もしも…パロ(後)

さて、もしも…パロの続き、後編です。
前編はTURN05のラストで丁度キリ良く終わりました。
今回は、TURN06の頭からナナリーとの電話での会話です。
ん〜…やっぱり、ナナリーにも厳し目…かな?(汗)
スザクにも、ですけど…やっぱりルルーシュごめん!って感じです(マテ)
注)ほとんどの台詞と2人の行動は、ほぼTVからの抜粋です。

※CP:無し(スザク→ルルーシュ←ナナリーかも?)
※全体的にシリアスです。ラストも暗め。
※時間軸はR2のTURN06の始め。ナナリーとのぐるぐる電話。
※前後編の後編です。…後編は少ーし変えましたけど、やっぱりアニメのまんまです(爆死)
※もしもパロです。…本文のタイトルでバレバレでしょうけど(苦笑)
※ルルーシュ、ごめんなさい。いじめるつもりじゃ…!(脱兎←コラ)
※それでも良いと仰る方は、どうぞお進み下さい。

*

「もしもルルーシュの記憶が戻っていなかったら」パロ(後)






『お兄様なのでしょう? 私です、ナナリーです!』


  受話器から聞こえてきた、可愛らしい少女の声に、ルルーシュは驚いて固まった。
  そんなルルーシュの後姿を見ながら、スザクは暗く思う。


――― 本当に記憶が戻っていないのなら、ナナリーのことはわからないはず。さあルルーシュ、答えを出してもらおう。


  そんなスザクには気づかず、電話の向こうでは、先ほどまで嬉しそうだった声色が、段々と不安になってきたかのように声が翳ってきた。


『あの…、お兄様ではないのですか?』

「――― あの、人違いではないかと…」

『…っ!?』


  ルルーシュの返事に、電話の向こうから驚愕の声が聞こえるが、ルルーシュにはどうしようもない。


『あの、私、ナナリーです。ナナリー・ヴィ・ブリタニアです。…本当に、お兄様ではないのでしょうか…?』

「…はい、ただの学生ですし」


  少女は、震える声で再び尋ねてきたので、ルルーシュははっきりと頷く。
  少女の名前に内心驚きながらも(新総督って、只の貴族じゃなくって皇族なのか!?)、失礼にならないように気をつけながら。


――― ルルーシュ、やはり記憶が戻っていないのか…


  傍でルルーシュの電話の様子を見ていたスザクは、本当に知らない様子に内心ガッカリしていた。
  そして、慌ててそんな自分に首を振る。


――― いやいや、どうしてそれでガッカリするんだ!? ルルーシュの記憶が戻っていないなら、ルルーシュはゼロじゃないんだから、その方がいいじゃないか!


  そんなスザクの葛藤など知らず、ルルーシュはルルーシュで大変だった。
  電話の向こうの少女の声が、明らかに落ち込んでしまったからだ。


「はい、すみません…」

『こちらこそ、スザクさんの大切な友達と聞いていたので、早とちりしてしまって…あの、私』


  少女…いや、皇女の言葉に、ルルーシュはスザクに対して怒りを覚える。
  …自分が、皇女の兄だと言う謂われもないことで、電話先でとはいえ年端もいかない少女を泣かせて(いや、実際には泣いていないかも知れないが、ほとんど泣かせているようなものだ)しまったのだから…。


「いえ、皇女殿下とお話出来て、光栄です」

『っ、あの…電話を戻して貰えますか…』

「イエス、ユアハイネス」


  電話をスザクに返して、ルルーシュは小さく吐息をついた。
  勿論、目の前のスザクが話をしている電話には届かないように、である。

  ルルーシュから電話を受け取ったスザクは、電話の向こうの少女に申し訳なく思いながら謝った。


「ごめん、ナナリー…誤解させるような形になっちゃって」

『いえ、雰囲気が似ていたので、驚いてしまって…っ、あの、では、エリア11でお会いしましょう』


  対するナナリーの声は明らかに落ち込んでいて…まるで、これ以上の会話を避けるように電話を終わらせる。
  途絶えた通話に、スザクはさらに申し訳なく思いながら、ルルーシュに向き直った時……驚きに目を見開いた。


「る、ルルーシュ…!?」

「え? …あれ、どうして……」


  ルルーシュの綺麗な瞳から、大粒の雫…涙が溢れていた。
  ルルーシュ本人にも泣いている自覚が無かったらしく、戸惑いながらも目をこすっている。
  だが、その涙は止まらない……。


「おかしいな……悲しい事なんて無かった筈なのに……」

――― ただ、あの…電話の向こうから聞こえた、少女の悲しそうな声を思い出すだけで、胸が……痛い…。


  止まろうとしない自分の涙と胸の奥の痛みに戸惑いながら、ルルーシュは首を傾げながら涙を流している。

  そして、スザクは………そんなルルーシュの姿と、先程の電話でのナナリーの声を思い出し、ギュッと胸元を掴んだ。


「僕のしたことは……でも、ルルーシュは……」

――― ルルーシュは、ゼロなんだ。

――― ユフィを殺したのは、ゼロなんだ。


  ルルーシュは、本気で自分の涙に戸惑っていて。
  本気で、ナナリーのことを知らない様子だった。
  でも、覚えていないはずのナナリーとの電話で、ルルーシュは涙を流している。
  そして、ブラックリベリオンの前の2人を思い出して。

  スザクは、自らの胸に湧き上がる罪悪感に、強く目を閉じた ―――――。


*