目が覚めたら夢から覚めると思っていた。

「へっぶしょん!」

…夢じゃないらしい。寒さで目が覚めた。
天井をみてやはり戻ってないということと、戻っていないことに安堵した私がいた。
トリップなんて幸せじゃん!なんて思っていたけどあの人たちと関わりたいと思う反面、関わり方がわからないのもあった。

トリップの夢小説ってこんな大変な訳…坂田銀時とか土方十四郎とかが「おもしれー女の子フッ(効果音)」とか言って住まわせてくれんじゃないの!?…これは可愛い子限定だ…私は…平々凡々…

ふー…とため息をつき、しん…と寂しさが襲う。一人暮らししたことがなくここまできたが意外と寂しい。テレビをつけても寂しい…。

「よし!」

昨日お登勢から「金がないんだろう、前借りだよ」と少しもらったお金を握りしめ、お登勢さんの仕事の時間まで必要なものを揃える為に外に出よう。戻るまで、戻るまでだ。





きつい…着物で街を歩くのしんどい…洋服着たい…寝巻きしかないからな…あと下着とタオル数枚、歯ブラシ、くし、フライパンと簡単な食材など頭の中で考えながら周りを見渡した。しかし…どこがどこの店だかわかんない!店に入って少し買うを繰り返すがなかなか集まらない。

「どうしたんですか?」

「あっ…」

や、山崎退!うわ…かっこいい…カッコ良くない?ジミーじゃなくない?

「えーと…日用品と食材を買いたいんですがどこで買えば一回で買い物できるかわからなくて…」

「そしたらあそこにある大江戸ストアなら便利ですよ」

「ありがとうございます!」

「いえいえ、それではお気をつけて」

山崎さんが敬礼をしながら歩く姿を見て少し可愛いと思ってしまった。山崎さんのスーパーの袋の中はあんぱんがたくさんあった。あんぱん…本当に好きだな…






「よし…!」

卵とお米と肉と魚を少し、それと飲み水は水道水で身体に何も変化がないから飲んでも平気らしいから飲み物は無し。あとは小さいフライパンと油など食材と、タオルやくしなどの日用品を買った。なかなかの値段になったが必需品だから仕方ない。しかし下着類は売ってないか…

「あれ苗字さん?」

「…新八くん!新八くんもお買い物ですか?」

「はい、今日も万事屋に行くのでついでに行きがてら買い物をすこし。苗字さんもお買い物ですか?」

そう言いカートの中を見る新八くん。「たくさんありますね、これアパートまで届けますよ」なんて言ってくれるが、年下にそんな雑用をさせられないとお断りしたが「銀さんが"街で困ってそうなら少しは助けてやれ"なんて言ってましたよ」と聞かされた。
優しい人だ…とすこし心があったかくなった。じゃあ、とまだ出勤時間まで余裕があったのでお願いした。






買い物袋3つになってしまって新八くんが2つ持ってくれてありがたい。家に着いたら今回の買い物で買ったジュースあげようと思った。

「着きましたね、昨日はよく眠れましたか?」

「はい!気づいたら寝ちゃいました」

「ちゃんと寝てちゃんと食べなきゃ仕事できませんからね」

アパートの玄関でスーパーで買ってきた袋の中身を出しながら私に言った新八くん。
仕事探しもしなくてはいけない。明日探してみよう。

「はいこれジュース、荷物持ちしてくれたお礼…は、だめかな?」

「え!いいんですか?…じゃあいただきます!」

プシュッとフルタブを開けて飲む新八くん。
基本お茶飲むので久々だなー、なんて聞こえた。そういうところは少年だな、と可愛いなぁ…。

「ではお登勢さんのところまで案内しますね」

「はい、よろしくお願いします」








「はいこれが今日の給料だよ」

「ありがとうございます。…え!待ってくださいこんないただけません」

6時間くらいで対価に合わない金額をもらってしまった。

「いいんだよ。夜営業だからこっちも働いてくれてありがたいよ」

「でも…」

「年寄りの恩恵は受け取るもんだよ」

「…ありがとうございます」

このお金は必需品を買ったら貯金をしよう。必ず返すんだ、そう決めた。

ガラッととが開く音がして「すみません今夜はもう…」と言いかけたところで驚いた。坂田さんが入ってきた。

「お、えーと…苗字さん、だよな。仕事お疲れさん」

「坂田さん、今夜はもうおしまいなんです、どうされましたか?」

「こんな時間だろう、送っていくよ」

「え!」

「いいんだよ、こんな年中だらけた奴だからこんな時しか使えないんだから使ってくんな」

そう言いお登勢さんはタバコに火をつけた。
でも…緊張しちゃうよ!?そうぐるぐる考えながらお登勢さんのこの好意を受け取りアパートまでの道のりを歩く。き、緊張するー!
何話そう、何話せばいい!?

「あー…少しさみぃな」

「そ、そうですね!」

「もうすぐ春だもんな」

「そうですね!」

「いやタモさん?タモさんのところのお客さんかよ」

「そ、そうですね…」

「緊張してる、とか?」

「…そう、です…あんまり男の人と話した事なくて」

「そうなのかぁ…もしかして箱入り娘で育てられた?」

「箱入り娘…というわけではなかったですね…。学校が女子校と女子大だったので男性とはあまり話す機会が無くて…」

「…女子大?」

「えぇ、女子大でしたよ?」

「そうかーそれは緊張するな、俺かっこいいし?」

ニタァと笑う坂田さん。いやかっこいいー!
そう話をしているとアパートに着いた。

「ありがとうございます、夜道怖かったので助かりました」

「いいってことよ。そういえば新八が昼間世話になったな、ジュースもらったって喜んでたわ」

「いえ!こちらこそ日用品を買い物していたので重いものを持たせてしまって申し訳ありませんでした」

「まぁ…お互い様ってことで。じゃあまたな、"名前チャン"、腹出して寝るんじゃねーぞ」

そう言い坂田さんは頭をポンポンとして万事屋の方に歩いていった。
ガチャと部屋に入って玄関に座り込む。わ、私の名前呼ばれた!しかも頭ポンポンされた!……嬉しい!手大きかったなぁ…

「へへ…ありがとう、銀さん。よし!お風呂入ってご飯食べよ!」







夜道を歩く銀時。ふむ、と考えてアパートの方を見る。

「女子大、ねぇ…。江戸まで歩ける距離に大学なんつーもんは無いんだよなァ」




-旅は道連れ世は情け-
(旅をする時は同行者がいれば心強く、同様に世の中を渡るにはお互い助け合っていくのが大切だということ。)






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