本日は晴天なり、本日は晴天なり。しかし事件が発生しました。我が家のテレビが、なんと。
「テレビ映らなくなった!」
突然テレビが壊れました。
なんで!?何故!?昨日から変だったから、先人の教えで叩いたら直ると思って叩きすぎた…いやそんなことはない叩きすぎてはない。結果壊れてしまったのだ。
「はぁ…買い替え…はまだお金ないし…銀さんにお願いしようかな…」
こんな時は便利な万事屋!と言わんばかりの仕事チャンスだ。とにかく電話しなければと思いスマホで万事屋へ電話をかけるが出ない。あれ…今日依頼入ってたのか…。
でも今日私のアパートでご飯食べるって言ってたからその時でいいかな…。でもなぁ…仕事で疲れてる人に頼むのはどうなのか。
銀さん器用だからなんでも出来るし、テレビも直せそうだからとお願いしたかったが…。
どうしよう…。
うーんうーんと、頭を捻ること5分。
「あ!」
機械に強い人いた!頭に出てきた人物の顔を思い浮かべる。そしてとある場所に向かった。
*
「って事で金さん!お願いします!」
「お前…俺が怖くないのか?」
「え、どこがですか?」
源外さんの所へ行って仕事の手伝いをしていた金さんをお借りして私の家に向かっている最中だ。源外さんからは「金時、ちゃんと働いてこいよ」と言われていた。
「…変なやつ」
「ふふ、銀さんそっくりですよ。あ、ここが私の部屋です。えぇと…テレビが壊れてしまって」
「わかった」
ブーツを脱いで私の部屋に上がる金さん。TVの所へ行き配線などちゃんとつながっていることを確認していた。
そしてテレビに片腕を伸ばすとキン…と機械音を立てて機械と対話をしているようだった。
見た目は普通の人と変わりないくらいなのに、こう言うところを見るとからくりと言うものは上手くできているのだなぁと感心してしまった。
「……て、おい、お前…テレビ叩いただろ。しかも結構な力で」
「うっ…」
「このテレビ、お前に叩かれて直れ!て言われたから不貞腐れてるそうだ」
「えぇ、だってよく家電は叩くと直るって先人が言ってたじゃないですか…」
「それはむかーしの話だよ。いつの時代生きてんだよ。今は見てわからないから触るな、だろ。ちゃんとテレビに謝れ」
「え…わ、わかりました…。ごめんなさい…」
「よし、こいつもそう言ってるからとりあえず付けてやろうぜ」
金さんがそう問いかけるとテレビは一瞬しん…となったもののすぐプツリと音を立ててニュースを流してくれた。
「わ、すごい!ありがとうございます、金さん。テレビさんごめんなさい、ありがとう」
よしよしとテレビを撫でる私とそれを見る金さん。
「…さてと、依頼は終わった事だ。報酬を貰おうか」
「あ、はい。あの相談ですが、お金か高級オイルどちらがいいですか?やはり金さんはカラクリなのでオイルの方も考えたんですけど…」
「…そっちがいい……」
「え?」
手首を掴まれ金さんの方へ引っ張られ抱きしめられる。それは、カラクリなんて呼べない、人のような体温と柔らかさだった。
「き、金さん!」
「俺は、こっちがいい」
「え、えっ!」
よりぎゅっと抱きしめられる。やだ、恥ずかしい、なにこれ、ナニコレ。
そんなことを考えていると、トントンと私の部屋の玄関を叩く音がする。
「おーい、名前ー?」
ぎ、銀さんが!来てしまった!え!?待って待って待って!これを見られたら、まずい!いやまずくないけど、待ってそんなことをしているわけではないし、えっとえっと!
「ありゃ、鍵空いてんぞ、おーい。名前ー?」
ガチャリと玄関を開ける銀さんと、離れようにも身体を離そうとすると金さんがよりぎゅっと抱きしめた。
「おーい、名前。銀さんが来た、ぞ……」
「あ」
ガチャリと開けるとこの狭いアパートはテレビがある部屋まで見えてしまう。
私と金さんを見て銀さんは固まっていた。いや私も固まる。
「よォ兄弟」
「お、オイイイイ!おま、え、お、え!?」
「銀さん!落ち着いて!それと金さん離してください!」
「オイオイ、俺たちはそんな仲だったかよ。名前」
「金さんそんなこと言わないでください!銀さん落ち着いてエエエ!」
わなわなと私たちを見ている銀さんとすまし顔の金さんと混乱している私という地獄絵図が完成してしまった。
「と、とりあえず話を聞いてください!」
*
「んでなんでオメーが名前のこと抱きしめてんだよ」
私が作ったカレーをモリモリ食べながら金さんに話しかける銀さん。反対に上品にカレーを食べる金さんはすまし顔をしながら答えた。
「抱きしめたくなったからだ」
「はぁ?それで本人の同意なく抱きしめるってそれはねェよ、なぁ?名前」
「そ、そうだよ!」
「それでもドキッてしただろ?」
金さんが私に囁きながらそう呟いた。
「やめてください、あなたの声とてもいい声の声優さんですから自覚持ってください!」
「声優とか言っちゃダメだから名前」
金さんが私をじっとしてふと微笑んだ。その顔は銀さんの顔としているがにても似つかわしくない顔つきだった。
「俺は名前ともっと近づきたいと思ってる」
「…金さん…」
私の手と金さんの手を重ねてそばにくる金さん。待って何これ…ドキドキするじゃん、少女漫画の1コマじゃん。そんなことを考えながらドキドキしていると不意にぐい!と引っ張られた。
「名前は俺ンだ。金時」
「おいおい兄弟、嫉妬は醜いぜ」
「うるせェな」
後ろから私をギュッと抱きしめる銀さんと、笑う金さん。2人は目を合わしてこう言った。
「「名前は、どっちがいいんだ?」」
「え、え!?」
「はっきり答えろ名前」
「お前は俺だよな?名前」
「えっと…、えっと…。2人とも!」
「「は?」」
言葉を濁して銀さんの腕の中から脱出してキッチンに急ぐ。2人に背を向けるのはこの赤くなった頬を冷やすため。こんなことになるなんて誰も考えてなかった。恥ずかしいったらありゃしない。
私の後ろでぎゃいぎゃいとまた騒いでいる2人を見ると少し笑ってしまった。やはり似たもの同士だ。
-似合い似合いの釜の蓋-
(どんなものにも、それぞれ似合いの相手があるというたとえ)
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