女王の日常

「ヤクザ、誘拐、お礼参りで検索」


「遊星が誘拐されたぁ！？」

うちの弟はヒロインかなにかだったのかしら・・・。

ガレージで晩御飯を作っていると、どかどかと帰ってきた弟たちに今日一日の顛末を聞かされる。
遊星を無理矢理引き抜くために、修理と称して呼び出して拉致したらしい。
・・・デュエルギャングより性質悪いのね？

でも卑怯な手で解決しそうな奴らには少々心当たりがあるので、後でお礼しにいってあげようかしら？


「満、なんか楽しいこと考えてねぇか？」
「ふふ、分かっちゃった？」

台所に一緒に立っていた京介とにこにこと微笑み合った。
腹ごしらえしたら、ひと暴れと行きましょうか。

「あら、ジャック、あんたまたサボってんの？」

配膳を任されて席にコーヒーを運ぶと、テーブルにいたのはジャックだった。
伝票をよくよく見ればBAM、ブルーアイズマウンテンだった。
長い脚を優雅に組み替えて、コーヒーを飲む。
うん、所作だけはお上品なのよね。


「フン、俺は休憩しているだけだ」
「またクロウにどやされるわよ〜？」


右手でほっぺたをつまんでぐりぐりと上下左右にこねくり回した。
あ、頬が硬い。さては表情筋が死んでるな？いっつもむすっとした顔しちゃって〜。
痛かったのかぺしんと手を弾かれた。

こないだクロウとの口論の末にキングに合った仕事を探す！と言って商店街の店を荒らしまくっていたのだ。
迷惑をかけたお店には後からこっそり謝って回った・・・。
ありがたいことに、みなさん笑って許してくれたが。


「暇だったら晩御飯の買い出ししといてくれる？」
「キングは、買い出しなど！」
「ん〜？キングたるものレディーには尊敬の〜？」
「わ、わかった！！買ってくる！！！」
「じゃあリスト渡すわね」


適当な紙にさらさらと欲しいものを書いていく。
よし、この際だから重たいお米も頼んでしまおう。


「はい、リスト。あ、お菓子は一個までよ？」
「誰が菓子など買うかぁ！」
「ちゃんと商店街でお買いものするのよー！」


必要な分だけの紙幣を渡して、ひらひらと手を振ってジャックを見送る。
しょうがない、コーヒー代は社割でおごってあげましょう。
いたいけな少年の夢を救ったみたいだしね？