突然とは「予期しないことが突然起こる様」を指している。人というものは突然驚くようなことが起きるとぽかんとすることしかできないというのは、こうならないとわからないことである。
春爛漫、桜吹雪上等、桜舞い散る今日この頃。
かぶき町の端っこのお団子屋さんに私は働いている。もうかれこれ働いて1年は経った、と思う。大体のことはわかってきたし、お客さんの名前と顔も一致してきた。
そして今日も頑張るぞぃ!なんて思っていたら、女将さんから名前を呼ばれた。
「名前ちゃん、ごめんね!あのね今日、かぶき町お団子の会の打ち合わせなの忘れてた!」
「かぶき町お団子の会…?そ、そうなんですね。わかりました」
「午後には戻れると思うんだけど店番1人で大丈夫?」
「はい、大丈夫です!」
「午前中は基本的にそんな人来ないから大丈夫だと思うのよ。もしなんか言われたら、1人で店番やってるから待ってろよクソ野郎って言えば大人しくなると思うから」
「あはは…、とりあえずわかりました。お任せください」
「じゃあ、よろしくね!ほら行くよアンタ!」
「ま、待って!今結野アナのお天気予報やってるから!」
「結野アナか、ケツの穴か知らないけど行くよ!ホラァ!」
「アアアアアアー!お天気お姉さんー!」
「い、いってらっしゃぁい…」
やはり男の人はお天気お姉さんが好きらしい。頭の中にホワホワーと天パの死んだ魚の目をした男が出てきた。
ふふ、と笑うとすいませーん!なんて声が聞こえた。
「はーい、ただいま…、て銀さん!それに神楽ちゃんと新八くんも。どうしたの?」
「え、どうしたのってこっちのセリフだけど」
「ええ?私依頼してないけど…」
「あ、ここのオヤジさんから依頼頼まれたんですよ名前さん」
「え、そんなこと言ってなかったけど…」
「なんか、午前中に大切なお客さんが来るからって僕たちにもきて欲しいって」
「それも聞いてない…」
「オヤジ大丈夫かよ…。でもなんか電話口で"万事屋の旦那!早く来てくれ!早く!"って言われたから来たけどよォ…。客なんて、今のところいねェじゃねーか」
お団子屋の席にどかっと座りながら私に話す銀さん。午前中は仕事する人が多いらしく、お団子を買いに来る人は少ないのだ。
ふぅ…とため息をつく。オヤジさんったらそんな嘘付いて。私のことを心配してくれたのかな、なんて考えていたらお店の前に黒塗りの高級車が止まった。すごい高そうな車だなぁ…なんて考えていたら運転席から男性が降りてきた。
「オイオイ…ここが例のお団子屋かい?」
「ま、松平さん!どうされました?」
「アレェ、名前ちゃんじゃねェのォ?」
「そ、そうです。よく覚えてらっしゃいますね」
松平さんはサングラス越しに私を見る。ニコニコ(ニヤニヤの間違い)しており、お団子屋の全体をぐるりと見る。
「そりゃァおじさんはな、かわい子ちゃんの顔をちゃぁんと覚えているわけですよォ」
「そ、そうなんですね…」
「あれ、ここの店主は?」
「えっと、お団子の会に出席するとかで、いませんが…」
「オイオイ…俺ァあいつに会いにきたのによォ」
「あいつって…親父さんですか?」
「そうそう、おじさんとね、ここの店主…みんな親父なんて呼ぶがね、俺と同級生でズッ友な訳よォ」
「え!?そ、そうなんですね!?」
「だからァ今日客連れてきたのよォ。なんでも甘味を食べて見たいってなァ」
「片栗虎、ここが有名な団子なのか?」
頭に深く頭巾をかぶって店内に入る1人の若い声の男性。
あれ、あれれ…?なんか見たことある。見たことあるよ?
「俺の馴染みがやってるんだがァ…今日居なくてなァ」
「そうか…では少し茶を頂こう」
「茶ァ?キャバ行かねェのォ?」
「片栗虎がうまいと言う団子、一度でいいから食べて見たくてな」
シュル、と頭の頭巾を取る仕草は優美さを放っていた。やはり見たことある、見たことあるよォ!?
そんなことを思っていたら新八くんと銀さんが顔を真っ青に私の背後に隠れた。
「まさか、銀さんまさか!まさかまさか!」
「そそそそそそんなことねェだろ、おおおおおおいいいい…」
「茶を、いただけぬか」
(しょ、将軍かよオオオオオオ!!!!!)
突然とは、突然起こることだから驚くのだ。
今日は、厄日なのかまたまた、幸運な日なのか。それはどうなるかこの時の私には想像もつかなかった。
-鳩が豆鉄砲を食ったよう-
(突然の出来事に驚いて、目を丸くしているさま)
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