その横顔が悔しいくらいに綺麗で、むかつく。

「むかつく」
「はあ? 他に言うことないのかよ」

そう言って笑う顔がむかつく。

「……最初のデートは買い物がいい」
「おぉ」
「瀬見くんの服買うの」
「おい」
「あのファスナーだらけの服。どうやって洗濯するの」
「他に言うことねーのかよ」

呆れた笑い方が好き。

「洗濯しないの?」
「……クリーニングだよ」
「馬鹿みたい」
「おい!」

ちょっと怒った顔が好き。

「ブーツはまだ早いよ」
「そう、なのか?」

惚けた顔が好き。

「流れ星ってゴミが燃えてるだけなんだよ」
「唐突だな」

差し込んだ光の輝きをハウスダストだと言う貴方が好き。

「私と付き合ったらたぶん大変だよ」
「だろうな」
「他の子に優しくしたら怒るよ」
「おー、気を付ける」

馬鹿みたいに優しいところが好き。

「俺と付き合う気になった?」
「……どうしてもっていうなら」
「可愛くねぇ」

そんな貴方が好き。

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