今日で7日目、スナックお登勢の出勤が最後だ。人間毎日こなしていくと少しずつだが慣れていくらしい。お登勢さんにもらっていたお給料をすこし貯めてお金を返す用意をした。それとお世話になったのだからお登勢さんたちへ菓子折りと万事屋さんたちへも大きな菓子折りを持って向かった。

万事屋のインターフォンを鳴らすと「はーい!」と元気な声がする。新八くんだ。

「あ、苗字さん!」

「新八くん、こんにちわ。坂田さんと神楽ちゃんいる?」

「はい、いますよ」

「お邪魔していいかな?」

「はい、ぜひ。どうぞ」

新八くんに案内されて居間へ来た。

「あ!名前ちゃん!」

「神楽ちゃんこんにちわ、元気?」

「もちろんアル!名前ちゃんは元気ネ?」

「もちろん!これお世話になったから万事屋の皆さんで食べて」

「うおおお!高級お菓子ネ!これ美味しいアル!」

「うわぁ!苗字さん、いいんですか?」

「うん、こんなので良ければ」

「ありがとうございます!」

「おーおー、すげぇでっけぇんじゃねぇの」

「坂田さん、坂田さんも毎日アパートまで送って行ってくれてありがとございます。これからももしかしたらお世話になるかもしれないので…」

「いいんだって、女の子1人じゃあぶねーよ?」

「ありがとうございます」

もっしゃもっしゃと食べる神楽ちゃんと上品に食べる新八くん、神楽ちゃんに食べられまいと阻止しながら食べる坂田さん。かわいい…。

「あ!今度名前ちゃんはどこで仕事するネ?」

「えっとね、ここから左にずっとまっすぐいくとお団子屋さん出てくるじゃない?そこで働くの」

「お団子!わたしあそこよくそよちゃんと遊びにいくネ!」

「そよちゃんって…そよ姫!?」

「そうアル、名前ちゃん知ってるネ?」

「も、もちろんだよ!」

なんかすごい場面に遭遇しそう…。でも見てみたい…可愛いだろうなぁそよ姫…。






「ありがとうございました!」

仕事が終わってお登勢さんにお金と手土産、そして帯留めを渡した。

「なんだい?これは…」

「今までのお給料のあまり…と言ってはなんですが、多くもらったものを貯めました。それとお登勢さんたちで食べて欲しくてお菓子とお登勢さんに帯留めを」

そう言い私はお登勢さんに渡した。
驚いた顔で私を見て、やれやれという顔で笑った。

「あんたって子は…給料を多めに入れた意味わかってるかぃ?」

「はい、それでもきちんと考えてお金を分けたあと、余ったものです。何も知らない私に本当にありがとうございます」

「いいんだよ、それと帯留めは使わせてもらうよ」

「…はい!」

お登勢に渡した帯留めはガラス玉が付いておりほんのり朱色と金と銀の折り込みがある帯留めだ。お登勢さんに似合うと思い買ってきた。







本当にありがとうございました!またきます!とお登勢さんにいい、「また来な。今度は酒飲みにね」と言われた。
外に出ると坂田さんが待っていてアパートまで送っていってくれる。これが最後だと思うと少し寂しい。

「終わっちまったな。でも今度から団子屋で会えるな」

「そうですね!楽しみです」

「新しいところでもがんばんだぞ」

「はい!もちろんです!坂田さんも来てくださいね、私寂しいので」

「え、なにそんなこと言われちゃうと銀さん毎日通っちゃうよ?」

「毎日来てくれるなんて嬉しいです」

「なにこれときめいちゃうよ?」

「はい、ときめいてください」

ふふ、と笑いながら歩く慣れた道のり。
坂田さんと歩いているとすぐアパートまで着いてしまうのが悲しい。

「じゃあ、おやすみ」

「はい、坂田さんも」

「…なぁ、坂田さんじゃなくてさ、銀さんって呼んでくれや」

「…え!?」

「坂田さんなんてむず痒いっていうか…とにかく!」

「で、でも…」

「でも?」

「推し…なのに…いいんですか!?」

「お、おし…?」

「推しというのは好き、応援する人、の意味です」

「名前ちゃんってたまにオタクみたいな発言するよな…」

「違いますよ!?オタクじゃないです!一般人です!」

「いやそれオタクがオタクバレしそうな時に使う言葉じゃん」

「………え、いいんですか…そう、よんで…」

「おう」

「…銀、さん…」

「おう」

「…緊張します」

「…そうだろうな」

お互い笑い合って話した。あぁ、この時が続けばいいのに。時間は楽しい時ほど早く進むものだ。

「じゃあ、またな」

「はい、また。お団子屋さんで待ってますね!」

階段を降りながら手をひらひらと動かす銀さんは絵になる。

そんな後ろ姿を見ながらアパートに入りしんとなった部屋が嫌でテレビをつける。

ーここ最近辻斬りが多いですね。皆さん深夜の外出などは控えましょう。次のお天気です。


-旅の恥は掻き捨て-
(旅先では知人もいないので、いつもなら恥ずかしいと思うようなことをしても平気だということ。)





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