はぁはぁと息を上げながら走る。前には桂さんと坂本さん、私の後ろには銀さんと高杉さんがいる。早い、でも早くいかなきゃ。
銀さんがいるから、行かなきゃ。
今度は、私は迎えに行く番。
桂さんと坂本さんは勢いよく天人を斬りながら先陣を切る。
私も懐から短刀を取り出し、強く握る。
大丈夫、やれる。真選組で特訓してきたんだから、できる。
「銀時!坂本とともにこちらを行く、お前らは名前殿と魘魅のところへ向かえ!」
先陣を切っていた2人が天人たちが群がっているところへ向かう。
その向かう先を見ると、白いものがいた。あれは、エリザベスだ。
「エリザベスと、桂さんだ…」
苦しい、辛い。でもやっと見えてきた。
真選組や、お妙さん達。そしてたまさん。
未来はもう元に戻ろうとしている。
「おい、名前!」
「…は、ぁ、銀さん!」
「魘魅はどこだ!」
「あの、船の中…!今さっき人が飛んで行ったところ!」
「わかった」
私を追い抜き、船の中へ1人向かう銀さん。その後ろ姿はいつもの姿と重なって見える。
「おいお前」
「たか、すぎ、さん…!」
「俺は先頭の方の陣に着く。お前もついてこい。その刀はお飾りじゃねェんだろ」
「は、っ…はい!」
高杉さんの後ろをついてきてお妙さんや真選組の方へ向かう。
ぎゅっと短刀を握り、決意を固める。
みんなの方へ向かうと沖田さんの後ろに天人がいて、斬りかかろうとしていた。
「沖田さん…!」
私は短刀を握り、腹を目掛けて横に斬る。
肉を絶つ嫌な感触があるが、早く沖田さんを助けたい。未来の私が沖田さんに助けられたように。
「名前、さん…!」
「は、はぁ…、ハァ…沖田さん!怪我はありませんか!?」
「みてわかんだろィ、無事でさァ」
「よかった…」
沖田さんの顔を久々に見た。昔と変わらない顔。
沖田さんは私に近づき、顔をじっと見る。
「…なん、ですか…」
「いやァ、新人が俺たちの過去も未来もぜーんぶわかってるのにわかってないふりして、近付いてノコノコと旦那と付き合ってるなんて未来しりやせんから」
「いやもう私のことも全部知ってるじゃんなんなの?嫌味!?嫌味なの!?」
「…未来を知っててもなお、言わないなんて、ひでぇ人だ」
「…ごめんね…」
沖田さんの言葉はその通り。私は誰が死ぬ生きるも知っているのに言わないことの核心をつくような言葉が刺さる。
沖田さんと話していると、ダダダ!と私に近づくゴリラが。
「ねぇ!?ゴリラって言ったよね!?ひどくない!?」
「ごり、近藤さん!ご無事で何よりです」
「なにこの文面なにこれェ!」
「苗字…!」
「土方さん…」
「…女に剣なんて必要ない、とはいえねェな」
「…はい。ところで銀さんは…」
「万事屋は上だ。もうカタは着いただろう。手下の天人ももう撤退しつつある。あとは…」
土方さんがタバコを吸いながら私に目線を送る。
そこには後ろ姿でもわかる、高杉さんがいた。
「…あいつらが、やってくれたからな。さぁ行こうか、万事屋の所へ」
「はい…」
高杉さん達は瞬く間にいなくなってしまった。本来なら鉢合わせてはいけない人たちだからだ。
私は真選組に囲まれながら銀さんの元へ向かう。
***
「帰ったか」
「あぁ」
「可愛い女子との会話もうちくと楽しみたかったぜよ」
「………」
「どうした、銀時」
「…いや」
「我々の未来は、彼女に救われたのだな」
桂が髪を靡かせながら銀時に問う。
銀時は再び口角を上げて言う。
「しらね」
***
私はたまさんが自然に消えますとみんなに言っている時、船の影になるところに居て、私も薄くなってきていた。
みんなと同じく私もここにはいけはいけない人物だから消えるのか。
「…ふぅ…私は、江戸に帰るのか、元の世界に戻るのかわからないな…」
それでも絶対にここに来たい。
そう願いながら身体が消えてゆく感覚を覚える。
「…ぅ………」
「名前ー!?起きてるアルかー!」
「え、はいー!って神楽ちゃん!」
「銀ちゃんが一緒にご飯食べようって!今日は焼肉ネ!」
「え!?焼肉ぅ!?それは天変地異!明日は大雪になるじゃん!」
「早く早く!」
自分の部屋で寝ていたらしく私は神楽ちゃんに起こされて部屋を出た。
神楽ちゃんを見ると前と変わらない容姿と街並み。
そして私を覚えていると言うことは私は元に戻ってきたのか。
「…よかった…」
「えー?今日焼肉食べるのが?」
「…そうかも!」
「早く早く!」
-元の木阿弥-
(一度は良くなったものが、元の状態に戻ること)
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