大衆居酒屋で真選組の皆さんと呑むお酒は楽しいものだった。私が働いている団子がうまいことや、土方さんのマヨネーズの話、山崎さんの好きなものの話など、色々な話をした。私はお刺身を食べながら話を聞いて笑っていた。
「ところで名前ちゃんは万事屋と付き合ってるってホント?」
近藤さんがニコニコしながら日本酒をくい、と飲み聞いて来た。
「はい、お付き合いしてます」
「は、お、お前大丈夫か!?騙されてねェか!?アレは本当だったのか!」
「ひ、土方さん落ち着いてください。私は騙されていないです。それと入れ替わった時のことはアレは本当です」
土方さんが信じられない、と言った目で私を見て来たのだ。いや信じていなかったの…。
「銀さん優しいですよ、ちゃんと仲良くしていますよ」
「…………いやその銀さんとやらは」
「はい?」
「女連れて出ていったけど」
「…………」
私たちが座ってる席の窓の外を見ると、たまたま銀さんが女の子達を引き連れて2件目に行こうとしていたのを目撃した。
「……優しいですからね、銀さん」
「ねえええ!なんか名前ちゃん泣いてない!?トシ!名前ちゃん泣いてるよ!?」
「そんなんじゃないですからね…これは、その、ガンジス川ですから」
「川なんかじゃねぇだろ」
メンタルにくるものだ。正直しんどいが、それもこれも協力したから仕方ないこと。我慢するのよ。まぁまぁ、と近藤さんと土方さんに酒を勧められごくごくのと呑む。
「お、おい呑みすぎんなよ」
「大丈夫です!」
*
「う…むり…」
「ほら呑み過ぎたでしょう?」
「うぅ、やまざきさん…」
「銀さんは、その…浮気なんてしないからっ…だけど、モテるし…」
「旦那そんなにモテます?」
「もてるよぉ!てか真選組のみんなもモテモテだし、山崎さんもモテるんですよぉ!」
居酒屋で呑んで3時間、近藤さんはほぼ泥酔、土方さんと沖田さんも酔っている雰囲気だった。そして私も愚痴やらなにやらで、でろでろになってしまった。
「俺!?俺モテるの!?」
「モテます!私の中で!」
「いや苗字さんのなかではじゃん!本当に大丈夫ですかぁ…?」
「へーきです!」
あぁ、こんな心地のいい酒は久々だ…。楽しいし面白いし、真選組の皆さんと少しは近づけたかな。
「もう、かえりやしょー、こんどーさん」
「お!もうかえろっかぁ、そうごー!」
「ん、けーるぞぉ!」
「はぁい!!!」
そういいお金を適当に払い店を出てきた。店の外は寒く、酒で熱った体を覚ますにはちょうどよかった。
「はぁー…」
「ん、ほら」
「え?おきたさん…」
「これ、マフラー」
「……貸してくれるの…?ありがとぉ」
「………ん」
沖田さんは自分のマフラーを私に貸してくれてぐるぐるまきにされた。あったかい…。
私は沖田さんを見てなんか、褒めてあげたいと思ってしまった。私は手を沖田さんの頭に置き、よしよしと撫でた。
「な、ぁ」
「沖田くんありがとうね、これで風邪ひかないよぉ」
「………ぅ、うるせぇ…」
「沖田隊長が…あの沖田隊長が苗字さんに!」
「…こりゃ明日雪降んな」
「可愛いじゃないか!」
ふふ、と笑うと沖田さんも少し微笑んだ気がした。冬の寒い時に見せる、お互いの顔が少し綻んだ気がした。
-酒なくて何の己が桜かな-
(花見に酒はつきもので、酒を飲まない花見はおもしろくないということ)
←