前回のあらすじ
銀さんが突然いなくなってしまって、それを探すべくトリップするパジャマを着て5年後の未来へ無事到着。しかし待っていたのは百詛に犯された自分の姿だった。
「であってる?」
「…多分…いやなんで、私が私に向かって話してるのよ……」
そんなこんなで現在、5年後の私(白髪痩せ細っている)の部屋にいる。
ここに来て1日が経ち、そして夕方に差し掛かろうとしている。
映画通りならば、銀さんと新八くん、神楽ちゃんは万事屋を再結成し、魘魅を倒すべくターミナル跡地に向かうはずだ。
私も覚悟を決めて向かわなければ。
そして、そしてこれを終わらせるために。
「…あなたの予想は当たるから平気よ……」
「え?」
「映画通りになるわ…ゴホゴホ…だからこそ、向かって」
「……わかった」
そして5年後の私から貰ったのは、あの日真選組からくれた短刀だった。
彼女の震える手からそれを受け取った。
「……本当は、私がいきたかった」
「………」
「それでも、叶わないから。だから、絶対に、未来を変えて」
「…わかった」
私はパジャマから、この部屋にある真新しい着物を借りて着替える。そして長い紐を着物の袖に括り、たすき掛けをする。
「…必ず、叶える」
そう呟き、部屋から出る。
そして走る、あの人の元へ。
過去の私がいなくなった部屋に1人、気を失うように眠る彼女を虚な目で見る1人の男がいた。甘栗色の髪をなびかせ、冷たくなった亡骸を抱き寄せる。
「…もう、やめてくれ……名前さん…」
*
「はぁ、はぁ…!」
3人に会わないようにターミナルを登ると、
キン…!と頭上で音がした。キラリと光るそれは2つあった。
「…銀さん…!」
キン!と金属音と、カン!と木が当たる音がするのを聞きながらバレないように登る。
心臓が痛い、確実にいる、彼は。
登っていると音がしなくなり、彼の姿を見ると、銀さんは居なくなっていた。
そしているのは、階段に腰をかけて眠るように目を瞑っている坂田銀時の姿だった。
「…銀さん……」
「…っ………」
「…息が…ある…!」
5年後の坂田銀時は、薄ら目を開けてこちらを見た。その目には光が灯っていなく、もうすぐ命の灯火が消えそうだと、分かった。
「………名前…?」
「…うん、私…」
「お前…白詛にかかって…」
「………かかってないよ…」
銀さんは全て、知っていたのだ。
5年後の私が白詛にかかっていたことを。
それでも、悲しませたくなくて嘘をついてしまった。
それを埋めるかの如く、包帯で巻かれた手を握るが、もう少しずつ冷たくなっていた。
「……俺はもう、だめだ。名前………、だけでも、幸せに生きてくれ…」
「…銀さん…」
「好きだ…名前………」
そう呟き、目を落とした。
「………銀さん…」
彼をギュッと抱きしめると、いつもの感じではなく、少し痩せ細っていた。ああ、この人はいつもそうだ。
自然に流れる涙を着物で拭い、彼の元へ走る。
早く、早く行かねば。銀さんが15年前の世界に行った時に私も行かねば。短刀を懐へ入れ走り出す。
「だから、こいつは、まだおあずけだ」
「オメーらだけは俺のこと、忘れないでくれよな」
時間泥棒が自分のカメラにスイッチを入れ、瞬く間に大きな光を坂田銀時に映す。
「銀さん…!」
「銀ちゃん…!」
「銀さん…!!」
走る私は銀さんの光と共に吸い込まれるように向かう。
「え…!」
「名前!?」
「名前さん!」
そう、呼ばれた気がした。
私は走って向かう、彼と共に15年前の世界へ。
-大旱の雲霓を望む-
(物事の到来を待ち望むことのたとえ。「大旱」はひどい日照り、「雲霓」は雲と虹の意。ひどい日照りの時に、雨の前触れである雲や虹を待ち望むという意から)
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