かぶき町にはいろんな人たちがいる。そして、いろんな店もある。団子屋、居酒屋、キャバクラ、ホストなどなど…そして私はかぶき町の端っこにあるお団子屋で仕事をしています。なんだかんだトリップした先でも楽しく過ごせています。…なんか普通じゃない?入り方。なんてショーケースの中を整理しながら思っていたら、若い女の子達からこんな声が聞こえてきた。


「…でさ、この前高天原で銀髪のホストの人の接客受けてマジ笑ったわ」

「あー!あの人!かっこいいよね、それとえーとなんて言ったけ?黒髪の人も好き!」

「今夜も高天原行っちゃおうかな!」

なんて声が聞こえてきた。わたしはその女の子達のそばに行き「あの…」と声をかけた。

「その話、詳しくお聞かせ願いますか?」

「え、えぇと…?」
「あの…?」

お客さんの2人は驚いたように私を見ていた。私は満面の笑みで話を聞いていた。







時間は夜の江戸、かぶき町の繁華街。煌びやかなネオンが眩しいこの街に私は少し豪華な服装をして高天原に向かう、モヤモヤした気持ちを抱えながら。

「天使の休息所、高天原へようこそ」

「私はァ、このTOSHIがいいわ!」

「あたしはSOUGOがいいわ!」

なんて声が出入り口から聞こえてきた。
私は入り口にいる方、多分…狂死郎さんが「今夜は特別に揃えております。お客様は初めて…ですよね?」と声をかけられた。狂死郎さんめっちゃかっこいいな。なんか輝いてるよ、キラッキラだよ。

「はい…えぇと、銀さん…じゃなくて、この人を」

「GINですね。かしこまりました。お席に着いてからお付けしますね。少々お待ちください」

少し待っていると別のテーブルから「行かないでー!」とか「やだぁすぐ戻ってきてぇ!」とか聞こえてきた。

「こんばんわ、お客様。ご指名ありがとうございます、GINでっ…!」

「…銀さん、こんばんわ」

「……名前」

「銀ちゃん、どうしたアルカって名前!」

「え!?名前さん!?なんでここに!?」

「銀さん、なんでここにいるの?」

「そっ…それは!」

「お団子屋さんに来たお客さんに聞いたけど、銀さん女の子に囲まれて楽しそうに接客してたって聞いたよ」

「お、落ち着け名前…」

「ホスト、楽しい?」

銀さんは汗をかいて私から目線をふよふよと彷徨ってた。私は満面の笑みで聞いた。

「…あれはシュラバってやつアル」

「銀さん…」

「おおお落ち着け!これには訳があるんだ!」








「はァ!?またホストをやってほしいだって!?」

「はい…」

銀時達がホストをやる前の話。事の発端は万事屋に高天原のホスト、狂死郎が依頼したのが始まりだった。

「実は従業員が全員インフルエンザにかかりまして…。でも明日は土日、皆さんお休みなのでお店をやりたいんです…皆さんの力をお借りしたいんです!」

「そうなんですね…」

「前、マダム夜神が来た時の様に揃えていただけたらと…」

「マダム夜神が来た時って…」

「…真選組…ですか…」

ということで真選組に頼んだら近藤が「そうか!俺は協力するぞ!」なんて言うからイヤイヤ言う土方とノリノリの沖田を引き連れ高天原で仕事ということだった。




「ってことだよ!名前!」

「仕事なのはピンと来たよ。でもそのあとよ。私が言いたいのは」

「そ、その後って…?」

「女の子に囲まれてキャーキャー言われて、それで満更でもないセリフ吐いちゃって」

「…お、おい、名前…?」

「手とか繋いだり?笑いかけたりさ、抱きつかれたり…」

「名前、それって…」

「私も、されたことないのに…」

「……嫉妬、か?」

そう言われてハッとした。これは、嫉妬。

「…違うし…」

「名前…そーかそーか、愛しの銀さんが他の女にキャアキャア言われてるのか嫌かァ!」

「違うって」

「嫉妬してる名前ちゃんもキャワイイー!」

「違うって!」

銀さんにピシャリ!と言ってしまった。何事だ?と周りのテーブルの人たちも見ている。

「ちょ、名前…」

「どうされました、お客様」

そう声をかけられて見ると沖田さんが目の前にいた。

「おきた、さん…」

「…GIN…7番テーブル呼んでましたぜ」

「お、おう…」

銀さんは沖田さんの言葉を聞きそちらの方のテーブルに向かった。また、ちやほやされに行くんだ。

「此方に座っても?」

沖田さんは私の隣を指差し聞いた。私は二つ返事で承諾し、席についた。

「…どうしてんで?旦那と喧嘩ですかィ」

「銀さんがホストしてて…」

「それで、みんなにちやほやされて嫉妬ですかィ?」

「う!」

ぐさり!と言葉の矢が私に刺さる。

「仕事だって言ってんのにそれを分かろうとしない彼女なんて旦那も大層大変そうでさァ。しかもここであんな大きな声出して、あんたも土方さんと同じくらいの歳なんだからその辺わかってくだせェよ」

グサグサ!と言葉が刺さりまくる。わかってるし、わかってるし!

「……俺なら、そんなことさせやせんよ」

「え?」

「今夜だけは、俺の彼女になりやせんか」

私の手を握りながら、沖田さんの目は、真っ直ぐ私を見ていた。

「おきた、さん…?」




-愛は惜しみなく奪う-
(誰かを愛する時は、その相手の持つすべてを自分のものにしようと求めるということ)




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