前回のあらすじ
私苗字名前!花の[ピー]歳!実は私が働いてるお団子屋さんに天下の将軍、徳川茂茂様が来ちゃってもー大変!どうなっちゃうの〜!?
「どうなっちゃうの〜!?じゃねェよ!しっかりしろおめェはよォ!」
「あで!!!」
銀さんは従業員が来ているお団子屋のエプロンをしていた。そして、お団子を運ぶお盆で頭を叩かれた。
「痛い!酷いよ銀さん!仮にも私夢小説の夢主だよ!?」
「何が夢主だよ!?そんな夢主いねェわ!」
「確かに!」
「何やってんすかあんたらアアア!どうするんですか!?名前さん!銀さん!」
新八くんはゴミ箱を抱えながら私と銀さんに聞いた。ゴミ箱の中身はまだ空だが、気持ち悪い…と新八くんが持っているのだ。
チラリと将軍様がいる席を見ると1人でお茶を啜っている。優雅かな?此処は高級茶屋なのか?と疑うほど優雅で繊細な手つきで茶をすすり、ホッとしている顔だ。いやどんな顔だよ。
あのさ、わかる?天下の将軍様だよ?めっちゃ偉い人だよ?元の世界で言うと内閣総理大臣が「突然来ちゃった!お団子食べたいナ!」みたいな世界線だよ!?しかも頼みの綱の松平さんは「ちょっとおじさん休憩してくるからァ」とキャバクラに出かけた。あのオヤジ…と睨んだのは言うまでもない。
前回プールの時は遠くからだったけど、今は違う。ある意味、現場責任者はこの私。失敗したら打首晒し首…
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っ…気持ち悪くなってきた。
「とりあえず私将軍様にお団子何にするか聞いてくるネ。名前はお皿の用意しておくヨロシ!」
神楽ちゃんがエプロンをして筆記用具を持ち将軍のところへ行く。待って!?偉い!偉すぎる!
「こんにちわヨー、何にしますネ」
「…えっと、ではおすすめは何かな?」
「おすすめ…」
そんな会話が聞こえてきて、私は小声で「みたらし団子!みたらし団子だよ!」と言ったが聞こえているだろうか。
「えぇと、み、え…と…淫ら団子ネ!」
神楽ちゃんは元気に答えた。
いや待って!?淫ら団子って何!?みたらしと淫らどうをこう間違えたらこうなるの!?と混乱していると、銀さんが小声で囁いた。
「あいつ…みたらしと淫らを間違えたな…ちょ、俺行ってくるわ!」
「ぎ、銀さん!?」
「す、すいませーん、あの、淫らじゃなくて、みたらしですぅ…」
銀さんが申し訳なさそうに言った。私は将軍様の顔を見たらめっちゃ鼻血出していた。なんで!?淫らで何想像してんですか!?
「あの、お客様…」
「将軍家は代々、淫らと言う言葉に弱いものでな。…み、みたらしを1つ」
「はいわかりましたぁ…。ほら神楽行くぞ!」
ズルズルの神楽ちゃんを引きずりながら裏へ戻る2人。みたらしな、と私に伝え、疲れたように座る銀さん。
「んじゃあとは新八やってこい」
「え!?なんでですか!?」
「代わりばんこに行って会計は名前だ。だからだよ」
「……わ、わかり、ました…」
「はいこれ、みたらしね」
「はい…!」
ガチゴチの新八くんの手に皿に乗せたみたらし団子を置いて持っていってもらう。すごい動きがロボットダンス並みだ。
「コ、コチラ、ミタラシ、デ、ゴザイマス」
「あぁ、ありがとう」
「シツレイシマス、ゴユックリドウゾ」
出された団子をもぐもぐ頬張る将軍様と、ロボットダンスでこちらにくる新八くん。いや逆にすごくない?凄くない?
「新八くん…!ありがとう!」
「イイエ、ソンナコトナイデスヨ」
「落ち着いて新八くん…」
新八くんを宥めていると将軍様が団子を食べ終わったのか、席を立ちお会計するところへ来る。
私の出番だと思いお会計するレジ前に行く。うう、緊張する無理…。
「えっと…み、みたらし団子で60円になります」
「これを。それと土産用にみたらしを10本くれぬか?」
「は、はい!えぇと…はいこちらになります。お会計600円になります」
「ではこれを。…店主がいないと伺った。店主に伝えてくれぬか、とても団子がうまかったと」
将軍は微笑みながら土産用の団子を受け取った。
「は、はい!」
「それに接客もよいな。素晴らしかったぞ。また来る」
「は、い!また、またきてください!」
にこりと微笑みながら頭巾を被りキャバクラがあるところへ向かっていった。
「はぁ……疲れた…」
「疲れましたね…」
「お団子美味しいアル!」
銀さんと新八くんはズルズルと地面に座り込み、神楽ちゃんは暇だったらしくお団子を頬張っている。
私も力が抜けてズルズルと座り込む。はー…怖かった。変な行動してない、よね?など、色々確認しているときに「ただいま!」と声が聞こえた。
「ありゃ、名前ちゃん?それに万事屋のみんなもどうしたんだ?」
「親父さん!もー将軍様が来るなんてこと聞いてませんよ!?」
「将軍様ァ!?そんなうちに来るわけないだろ?来るのは松平だけだって」
「だ、だって…」
「名前ちゃん、疲れてんだよ。俺は松平が来るから万事屋さんたちを呼んだんだよ。あいつ学生の頃はそんなことなかったのに今じゃ大物だからよォ、だから必死に頼んだってわけだ」
「え、ええ?」
「んじゃお昼になるから俺たちが店番やるよわ万事屋さん達とご飯行ってきな」
「は、はぁ…」
親父さんにぐいぐいの背中を押されて店を出た。が、本当に?嘘じゃないのに、と考えていたら銀さんが私の頭を撫でた。
「多分、親父にはどうせ俺が行くわーって松平のとっつぁんが言ったんだろ。でも蓋を開ければアイツはキャバクラに行きたい、でも将軍が甘味を食いたいと頼まれたから俺たちに任せたってわけだろ…。名前は顔見知りだったらしいしィ?」
「えぇ…とばっちりじゃん…」
「でも何もなくて良かったですね、名前さん」
「そうアル!プラス思考ネ!」
そんな話をして、お昼に向かった。
今日は疲れた、と肩をほぐす。もうこんなことは2度とごめんだ。
*
仕事が終わり、家に帰りテレビをつける。静かな部屋にテレビの音が響く。
私はテレビの音をBGMにして着物を脱ぐ。
「では、本日の将軍様のコーナーです。本日の将軍様のお気に入りの食べ物はこちら。江戸かぶき町の入り口近くにある団子屋のみたらし団子です」
「へーみたらし…、」
ぐるん!とテレビを見た。そこには働いてる店の名前とみたらし団子が出ていた。
「将軍様は"この団子も美味であり、接客も丁寧でとてもよい"とコメントいたしました。
では次のコーナーです」
「え、ええええええ!?」
驚きとは突然来るものである。
予測不可能だから面白い、らしい。
後の話だが、店がパンクするくらい忙しくて万事屋に依頼して!!と叫ぶほどでした。
-花より団子-
(風流よりも実益、外観よりも実質を重んじることのたとえ)
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