春ですね、春といえば!

「ごめん…お花見には行けないんだ…」

「「「え!」」」

江戸、かぶき町の端っこの、わいわいと賑わうお団子屋さん。そこで働いている名前に花見に行こうぜ、屋台出るしよォ、と言うとそんな返事が返ってきた。

「ど、どうしてですか…?」

なんて新八くんがお団子を食べながら、私に話しかけてきた。私は注文表を見ながらため息をつく。

「仕事が忙しくて…今までは、朝からおやつどきまでの勤務時間だったけど、夕方までになったの。お花見だからって、お団子とかの注文多くて…」

「名前ちゃーん!注文いいかいー!」

「はい、ただいま!…って事でごめんね…」

そういうと私のことを呼んだお客さんの元へ走る。新八くんと神楽ちゃんは残念そうな顔をしていた。申し訳ない…。屋台とか食べたかったよね…。

「……………」

そんな姿を見ていた銀時。その口には団子の棒をかじりながら名前があくせく働く姿を見ていた。








「ふぅ…疲れた…」

お花見だから団子が飛ぶように売れる。何故ここまで売れるかわからないが、所謂"花より団子"なのだろう。昼間は申し訳ないことをした、と心がちくりと痛くなった。
そんなことを思いながらお団子屋を出る。

「よォ」

「…銀さん!どうしたの?」

銀さんがバイクに跨りながら私のことを待っていた。珍しいこともあるんだ、と少し失礼なことを思ってしまった。

「ほら、行くぞ」

「え、え!?」

私にスポッ!とヘルメットを被せてきた。これ新八くんがいつもかぶってるやつじゃない?と思いつつバイクの後ろを指さす。
え…これに乗れと!?

「え、と…」

「何、あー着物?横向きに乗れば?」

「え、違くて、その…」

どこに行くの?は聞けない、感じがした。
とりあえずヘルメットを被り横向きに座り銀さんの腰へ腕を回す。

「んじゃ、捕まってろよ」

「うん…!」

どこに行くんだろう。広い背中に捕まりながら頭は疑問符でいっぱいだった。
春風が心地いい。銀さんと、バイク一緒に乗ってるし、なんかすごいことしてない!?とドキドキしていた。

お団子屋から、ターミナルから離れていく。都会から木が多いところへ向かっているようだった。


「名前!」

「え!?」

「上見ろ!」

「…うえ、…あ!」

木々に囲まれる道をバイクで駆け抜ける。そんな速度があるわけではないから普通の車よりもゆっくり見れる。

「桜…!」

「夜桜だ」

「夜桜…」

大きな通りがずっと続く中、道の両脇に桜の木が植えていて満開の桜が風に乗って桜吹雪となって降ってきて、星空と提灯によって薄ピンク色の光となって私たちを照らしていた。

「んで、もーちょい行くと」


「おーい!」

「名前ー!銀ちゃーん!こっちアル!」

「新八くんに神楽ちゃん!それに定春も!」

「わん!」

夜桜も見る人がいるらしく、長い桜並木を通り過ぎた着き止まりに公園があり、そこでも人がまぁまぁいた。その中に大きなレジャーシートを敷いてお弁当を広げている新八くんと神楽ちゃん、定春もいた。

「仕事疲れてんのに悪いな、昼間お花見できねェからよ、夜桜なら見れるかなって」

「名前!夜桜も綺麗ネ!」

「そうだね、神楽ちゃん」

「さ、夜ご飯食べましょ!」

レジャーシートに豪華な弁当を並べる新八くん。本当にいつ見ても丁寧に作られていて、今度お礼をしなきゃなんて考えていた。

「んじゃ、いただきます!」

「いただきまーす!」

周りがわいわいしてる中食べるお弁当はほんのり桜の味がした。
モグモグと食べていると、銀さんが私を見て笑った。

「え、何?」

「頭に桜の花びらついてんよ」

「え、マジ?」

「マジ」

頭を振るとそれでも取れないのか銀さんが笑っている。

「ほら、じっとしてろ」

「うん…」

「ほら、取れた」

「…あり、がと…」

桜の花びらを掴みながら私に微笑む銀さんを見て胸が高鳴った。やだ、ドキドキしてる。そんな顔、ずるい。
熱くなって赤くなっているであろう頬を手で押さえる。よかった薄暗くて。



「…アツアツネ」

「やだやだ、僕たちお邪魔みたいじゃん」

「わぅ」



-花は桜木、人は武士-
(花は桜が最も美しく、人は武士が一番だということ。桜がぱっと咲いて散るように、武士の死に際も潔いことから)






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