本日は休みである、ぼう…と起きると家の中が静かだった。そういえば両親2人は親戚の家に行くから帰るのは夜だって言ってたっけ…、そう考えながらリビングへ行き水を飲む。こっちに帰ってきて広い家の中で私1人なのが久々なような感じがした。
しん…と言う音がリビングを襲う。空気が痛い。今までは、お団子屋さんに仕事へ行きその後万事屋へいくと言う流れだったのに。
なんて考えていると、2階からガタガタ!と音がした。え、何!?泥棒!?
急いで部屋に向かうと、そこには見慣れた3人が居た。


「いてて………よォ、来たわ」

「銀、さん…?」

「名前…名前アルカ…?」

「名前さん…」

「ど、どうしたの!?なんで、こっちに…」

「まぁー…そのいろいろあってよ。っていうか、俺たちのこと置いて先帰りやがってコノヤロー!」

「ぎゃあ!」

銀さんは私の頬を引っ張りながら叫んだ。

「なんで言わなかった!バカか!?バカなのか!?言わなきゃいけねェ事くらいわかんねぇのかこのバカ名前!」

「本当アル!勝手に居なくなって!迎え来るこっちの気にもなって欲しいアル!」

「本当ですよ!大人ならちゃんと踏ん切りつけてください!」

「…みんな…」

銀さんは切ない泣きそうな瞳で私を見て、新八くんと神楽ちゃんは大粒の涙を流しながら話していた。
私は、なんてことをしてしまったのか。帰れ、なんて言われたくないと、自分の事しか考えてなくて、万事屋のことを考えていなかった。3人は、そんなこと言わないじゃないか。

「…ごめんなさい…、ごめんなさい!」

「バカ名前…」

銀さんが私をギュッと抱きしめる。暖かい広い身体に抱きしめられて、彼はここにいるんだと思わせてくれた。

「名前、こんな時なんて言うんだ。ごめんなさいじゃなくて?」

「…みんな、ありがとう…!」









万事屋の3人にお茶を出しながら自分の部屋で話を聞く。なんか変な感じだ、あ、これ逆トリップじゃん!なんて歓喜をしていた私。

銀さんたちの話を聞くと私の同じようにもこもこパジャマをきて来たらしく、やはりそのパジャマが引き金になったのは当たりだった。私がパジャマを手に入れた経由を言うと一番神楽ちゃんが驚いていた。そしてそのパジャマの入手経路に納得した銀さんと新八くん。

「で、どうすんだ名前は」

「どうって…?」

「こっちに居んのか、江戸に来るかだ」

「そう、だよね…」

こちらを捨てて、向こうに行くか。それともこちらを残して向こうに行かないか。2択だ。しかしこちらに帰ってきて思ったことがある。やはり私は江戸にいたいと。

「私、銀さんたちと一緒にいたい」

「…そうか」

「名前…」

「名前さん…」

「私は、こちらに来て後悔した。何も言わないでこっち帰ってきて、こっちでも楽しいし大変なこともあるけど、私は銀さんたちと江戸にいたい。江戸で生活をして江戸で働いていたいって」

「…わかった」

「銀さん…」

銀さんは覚悟を決めた顔をしていた。そうか、私がそちらに行くとしたら私との関係も切れないと言うことだからか。

「そしたら名前の親はどこにいるんだ」

「え、お父さんとお母さんは夜帰ってくるよ?」

「……娘さんを僕にくださいってやるべきだろ」

「え!?」

「え、何だってそうじゃね?俺と名前は付き合ってるし、キスもしちゃったし[ピー]なこともしちゃったし、これから[ピー]なこと沢山して最終的には子宝に恵まれるんだろうよォ」

「ねぇ何言ってんの?新八くんと神楽ちゃんの前だよ?しかもこれ文章ね?文章だから伏せ字もわかるって」

「はァー?じゃあいいのかよ伏せ字無くても。俺ァいいよ?伏せ字なんてなくても平気ですからァー」

「まってよこの人止めてよぉ!」

わいわいと銀さんと話していると、クスクスと笑い出した新八くんと神楽ちゃん。

「なんか、前みたいに戻ったアルネ」

「ははっ、そうだね」

「…2人とも…。ふふ、そうだね」

3人と共にいると楽しいことが沢山起きる。私はどうするべきかなんて答えは出ているのに。そんな話をしているとガチャリと音がした。両親が帰ってきたのだ。

「…銀さん」

「おう」

銀さんは立ち上がり、リビングへ案内を促された。私は緊張しながらも案内をした。










結果から言うと、両親は両手をあげて喜んだ。父は泣き叫び、母は歓喜した。銀さんの素性は適当に見繕ったが、2人ともすごく喜んでくれた。それはもうすんごい。
そして遠くに行くから頻繁には会いに来れないとも話をした。両親の反応は見るからに落ち込んではいたものの、仕方なしと反応してくれた。

そこからの私の生活は一変した。万事屋の3人はホテルに一旦行ってもらい私はこちらの世界での仕事などの後処理に追われた。
同期の子からは「名前はこうじゃなきゃ」と言われてパジャマの予備をくれた。

「願いは強ければ強いほどいいらしいけど、多分行き来はできると思うの。だから、なんかあったらこっちに帰ってきな」

「わかった。…それと、どうすんの?」

「え?」

「神威さんとのこと」

「…それは…」

「私も、元気でいて欲しいから言ってるんだよ。もし、江戸であったらまた仲良くして」

「名前…。わかった。考えるわ」

「うん」

同期にそういうと彼女の表情が変わったのを感じた。私を変えてくれたんだもの、あなたも変わるべきと。
会社へ報告すると寿退社と言う形にしてくれたらしく、退職金などももらえた。そしてあっという間にこちらの世界の一区切りがついた。

「銀さん」

「名前ってこんなに持っていくのかよ!」

「え、なんで?」

「キャリーケース1つ分ってなかなか多いぞ!?」

「仕方ないじゃん、もう来れないかもしれないんだから」

「……悪ィ」

「そんなことないよ、でもこれは持ってく」

「わかったわかった、そんなマジの目しなくても」

「こっちで安い時に買った服とかいろいろ入ってるから!」

神楽ちゃんと新八くんはこっちで買ったものを整理整頓していた。いや2人とも凄い荷物だよ!?てか銀さんもいろいろ買ってるじゃん!

「…よし、じゃあ行くか」

「うん。あ、銀さん、あっちでもよろしくお願いします」

「おう、任せろ。万事屋銀ちゃんだぞ」

「ふふ、ありがとう」

「さぁ、行きますよ!」

「帰るアルヨ!」

再びもこもこパジャマを着て、4人ベッドで横になった。江戸に帰りたい、万事屋に帰りたいと強く強く願った。ぐらりと気持ち悪い感じが私たちを襲う。そして深い眠りにつくように眠る。あぁ、行くのか。またね、ありがとう。



-いとしい子には旅をさせよ-
(子どもがかわいいなら、甘やかして育てるより、世の中に出してつらさや苦しさを経験させたほうがいいということ)





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