お正月も過ぎた頃といえどまだ寒い1月。もうここに来て1年近くなろうとしている。はぁ…とため息をつき、いつになったら帰れるのか。それとも帰りなくないのか、なんて自分の心に聞かずとも答えはほぼているようなものだった。帰りたくない、とそう願い毎日床に着く。それを繰り返す毎日だった。
ぼーと考えていると、お団子屋さんに1人…と白いのが来た。いや白いってあんたエリザベス!バレない!?大丈夫!?なんてハラハラしてたら、「苗字殿」と声をかけられた。

「は、はい!って桂さん」

「桂じゃない!ヅラだ!間違えた、桂だ!」

「間違えてますね?本日はどうしたんですか?」

お茶を出しながら2人…2人?に話しかけた。

「実はな、苗字殿が帰れる方法がわかったぞ」

「え…?」

「天人の仕業ではないかと思っていたがそうではないらしい。…高杉に聞いただろう」

「…はい…」

「お主の持っているパジャマと、あともう一つ発動条件が重なると向こうへ行けるらしい」

「え、どういう…」

「もう一つは"どこに行きたいという欲"だ。苗字殿はそういう想いがあったのではないか?」

お茶を飲みながら私に話す桂さん。
どこかに行きたい欲…?…確かに銀魂サイコー!行きてー!まじ行きてー!あー、仕事なんてやめてそっちに行けたらもう何も思い残すことはない!なんて思ってたけど…

「そ、そんなことですか!?」

「そんなこととはなんだ、その想いが強すぎてそのパジャマとなんか…こうなってああなってこちらに来たのではないかと思うのだ」

「えぇ…そんな…魔法のパジャマとでも言いたいんですか?」

「まぁ、そんなところだ。苗字殿のパジャマはいわば引き金、想いがポイントだな」

「………そう、ですか…」

なんだこのありえない話。しかし、ここに来る前、よく思っていたし友達にもそういうトリップ憧れるわーいや痛いかー!なんて話してたのは確かだ。そうか、私はいつでも行けることとなったのか。

「…苗字殿は、銀時と、その…恋仲なのだろう。もし、離れるなら早めに言わねばならぬぞ。もしこちらへずっといるなら元の世界に別れは言えぬぞ」

「…はい…」

そうか…もう帰れる鍵を持ってるのか…。ん?待てよ?

「で、でも来れるならまた帰って次にまた来れますよね?」

「…確かに、そう考えるのが一般的だろう。しかしその想いの大きさを前来た時よりも大きくもたなくてはならぬらしい。それがいつ発動するのかはわからぬ」

「そうですか…」

「…一度きり、と考えたほうがいい」

「わかりました…」

一度しかないのか…。それもそうか…。

「[名前ちゃん大丈夫?]」

なんてエリザベスがプラカードを出した。

「うん、大丈夫です。ありがとう、エリザベス」

白い手でもふもふと頭を撫でられた。安心する手だ。

「ではまたな。よく考えるんだな」

「はい…」

桂さんは笠を深く被り団子屋を去った。
…なんか、ふわっとした理由でこちらへ来たんだなぁ…。でもなんかふわっとした感じにこちらに来たし…普通はこんなものなのか。いやわからない…。
…よく考えなきゃ…、そう思いながら仕事をこなしていた。このことを、銀さんにいうべきかな。






仕事終わり、万事屋へ来た。新八くんや神楽ちゃんは居なく、そのままお邪魔しまーす、とリビングへ上がって行った。
そうしたらたまたま銀さんがテレビニュースを見ながら「おー、仕事お疲れー」なんで言った。

ーで、俳優の…さんと、女優の…さんは、秘密を隠して生活していたそうです。

「ヘェ…まぁ秘密ごとはよくねぇよなァ」

なんて呟く声が聞こえた。
その言葉にドキッとしてしまった。秘密、なんて。そんなのじゃない、そう。秘密じゃないから。

「………」

「名前?」

「え、どうしたの?」

「いやなんか元気なくね?どうした?」

「そんなことはないよ。銀さん今日は呑みに行こうよ!」

「お、いいなァ。久々だな、呑むの」

「うん」

胸の奥底に、隠そう。
これは、秘密じゃないから。



-秘事は睫-
(目のすぐそばにある睫が見えないように、秘事・秘伝は案外身近にあるが、容易に気がつかないものだということ)





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