04「遭遇」

遭遇






  ロイドは店に入った瞬間、目が引き寄せられるようにカウンターにいる少年を見つけた。
  少年は艶やかな柔らかい黒髪に、透けるような白い肌を持ち、その瞳は深く済んだアメジスト。
  更に、顔立ちはとても見覚えのあるもので…。


「まさか……」


  思わず口から出たのは、否定する言葉だった。
  この目で見たものが信じられなくて……。
  そして、ロイドがとった行動は…


「……痛い」


  古典的ではあるが、自らの頬を抓ってみる、だった。

  …これは、夢ではない。
  過去、何度も見た、現実味がない夢想ではなくて、現実 ――― !


――― 落ち着け。落ち着けロイド・アスプルンド。


  瞬時に熱くなった思考を諌める。
  煮えたった鍋に差し水をするかの如くに。
  そして、彼の少年の現状を推測する。


「…あの制服は…アッシュフォード学園、か…」


  あの方の不利になるようなことは、騎士ならば絶対にしてはならない。
  もし、あの方が身を隠していらっしゃるのだとしたら、表立って騒ぎにしてしまっては、あの方に迷惑がかかる。

  ロイドは、今すぐにでも飛び出して、彼の少年に抱き着きたいのを、抱き締めたいのを我慢した。
  もし、今の普段のロイドを知っている者達がそれを知れば、驚き慄くだろう。

  現在、彼の少年は店員となにやら揉めているようだった。
  なら、自分の取る行動は………。




  そうして、騎士は8年振りに、主と再会する ―――――。
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