起きたら、知ってる天井だ。…なにこれ、エ◯ァ?だなんて、私の中のシンジくんがツッコミを入れた。
重い体を起こすと、自分の部屋だった。
「…そっか…」
桂さんが言っていた通り、成功したらしい。
ベッドから起きて外を見るとトリップする前の季節と同じような世界が広がった。
「…はぁ……」
ふと気になり、スマホを見るとトリップする前、1年前の日付になっていた。
「…え?」
私があちらの世界で過ごしてきた1年間は、ないものとされていたか…。時計を見ると、昼過ぎだった。混乱する頭を抱えながらリビングへ行くと父と母が「おはよう」なんて迎えてくれた。「ご飯はどうする?」なんて聞くから「…コンビニで買ってくるね」と言うと、自分の部屋に戻り着替えて外に出た。
歩きながら戻ってきた自覚が私を襲う。
やっぱり言えばよかった。でも帰れなんて言われたくない。…私のエゴなのに、人を巻き込んだ。
慣れ親しんだ街並みと江戸の街並みが重なり、涙が出た。私は、こちらもあちらも選べなかった弱虫だ。
「…銀さん…」
切ない気持ちと申し訳ない気持ちを胸にコンビニに向かう。
*
「とりあえず、どうするかだな」
「はい…」
名前の手紙を読み直すと、桂さんが教えてくれたと書いてあった。とりあえずヅラに聞いてみるか…とアパートを出た。
ヅラはやはりその辺をフラフラとしており(というかエリザベスでわかった)、とりあえず蹴りを入れておいた。
「いだ!なんだなにをする銀時!」
「それはこっちのセリフだヅラァ!」
「ヅラじゃない桂だ!」
「ヅラ…名前がいなくなったアル…!」
「何…苗字殿が?…銀時に言うと思ったのだがそれはお門違いだったらしいな…」
「オイ、ヅラ…名前に会いに行く」
「苗字殿に!?それは無理な話だ銀時…」
「…なんでだ」
ヅラは目線を俺から外しながら話をした。
なんでも、名前が持っていたのはいわゆる魔法のパジャマらしい。それがなぜ向こうの世界にあったのかはわからないが、それがトリガーとなり、"俺たちに会いたい“と言う願いが重なってこちらへトリップしてきたらしい。
「…だから、銀時たちがいきたくてもあのパジャマがないと意味がないのだ」
「……そーかよ…」
「…すまぬ…銀時…」
「銀さん…」
新八が俺に声をかけた。
俺は、1人の女にこんな固執するようなタイプじゃねェし、追いかけるなんて女々しいと思っていたが、そこまでしても追いかけたい女だった。
「…探すぞ」
「え?」
「あの魔法のパジャマ探すぞ!」
「銀時!それは無理だ!この江戸中だぞ!?」
「それでも、会いにいきてェんだよ」
そういうとヅラを置いて俺たちは江戸、かぶき町のパジャマ屋を探した、が。
「銀さん、秒で見つかりました」
「……は?」
「銀ちゃん、これ魔法のパジャマって書いてるヨ。しかも安いネ」
神楽が値札を見ると3500円が半額になっていた。なんでだ!早すぎねェか!?
「お、お嬢さんいいもの見つけたねぇ!これ江戸では作れない魔法の糸でもこもこにあんだからあったかいし、願いながら寝ると叶うかも!」
「「「これ!ください!」」」
「は…はい…」
もこもこパジャマを買う俺と新八と神楽は店側では異様な人に見えただろうな…。
それを手に取り、万事屋へ走る。名前に会うために。
-急がば回れ?-
(急ぐからといって危険で何があるかわからない近道を選ぶよりは、遠いけれど確実にたどり着くことのできる回り道を選ぶ方が賢明だという事の例え)
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