真選組屯所にて近藤の自室に副長の土方、そして沖田が並んでいた。
「今日2人を呼んだのは、名前ちゃんのことだ」
「苗字さんの事?」
近藤は腕組みをしながら土方の言葉に頷いた。
「ん、そうだ。名前ちゃんが何故ここで鍛練をやっているかわかるか?」
「そりゃ…万事屋と肩並べて歩く為だろ」
「そうだ。あの万事屋はかなり腕っ節が強く正直俺やトシ、総悟とも互角、いやそれ以上なのかもしれない。だが、名前ちゃんは肩を並べたい、並べなくても迷惑はかけられないと言ったところだろう」
「そーさな…」
「……トシ…」
「…あぁ。女がやるなんてむり…」
「すっっっごいいい子だよねぇ!!??もう俺泣きそうだよ!なにこれ?なんかのドラマ?連ドラ高視聴率確定だよ!うぅ、泣いちゃうよ…」
「こ、近藤さん…」
はー…と息を吐き頭を抱える土方と、ぎゃいぎゃいと男泣きをする近藤。
「だから、俺は!名前ちゃんを応援したい!名前ちゃんは、今はなにをやっているだ、総悟」
近藤から話を振られアイマスクを外す沖田は近藤をじっと見て話た。
「とりあえず基礎体力作りと木刀…旦那と同じような形のものを貸し出して、それで素振りと、斬り込みでさァ」
「うーん…そうか…。俺たちならまだしも、女性は辛いだろうな…。それと斬り込みではなく、やはり護身術を中心に組んではどうだ?」
「護身術…なら木刀はやめますか」
「そうだな…。そしたら短刀はどうだ?」
「短刀だァ?」
土方はタバコの煙を吐き出しながら近藤に疑問をぶつける。近藤は土方の質問にコクリと頷いた。
「そうだ、短刀だ。これだと刀や木刀に比べて接近戦になるが、普段刀を持ち歩かない彼女にはぴったりじゃないか?」
「それはそうだが…」
「女の接近戦は腕や身体を抑えられたら最後でさァ。どう言う意図で?」
近藤はうぅむ…と腕を組んで悩む。
「さっきも言った通り刀を持ち歩かない、かと言ってチャイナ娘のように銃はきついだろう。そうしたら自ずと着物にも隠せる短刀…がいいかなって…」
「……まぁ、刀よりかはと考えると…」
近藤の発言により少し考え込む沖田とは対照的に複雑な表情の土方。
「どうした、トシ」
「…女が、出来るのには限度がある。それでも、指導を続けるのか。総悟」
「…限度なんて誰が決めましたか」
「は…?」
「ってあの新人なら言いそうでさァ。俺たちが限度なんてゴールを決めるんじゃなくて、ゴールの設定は新人にやらせればいいだけでさァ」
「そうだな、こればかりはなんとも言えないな。トシ、お前の意見もよくわかるが、かけてくれないか。あの子に」
「…わかった」
土方が何故そこまでやめさせたいか。それは女には素直に幸せになってほしい、肩を並べるくらいなら俺たちや万事屋達が守るであろうと思うからだ。ただ、あの女が、名前がやりたいなら止める理由もない。そんな事を考える土方と、土方の意見もわかるが口には出さない近藤、沖田だった。
「ならこういうのはどうだ?短刀を打ってもらってプレゼントするのは!」
「「プレゼントォ?」」
「そうだ!刀はこれくらいにして、あと紐は藤の花の色にしよう!それと…」
わいわいと話す近藤と、やれやれと頭を抱える土方、表情には出さないがプログラムを考える沖田だった。
これが名前に短刀が渡るまでのとある日であった。
-三人寄れば文殊の知恵-
(平凡な人でも協力すれば良い案がでる)
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