大衆居酒屋で真選組の皆さんと呑むお酒は楽しいものだった。私が働いている団子がうまいことや、土方さんのマヨネーズの話、山崎さんの好きなものの話など、色々な話をした。私はお刺身を食べながら話を聞いて笑っていた。

「ところで名前ちゃんは万事屋と付き合ってるってホント?」

近藤さんがニコニコしながら日本酒をくい、と飲み聞いて来た。

「はい、お付き合いしてます」

「は、お、お前大丈夫か!?騙されてねェか!?アレは本当だったのか!」

「ひ、土方さん落ち着いてください。私は騙されていないです。それと入れ替わった時のことはアレは本当です」

土方さんが信じられない、と言った目で私を見て来たのだ。いや信じていなかったの…。

「銀さん優しいですよ、ちゃんと仲良くしていますよ」

「…………いやその銀さんとやらは」

「はい?」

「女連れて出ていったけど」

「…………」

私たちが座ってる席の窓の外を見ると、たまたま銀さんが女の子達を引き連れて2件目に行こうとしていたのを目撃した。

「……優しいですからね、銀さん」

「ねえええ!なんか名前ちゃん泣いてない!?トシ!名前ちゃん泣いてるよ!?」

「そんなんじゃないですからね…これは、その、ガンジス川ですから」

「川なんかじゃねぇだろ」

メンタルにくるものだ。正直しんどいが、それもこれも協力したから仕方ないこと。我慢するのよ。まぁまぁ、と近藤さんと土方さんに酒を勧められごくごくのと呑む。

「お、おい呑みすぎんなよ」

「大丈夫です!」








「う…むり…」

「ほら呑み過ぎたでしょう?」

「うぅ、やまざきさん…」

「銀さんは、その…浮気なんてしないからっ…だけど、モテるし…」

「旦那そんなにモテます?」

「もてるよぉ!てか真選組のみんなもモテモテだし、山崎さんもモテるんですよぉ!」

居酒屋で呑んで3時間、近藤さんはほぼ泥酔、土方さんと沖田さんも酔っている雰囲気だった。そして私も愚痴やらなにやらで、でろでろになってしまった。

「俺!?俺モテるの!?」

「モテます!私の中で!」

「いや苗字さんのなかではじゃん!本当に大丈夫ですかぁ…?」

「へーきです!」

あぁ、こんな心地のいい酒は久々だ…。楽しいし面白いし、真選組の皆さんと少しは近づけたかな。

「もう、かえりやしょー、こんどーさん」

「お!もうかえろっかぁ、そうごー!」

「ん、けーるぞぉ!」

「はぁい!!!」

そういいお金を適当に払い店を出てきた。店の外は寒く、酒で熱った体を覚ますにはちょうどよかった。

「はぁー…」

「ん、ほら」

「え?おきたさん…」

「これ、マフラー」

「……貸してくれるの…?ありがとぉ」

「………ん」

沖田さんは自分のマフラーを私に貸してくれてぐるぐるまきにされた。あったかい…。
私は沖田さんを見てなんか、褒めてあげたいと思ってしまった。私は手を沖田さんの頭に置き、よしよしと撫でた。

「な、ぁ」

「沖田くんありがとうね、これで風邪ひかないよぉ」

「………ぅ、うるせぇ…」

「沖田隊長が…あの沖田隊長が苗字さんに!」

「…こりゃ明日雪降んな」

「可愛いじゃないか!」

ふふ、と笑うと沖田さんも少し微笑んだ気がした。冬の寒い時に見せる、お互いの顔が少し綻んだ気がした。



-酒なくて何の己が桜かな-
(花見に酒はつきもので、酒を飲まない花見はおもしろくないということ)








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