銀さんが斬りつけられて約1日と半日が経とうとしている。ずっと汗をかいて眉間に皺が寄っている。いつも見ているあの顔はどこへ行ったのだろうと思う顔をしていた。
「銀さん…頑張って…」
ハンカチで汗を拭う。正直まだ怖い。お妙さんが、止血が終わっても銀さんの場合出血量が多くいつ目を覚ますかわからないそうだ。たまに銀さんの手に添えて体温と脈拍を確認する。大丈夫そうだとホッとするも下手したら…と考えると心配になる。銀さんの汗を拭うと自分からポタリと涙が畳へ落ちた。
「…ふ…銀さん…お願い…目を覚まして…」
そう呟くとガラッと襖が開く音がした。私は顔を俯かせて泣いてるのをバレないように顔を隠した。
「…名前ちゃん、交代しましょう…。大丈夫よ、銀さんは。名前ちゃんは一旦帰ってご飯と着替えてきてね。私が見てるわ」
「…はい…」
お妙さんの言葉に甘えて一旦家に帰ることにした。帰る時にもし銀さんが目を覚ました時に見る手紙を書いた。「かならず戻ってきてください 名前より」そう添えてテーブルに置いた。
*
サッと着替えて食欲がない為水だけ飲み、万事屋へ向かった。
万事屋へ着くとお妙さんが外を見ていて、カツカツと階段を上がるとお妙さんと目があった。
「名前ちゃん…ごめんなさい、銀さんさっき目を覚ましてまた行ってしまったわ…」
「…そう、ですか…」
「…名前ちゃんならどうした…?銀さんがまた再び行くとしたら。止めた?それとも…」
「…私は止めません。だって彼、止めても無駄ですもん」
「…そうね、本当、馬鹿な人」
「バカ人だよ銀さんは」
そう言い万事屋の中へ入ると手紙を見つけた。お妙さんへ向けての手紙なのかもしれない、と思い宛先を見ると私に向けてだった。
「名前へ。絶対に戻ってくる、だから待ってろ」という内容だった。
「本当に、バカな侍…」
自分の涙が手紙へ落ち文字が滲んでいった。
*
数時間後、銀さんはよりボロボロになって帰ってきた。
お妙さんが「名前ちゃん!帰ってきたわよ!」と声をかけてくれた。定春もワンワンっと吠えて知らせてくれた。
「ただいまヨー!」
「ただいま戻りました!」
「たでーまー、いてて…」
「銀さん!神楽ちゃん!新八くん!」
私は神楽ちゃんと新八くんに抱きついた。
よかった、本当に
「名前ちゃん泣いてるネ!」
「ただいま戻りました」
「よかった…よかったよ!怪我は?ない?大丈夫?」
「僕と神楽ちゃんは何ともありませんよ。ありがとうございます」
新八くんに支えられて歩く銀さんを見た。
「おいおい、俺には?」
「銀さん…おかえりなさいっ…」
「おうよ、絶対戻ってくるって」
この人が生きていてよかった。
私は銀さんに頭をぽんぽんとされながらも涙が止まらなかった。
*
時は少し戻り銀時が目を覚ましたとき、隣にはお妙がいた。
傷は痛いがどんどん意識がはっきりして、そのあと鉄子が来て話を聞く際、手紙が目に入った。「かならず戻ってきてください 名前より」と書いてあり、その下に言葉を添えて書き換えた。鉄子が来た後再び横になり考える。
「…銀さん」
「あ?」
「名前ちゃんがいなかったらあなた死んでいたかもしれないんですよ」
「名前が?」
「万事屋まで運んでくれて、ちゃんと止血もしてくれていたんです。わたしが万事屋についた時にはほぼ終わっていて…。血塗れで頑張ってくれたんですよ」
「…そうか…」
「ちゃんとお礼してくださいね。じゃあジャンプ買ってきます」
スッッと襖を閉めてジャンプを買いに向かうお妙の気配を察して、すまねぇなと呟き起き上がる。包帯を撫で2人に申し訳ない思いに後ろ髪を引かれながら玄関へ向かうと、お妙が用意したであろう着物に腕を通す。帰ってきてかならず礼を言わなくてはいけない、そう思い向かった。
*
紅桜の事件のあとお妙さんと私、銀さん、神楽ちゃん、新八くんのみんなで万事屋でご飯を食べた。神楽ちゃんはお腹が空いていたのか、バクバク食べていた。
「おかわりネ!」
「はい!新八くんは?」
「僕も!」
「はい!あ、お味噌汁いる?」
「はい!」「いるネ!」
私は万事屋さんの台所を借りて料理を作った。味には自信ないが神楽ちゃんが美味しいアル!だなんていうからホッとした。
お妙さんが手伝うわと言ったが、新八くんと銀さんが必死に止め、私が主に作ることとなった。
私はお味噌汁をよそいながら今回のことを思い出した。怖かった…、これからわたしが帰るまでにあんなことが多々あるかもしれない。守らなくては、絶対に。
「どうした」
「…!銀さん!」
「…あー…その、お妙に聞いた。俺の傷の手当てやってくれたんだってな」
「…うん…あのね、エリザベスがたまたまいてくれて、教えてくれたんです。それでお妙さんがくるまでどうにか血が止まってくれて。それでも、沢山…血が出てて…」
話しながら思い出してしまった。わたしがいた世界からこちらの世界に来てしまって初めて見た光景だった。怖くて死んでしまうかもしれない、と思い必死で止血をした。それを思い出して涙が出てきてしまった。
「…ごめ、なさい…」
そういう時ふわりと抱きしめられた。
「ぎ、ぎん、さんっ…」
「名前のお陰で俺は生きている。本当にありがとう。怖かったよな」
「…怖かった…!よかったよ…!」
ぎゅっと抱きつくとトクトクと心臓の音がした。この人はここで生きている。それはみんなもそうだし、わたしもそうだ。この世界にいる限り、わたしのできることを精一杯やろう。
心配で覗きにきた新八くんと神楽ちゃんに心配されてれしまったのはいい思い出だ。
-門松は冥土の旅の一里塚-
(門松はめでたいものだが、飾るたびに年を重ね死に近づくので、いわばあの世に向かう一里塚のようなものだということ。 )
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