本日も晴天なり、本日も晴天なり。しかし、ここは曇天です。
「ぎ、ぎん、さん…」
「名前…これって…」
「「閉じ込められた!?」」
私と銀さんは閉じ込められています。何故そうなったのか。それは少し前を振り返ってみましょう。
いつもの如く真選組で鍛練という名の地獄を味わい、そのあとお団子屋で仕事という二足のわらじを履いています。わらじっていうか、自分が選んだんだけどね。朝活ってわけです。そして仕事が終わった後、外に出ると沖田さんがいました。
「沖田さん、どうされました?」
「新人、後ろ向きなせェ」
「はい!」
「そして深呼吸」
「すー…はー…」
と沖田さんに言われた通りに深呼吸をしてる時、背後からハンカチで口を覆われた。
「ふが!」
「吸え」
「す、ぅ…」
素直に吸ってしまった私は急激な眠気と共に目が暗転するような感覚に陥った。目を瞑る前に見えたのは、ニヤリと笑う沖田さんの顔だった。
てわけでここまでが回想だ。
多分沖田さんにココ…どこだろう。蔵のようなところだった。周りを見渡すとイスやテーブル、本などが乱雑に並んでいた場所だった。そして隣には銀さん。
これ…たぶん仲直りしろって事だー!
「「………」」
「おい、名前…大丈夫か」
「う、うん…」
しん…という音がするほどの沈黙。
痛い!痛いよ!うぅ、私が悪いと言えどもなかなかの沈黙だよ!?こ、これどうしよう…そんな事を考えていると銀さんが私に話しかけてきた。
「なぁ、名前」
「え!な、なんでしょう!」
「…お前、何してんの、万事屋来ないで」
「…それ、は…」
「前、俺に関係ないって言ったけどよ。…俺だって名前と一緒の気持ちになりてェよ…」
「銀さん…」
「だから、言ってくれねェか?」
銀さんは私をじっと見て話すのを待っていた。銀さんが、歩み寄ってくれている、私のために。
「……銀さんの近くにいる私は、お荷物なんじゃないかって。
私はあなたの事を尊敬するからこそ、迷惑はかけられない。…銀さんの周りにいる人たちみたいに強くなりたい。強くなれなくても銀さんに迷惑をかけないくらいに自己防衛はしたいって思って。
私は、銀さんに守ってもらうような人じゃなくて、一緒に戦いたいって」
「名前…」
「あなたが、輝いてる人だから」
「俺が…?」
「私はそんなの持ってないから、不安に押しつぶされそうだった。だから、その不安をバネにできる事をやろうって」
「……そうか…」
「うん…。黙っててごめんね、銀さん…」
「いや、良かったよ、わかって。正直、何処かで道場に行ってるんだろうと思ったんだ。でも何が理由かわからなかった。でもようやくわかった」
「うん…」
「俺は、名前が側にいていつも新八や神楽、俺とも笑って過ごせてるならいいと思ってた。だから名前の不安な気持ちとかわからなかったんだ」
「それは、私が勝手に不安になったから…」
「不安にさせる方もダメなもんだ。だからよ、お互いなんかあったら言おうぜ。俺も言うようにするから」
「…うん!」
お互い、気持ちが晴れたような、晴れないような。でもその複雑な感情には名前がつけられないくらい難しい問題だった。でも、一つずつ坂道じゃない、平坦な道を一歩ずつ歩けたらいいなと、思ってしまった。
「そういえば、今はね真選組で稽古をつけてもらってるんだ。昨日近藤さん達から短刀をもらったの」
「真選組ィ?」
「え、う、うん」
「真選組で、稽古つけてもらってる?」
「う、うん……、そうだけど…」
「ちょっと待て!待て待て!稽古ってあのマヨネーズか!?」
「え…えぇと、沖田さんだけど…」
「ハァア!?はい無理でーす!俺、あのドSに稽古つけてもらう無理です!同じドSなら俺がつける!」
「え!?てか早くない!?なんかあったらって数分前には普通だったじゃん!」
「だって無理でーす!何されるかわかんねェじゃん!」
「待って落ち着いて銀さん!私は平気だよ!」
ぎゃいぎゃいと話していると、鶴の一声の如くとある人の声がした。
「そうでさァ」
「でしょぉ!?」
「あぁ!?」
「「え?」」
「だから、平気だって。旦那ァ」
「「いやアアアアアア!!!」」
「な、な!?」
「新人ちゃんと言えやい」
当然沖田くんが出入り口と思われるところから顔を覗かせて言っていた。こ、怖すぎる。怖いよその顔とシーン。なにかのホラー映画じゃん!
「やっと仲直りしやしたか」
「え?」
「旦那と新人がお互い歩み寄らないで意味もわからないで距離を置いてることがダメってこと。俺に感謝しろィ」
「…沖田さん…」
ありがとう、と言葉を言おうとすると銀さんに後ろから抱きしめられた。
「おー沖田くぅん、ありがとうな、こいつの代わりに言うわ」
「ぎ、ぎんさん!」
「旦那ァ、見苦しいですぜ」
「うるせぇ早く出せ」
「はいはい」
ガチャリと蔵から出され久々の太陽の光にホッとする。銀さんは沖田さんと言い合っていて大変そうだけど、私の心は少し軽くなっていた。
-和を以て貴しとなす-
(和を以て貴しとなすとは、何事をやるにも、みんなが仲良くやり、いさかいを起こさないのが良いということ)
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