2月22日、それは私にとって悪夢とも言える日となったのは言うまでもない

それは現在よりも少し前、そう、この話は神楽ちゃんとバレンタインのチョコレートを作った時の少し後の話。
その日はたまたま仕事が休みで家にいた時、郵便が届いた。

「なにこれ…サンプル?なになに…」

"これは栄養ドリンクのサンプルになります。これを飲むととてもいいことが起きます。"

「…怪しすぎる…」

いいことってなによ、知らないわそんなもの。と思いつつもこの胸の高まりは抑えられないのだ。栄養ドリンクの蓋をパキリと捻り一気に飲む。…んー…なんか普通の味だ。ビタミン系ドリンクみたいな。

「!?、う、ぁ、あ!」

頭が痛い、すごく。痛い!なにこれどうしようやっぱり騙された!どうしようここで死んだら迷惑かけるよね。この住んでる物件事故物件になるよね。お父さんお母さんありがとうございました。それと銀さん、神楽ちゃん、新八くんに真選組の皆さん…アディオス…。なんて色々考えてしまった。

頭が痛かったのが、暫くすると落ち着いてきたようでホッとする。とりあえず病院行こうと思い用意をする。あ、髪梳かなさきゃと思い鏡を見ると、そこには。

「え、えええ!?」









「んで?気づいたら猫耳生えてたって?」

「う、うん…」

「名前…ここ江戸のかぶき町なの。わかる?元いた世界じゃないわけ、わかってる?あぶねー薬だったらどうした訳」

「言い返す言葉もございません…」

猫耳が生えたことに驚きとりあえず万事屋に行ったらなんか知ってるかと思いアパートを飛び出した。そして会った時に銀さんは驚き、新八くんはあわわわ…と指をさして私と耳を交互に見て、神楽ちゃんは目を輝かせて見ていた。

「名前…!これ本物アルカ!?」

「え、うん…」

こんないい大人の私がこんな猫耳なんてありえない…神様、神楽ちゃんに猫耳つけてくださいいい!

「さ、触っていいアルカ!?」

「いいけど…」

「わぁああ!もふもふ…!もふもふネ!定春とも違うアル!」

「わわっ、神楽ちゃんくすぐったいよ」

もふもふと触る神楽ちゃんとくすぐったさに身を震わせる。

「あ、あの名前さん、その猫耳って感覚あるんですか?」

「う、うん…。神楽ちゃん、くすぐったいよ…!」

「平気アル」

「待ってなにが!?」

「名前さん、その猫耳の原因ってこれじゃないですか?」

新八くんはピッとテレビをつけた。
アナウンサーが速報です!と大きな声で叫んでいるのが目に入った。

ー速報です!現在猫耳を生やす栄養ドリンクが流通しています。効果は2月22日のにゃーにゃーにゃーの日、いわゆる猫の日までの効果になります!なので皆さん!自宅のポストに投函された栄養ドリンクのようなものは飲まないようにして下さい!お願いです!みなさん!飲んではダメです!ばかでもそれくらいわかりますよね!?

「………名前さん…」

「………ち、違うよ…そんなばかじゃないから、そんな目で見ないで。違うから…うっ…ぐすっ…」

「おいおい、泣くんじゃねェよ。な、名前…」

「うっ…銀さん…」

大の大人が、大の大人に慰められてるのを青年と少女はやれやれと見守る。

「とりあえず、この栄養ドリンクっての?副作用があるかもしんねェからウチにいろって。な?」

「う、うん、ヴェ…ぎんざん…」

「ほら鼻かめって。ちーんて」

「う、ちーん!」

銀さんがティッシュを差し出し涙でぐずぐずの目を指で拭い、ティッシュを鼻に押し付ける。これは親と子供のようだった。

「名前さん…とりあえず僕と神楽ちゃんは僕の家に連れて行きますから、名前さんは銀さんと2人で居てくださいね」

「名前、こんな機会またとないアル。……ネコミミプレイ楽しんでネ!」

「待てエエエエエエ!そんな話じゃないから!ほら、神楽ちゃん行くよ!」

神楽ちゃんはズルズルと新八くんに引きづられて定春とともに万事屋を出て行った。
2人と1匹が居ないことにより、しん…となった万事屋。

「まぁほら、座れって。な?」

「うん…バカな女にも優しいんだね…」

「テレビに影響されすぎだっつーの」


銀時はそんな凹んでいる名前を見ると表情や空気もどんよりしているが、猫耳もしゅん…と垂れ下がっているのが見えた。


「…なぁその猫耳って感覚ある訳?」

「え、うん…なんかくすぐったいの」

「ふ、ふーん…」

銀さんをチラリと見ると私の事をチラチラ見ていた。なんか気になるのかな…。あ。

「銀さん、触る…?」

「え、え!?いいの!?」

「うん…くすぐったいけど。いいよ」

「じゃあ…失礼しまーす…」

大きな手が私の頭部にある猫耳に優しく触られる。くるくると耳の輪郭を触りふわふわの感触を堪能する。そのあと耳の穴の方へゆびを滑らせゆっくりこする。

「ん…!」

「わ、悪りィ!」

「あ、え、そんな事ないよ!」

銀さんが手を離した事により触れられる感覚よりかは、じんじんと熱くなるような感覚が残っているようだった。なんか、変…。

「名前…?」

「ぎ、銀さん…なんか、耳が、熱いの…それに、身体がゾクゾクして…」

「お、おい!大丈夫か!?」

「変だよ…栄養ドリンクの副作用なのかな…」

ドキドキと心臓が痛い、なにこれ。変だよ。
銀さんは私を見て急いでテレビをつけた。つけた先にはたまたまニュース番組がやっており、再び速報です!とアナウンサーが喋っていた。

ー速報です!先程伝えた猫耳栄養ドリンクについてです!そのドリンクを飲んだものには発情期と呼ばれるものが出てきてしまいます!どうか、どうか惑わされずに男性たちは落ち着いて行動してください!あと数時間!数時間経てば元に戻ります! 

「は、発情期ィ!?」

「ぎ、銀さん!熱いよ、銀さんからいい匂いする…はぁ…やだ…助けて、銀さぁん…」

「う、」

熱い熱いと言葉を漏らす名前は自ら帯を緩めて銀時に迫っていた。その光景は大変見目麗しく銀時の目に写る。ゴクリと喉を鳴らし唾を飲み込む銀時。

「す、据え膳食わぬはなんちゃらっていうだろオイ…。これは、ヤベェわ…」

「銀さん…、エッチしよ…?」





-据え膳食わぬは男の恥-
(女性のほうから言い寄ってくるのを受け入れないのは、男の恥だということを意味)






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