真選組の皆さんと飲み会をしたあと、沖田さんにマフラーを借りてしまったので、一応お洗濯をして菓子折りを持って真選組に来ています。

「はー…緊張するな…」

あの沖田さんがマフラーを貸してくれたってだけで驚きなのに…。なんで色々考えていたら「苗字さん?」と話しかけられた。

「あ、山崎さん、こんにちわ」

「こんにちわ。今日はどうしたの?」

「沖田さんいますか?マフラー返そうと思って」

「あぁ、沖田隊長は今日は…」

「今日はいねぇよ」

「土方さん、こんにちわ」

山崎さんの後ろから出て来たのは土方さんだ。

「今日攘夷浪士が取引する日だと連絡がきた。俺は別件でここにいるんだが、まぁ少人数だし総悟とほかの隊士でカタはつくだろうと思ってな」

ふー、とタバコの煙を吐きながら話す土方さん。そうか…ここに来て呑気に過ごしていたが、攘夷浪士がいる世界。逆に今まで殴られて連れ去られそうになったのみでいい方だ、と考えてしまった。

「そう、ですか…。いつ頃帰って来ますか?」

「もうすぐのはずだが…。あぁ、マフラーか」

私の持っている紙袋の中身を土方さんは思い出したのだろう。飲み会の日借りたものだ。

「とりあえず客間で待つか?」

「…いいんでしょうか…」

「まぁ、すぐ戻ってくるさ。山崎、案内してやれ」

「はい!ではこちらに」

「し、失礼します!」

山崎さんに連れられて屯所の中の客間に通された。

しばらくまっていると、ガタガタと歩く音が聞こえる。沖田さんかな?と障子の方を見ると、スパン!と開けられた。
そこに写るのは、沖田総悟さんだ。しかし、血まみれだった。

「お、沖田さん!どうしたんですか!?」

「やられた」

「え!?だ、だれか!沖田さんが!怪我を!」

「…ぷ」

「…え…」

私が慌てて叫ぶと沖田さんは笑っていた。なぜ、なんで!?あなた血まみれよ!?

「馬鹿な奴だな、新人。これでさァ」

そういい沖田さんはトマトの空き缶を持ちながらニヤニヤしていた。
私は思い出した、そうだ、沖田総悟は超の付くドS!意地悪するのは当たり前の沖田さんだった!

「お、沖田さん…」

「なんでィ」

「お前を血染めにしてやろうか」

「ハッ、やれるもんならやれィこの新人」

「私は!もう新人じゃないです!」

「騙される方が新人なんでィ」

ムムム…とお互いいがみ合っていると、まぁまぁ!と遮られた。それは近藤さんと土方さんが呆れたように私たちを見ていた。

「ほ、ほら、名前ちゃんも、落ち着いて」

「総悟、お前バカか。こんなの見たら普通なら驚くだろ」

近藤さんは、この前の食事会で仲良くなることを前提に私のことを名字呼びから、名前呼びに変えてくれたのだ。なんかむず痒いが近藤さんはニコニコしながら私と沖田さんと間に入った。

「それで、名前ちゃんはどうして屯所に?」

「あ、ええと…これ。この前私酔っ払ってお金も金額合わないのに帰ってしまって申し訳ありませんでした…。これつまらないものですが、皆さんで食べてください」

そういい菓子折りを渡した。食事会の帰り、私は適当にお金を出したつもりだが、あの人数だ。3000円くらいじゃ足らないはずなのに出してしまって、意気揚々と帰路についたのだ。申し訳ないことをしたと次の日気がついてどうにか思い出そうにも金額までは見ていなかったのだ。

「あの…それで金額どのくらいになりましたか?お支払いします…」

「ええ!いいよいいよ、いつも名前ちゃんには総悟が世話になってるし、これからも仲良くしてくれっていう意味で、チャラはどうかな?」

「え…そんな…」

「俺は新人をお世話してますがねィ」

「総悟!」

「…では、わかりました!ありがとうございます」

「うん、いいって。あとは?」

「あ、えっとこれ、沖田さんにお返しします」

そういい紙袋を渡した。一応洗濯をしたが、どうだろうか。

「は?これ返しにきたんですかィ」

「はい、ダメでしたか?」

「ダメっつーか…」

「…?」

沖田さんは紙袋の中のマフラーを見て私を見た。

「てか新人が使ったもの、俺はもう使わないからあげまさァ」

「え!」

「あんたの匂いが染み付いて」

「は?」

「こら総悟!…もういいお前は風呂入ってこい」

「へぇへぇ」

土方さんは沖田さんがいると怒ることばかり言うと察して沖田さんをお風呂に向かわせた。私はというと、私の匂いがついてるから嫌だ!?と考えて着物の匂いを嗅いでいた。なんか臭いかな…ええ、お洗濯したのに…。

「…すまねェな、苗字さん。マフラー使えよ」

「え、でも…」

「総悟はあんなこと言ってたが、多分あんたに使って欲しいんだよ」

「私に…?」

「悪い奴じゃないんだ、口が悪いだけで」

「は、はぁ…。では、これいただきます。代わりのもの買って来た方がいいでしょうか?」

「あー…いや、いい。多分…」

「え?」

「いや、なんでもない。俺らにそんな気を使う必要なねぇよ」

土方さんは困った顔をしながら私に言った。
私はじゃあ…と思いマフラーを受け取り屯所を後にした。またなんかあったら来てねと近藤さんに言われて、はい、と答えた。
帰る道、沖田さんからもらったマフラーを巻き、帰路につく。

「…素直じゃないんだから」

首に巻いたマフラーはあの日と変わらないくらいあったかかった。



名前が屯所を後にしたそのあと、風呂から出た沖田のところに土方がいた。


「おい、おまえ素直になったらどうだ」

「なんの話ですかィ」

「苗字さんの話だ。あの人はわざわざお前にマフラーを返しにやって来たんだ。受け取ってやれよ」

「…気にくわねェんでさァ」

「は?」

「この前、たまたま万事屋の前を通ったら、髪がボサボサのまま万事屋から出て来たんでさァ。旦那のマフラーをして」

「…万事屋の」

「人のモンなんかより、自分のモンの方がいいでしょうって訳でさァ」

「そう、か」

「んじゃ」

沖田は土方の目の前を通り過ぎ自室に向かって歩いていった。それを土方は横目でみて、自分も人のモンに手ェ出そうとしてんなよ。と心の中で思っていた。

マフラーはそんな沖田のプレゼント、らしい。



-恋は仕勝ち-
(恋は、周りの事情など考えずに、積極的に自分から仕掛けたほうがうまくいくということ)







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