冬、それは寒い季節と裏腹に温い食べ物が食べたくなると言うものだ。そう、鍋の季節ですね。
「って事で、今夜はすき焼きです!」
「「「おおおお!」」」
「どうしたんですか名前さん!すき焼きなんて!」
「へへ…それはね」
「あれこれ回想シーンするよこれ。お団子屋さんの所から始まるよこれ」
「銀さん、文章壊す事言うのやめて」
「え!?和牛!?」
「そうそう、和牛だよこれ」
「どうしたんですかこれ」
昼間、働いてるお団子屋さんの親父さんから話しかけられた。親父さんの手には高級和牛がある。
「実はね、町の抽選会で当たっちゃってさ、3キロも食べれないから名前ちゃん少しどうかなって」
「えぇ、いいんですか親父さん」
「うん、ぜひ。食べやすいように薄切りにしちゃったからすき焼きとか牛丼とかで食べてね」
とお団子屋の親父さんからいただいたのだ。どうしようかと悩んでいたら冬だしすき焼きで食べたいなと思い万事屋に用意をして足を運んだ次第だ。
「って訳で食べよう、みんな」
「牛肉!高級品ネ!」
「ふふ、割り下は作ったからあとは牛肉入れて軽く焼いて、具材入れれば食べるよ」
「っていうかあのオヤジ、ケチかよォ…牛肉20枚しかねェよ」
「牛肉の代わりに豚肉と鶏肉買ってきたから」
私は鍋に割下を入れてグツグツと煮る。よしよし、あとは牛肉を入れて、としたら急に停電が。
「あれ!ど、どうしよう」
「落ち着け名前、お前動くとあぶねェからここにいろよ」
「僕ブレーカー見てきますね。あだ!」
わたしの隣にいる銀さんが私の肩を触り動くなと牽制。それとともに新八くんがブレーカーを上げに行ってくれた。でも襖にぶつかったのか声が聞こえた。でもよかった…ありがたい…。
早くすき焼き食べたいよね。
パッと明るくなり、さて肉を焼くかと思うとなんか不自然。
「…あれ…19枚しかない」
「…名前さん…これ」
ブレーカーあげて帰ってきた新八くんは肉の入った包み紙を見てつぶやいた。
「闇の中に紛れて暴れ牛が、もぐもぐ…出てきやがった、もぐもぐ…。俺はそいつの肉を切り裂いてやったのさ!」
「…銀さん、あんた口動いてるでしょう」
新八くんが口がくちゃくちゃと動いている銀さんを見て言った。
「ちげェよ!んな訳ねェだろ!」
「いやいや!あんた口から血垂らして何してんですか!火傷か!?火傷なのか!?」
「これは…殴られたあとだ!」
「銀さん!これはカニじゃないんですよ!?今回は牛肉!だから…!」
そこまで言って勘づいた新八と銀時。
20枚入っているから4人で分けたら5枚ずつ食べれる!と思っていたのに!
「あの牛が勝手に食ったから後は仲良くみんなで仲良く食おうぜ、なぁ?」
ヘラヘラ笑う銀時とそれを見ている神楽。
「1人ずつ入れるんじゃなくて全部入れればいいアル」
神楽ちゃんは牛肉も鶏肉、豚肉など豆腐やネギなども全部入れてしまった。
「おい神楽ァ!お前何してんだ!」
「だってめんどくさいアル」
「…ふふ…」
私はそれを見て笑ってしまった。3人の会話が面白すぎて。
「名前何笑ってんだよ」
「牛肉は無いけど、他の具材はたっくさん買ってきたら食べてねみんな」
「おうよ!任せるアル!」
「あ、僕も食べるから!」
「俺の分も残しとけェ!」
ぎゃいぎゃいと鍋の中を突く3人。私も食べようと箸に手をかけた時、ん、と銀さんからお肉や具材が乗ったお皿を出された。
「取ってくれたの?ありがとう銀さん」
「早く取らねェと全部神楽に食われるぞ」
「そうだね。銀さんもたくさん食べてね」
「おう」
心も体もあったかくなる、ワイワイ囲む鍋は、冬の風物詩だ。
-大鍋の底は撫でても三杯-
(規模が大きいものは、なにもかにも大きくたいしたものだというたとえ。大きな鍋は底に残ったものを集めても碗に三杯分はあるという意から)
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