くさい、くさい、匂いがする。
けむい?それとも、なんというか

「くら…い…」

「おい、女」

「びぉふ!」

声をかけられ飛び上がると、目の前には綺麗な髪の男性がいた。それは、まさしく。

「…たか、すぎ、さん…?」

高杉さんを見ると、現代のあの厨二で片目しかたく、エロテロリストみたいな片鱗は無く、普通の青年のような姿だった。

「なんで知ってんだ。いや、今のご時世そのくらい知ってて普通か。オイ、死にたくないなら陰に隠れろ」

「え、え?」

私の腕を高杉さんは掴みズンズンとボロボロになったお寺の陰に身を隠した。
私の目に写った景色は、廃墟とかした寺と、その周りの申し訳ない程度の木。そして少し先を見ると荒野になっており、崖の先には天人がびっしりいた。

「…天人…!」

「奴ら、今日も数が増えてやがる。死にたくないならお家に帰るこったな」

「え、待ってください!」

「なんだ」

高杉さんは私を引き離し、境内に入ろうとしていた。

無事私は15年前に来たのだと確信した。そして私のやることは1つ。

「銀さん、銀さんに会わせて下さい…!」

「…なんだお前、あいつの女か?」

「ち、ちが…え?違くはない…?でもちがう?うーん…」

「…どっちかにしろ」

「み、未来の!女です!」

「…未来、な」

高杉さんは私を見て、胡散臭そうな表情をしていたが、やれやれと私を見て「来い」と言われた。



高杉さんに連れて行かれて境内に入った時に強い酒の匂いがした。

「うわ、お酒くさ…」

「誰だか酒持ち込んだ奴…」

「ヒック、そうとくぅ、グラサンかけた、ヒック、とこが、いい酒もってきてぇ」

そう言いながら高杉さんに言う1人の男性。
ま、マダオー!早くない!?私まだ銀さんに会ってないよ!?ってことはもうあっちはあっちでレディーファイトするじゃん!

「ぎ、銀さん!銀さんー!」

「あ!おいお前叫ぶな!」

「うるせェー!このエロテロリストめ!私は早く銀さんに会わなきゃいけないの!」

高杉さんが私の口を塞ごうと押さえにきてるが、私はそんなことをされたらもう会えないかもしれない、早く会って未来を変えてもらうために説明しなきゃいけないのに!

「うるせェな、なんだよ俺はここだ」

そんな声が聞こえた。

「銀時ィ…」

「ぎん、さん…?」

後ろを振り向くと、あの銀さんがいた。
気怠げな様子はあまりなく、確実に20代の時とは違う少し、悲しそうな、それでいて絶望しているような、空気と声が聞こえた。

「……誰だ、お前。高杉の女?」

「は?誰がこんな女。お前の女だとよ」

「はァ?俺こんな女知らねェよ。なにお姉さん俺のファン?ごめんね俺、今からは遊郭行けねェわ」

「違うわ!」

「じゃあ、なに?」

「…銀さん…、いや、白夜叉。私のお願いを聞いて下さい…」

「…俺、人殺しとかあんまりしたくねェよ?」

「…あなたたちに未来を救って欲しいの」

「未来?」

私は白夜叉、もとい銀さんと高杉さんに向かって話を続ける。

「詳しくは言えないけど、今から船がある所の戦場まで行って欲しいの…。そこには、奴がいるから…」

「…奴って…?」

「…魘魅…」

「お前、なんで知って…」

「私じゃ刀を振れないから、お願いします…!魘魅を倒して…!未来を、私たちを救って下さい!」

私は高杉さんと銀さんに頭を下げながら言った。まだこの2人は酒を呑んでいないことが幸いだった。こんな突然現れた女の話しを聞くとは思わないが、それでもその誠意を受け取って欲しくて頭を下げる。

「ならば行ってやろうではないか」

声が少し遠くから聞こえてきた。

「…!桂さん…!」

私がそう名前を言うと少し驚いた顔をしていた。それはそうだろう。
桂さんは部屋の入り口の方に居た。

「オイヅラ、本気か?この女が天人側についてたらどうすんだ」

「ならばどうしてそう思われてもいいようなことを言う?もっと頭を使う奴だったら奇襲だ!とか言うはずであろう」

「…桂さん…」

「それに今あちらの戦場では、我々ではない部隊が魘魅らと闘っている。何者かは分からんが、天人を殺していることからこちら側の可能性が高い」

「もう来たんだ…早い…」

「ワシはこのおなごを信じるぜよ!」

突然私の肩を抱き寄せてそう言う男がもう1人。

「さ、坂本さん!」

「お?ワシの事知っとるがか?嬉しいぜよ、こげな女子に好かれちゅーことは幸せな事ぜよ!あはは!」

「辰馬…」

銀さんと高杉さんはやれやれと言った顔でお互い顔を見合わせ、私を見た。
そして高杉さんが私を見ながら呟いた。

「じゃあお前…えーと、名前は?」

「え、と、名前です…!」

「なら名前。お前のこと信じちゃいけねェが、このバカ2人が信じるってんだ、俺も行くしかあるめェよ」

高杉さんはそういうと刀を持ってくる、とそういい部屋を出て行った。
銀さんも私を見ながら、ため息をついた。

「はぁ…バカとバカとバカがいたら俺もバカになるしかねェな…」

ふわふわと天パをぼりぼりかきながら私に言う。そのくせ、なんか久しぶりに見た気がする。

「じゃあ、行こうか。魘魅を倒しに」






-回瀾を既倒に反す-
(形勢がすっかり傾いたのを、再びもとの状態に返すたとえ)






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