Bises―眠っている君へのキス

春の麗かな陽気。
いつものように縁側で自慢の庭を眺めていた椿はぽかぽかの日差しに包つまれ、いつのまにか眠りに落ちていた。



軽い足取りで幸村は廊下を歩く。いまは八つ時、椿の部屋で一緒に時間を過ごそうと彼女の部屋へ向かっているところだった。


「・・・?」



彼女の部屋の前の縁側で人影を見つける。
・・・よもや自分の愛しい人を狙う不届きな輩では、と怪訝な表情を浮かべて近づいてみると、それはいま会いたくて堪らなかった彼女自身であった。色々安心した幸村はの隣にそっと腰を下ろした。目の前の椿は器用に柱に寄りかかり静かに寝息を立てている。


(・・・風邪など引かぬといいが・・・)


幸村の心中も余所に椿は何か寝言を漏らし、微笑む。

(一体何をいっておるのだ・・・?)

聞き漏らさまいと、ぐいと身を寄せて口許に耳を近づけた。



「・・・んぅ・・・ゆき・・むらぁ・・・」
「ッ!?」


幸村は思わずバッと身を引いて距離を取った。
椿はまたへにゃりと微笑みをこぼした。



幸村は自分でも体中の血という血が顔に集中するのを感じた。きっと、自分の顔は今真赤なのだろう。早鐘を打つ心臓を武田家直伝の気合でどうにか黙らせた。
もしや今の自分の気配で起きてはいないだろうと心配になっての方を見る。まだ柱に寄りかかっている。案外眠りが深いようだ。頑張ってもう一度の隣に座る。今度は先程よりもぐっと距離を詰めて。



「ん・・・」



体温を感じたのだろうか、椿が身じろいで幸村に寄りかかった。



(うぉぉぉおおおおおお!!!!!)




幸村は叫びたい気持ちを必死に抑える。そして普段では、彼女が起きている時には出来ないようことを試みてみた。



―ちゅっ



寝ている椿の頬に軽い口付けを施したのだった。そして唇を離すと椿の肩に手をかけ、自分の方にぐっと抱き寄せた。
これが幸村の精一杯だった。



(某もとんだ破廉恥侍だ・・・・)
(・・・・なんだ、私はてっきりもっとスゴイことをされるのかと思ったのに・・・この臆病者ぉ)




実は途中から起きていた椿であった・・・。

お題元:縁繋


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -