年末が近い今日この頃、現在深夜1時過ぎ。
寒い空気がヒューと吹く万事屋の外と、寝室にいる2人の熱い身体、それはお互い惹かれるように重なる。
なんでこうなったんだっけ、なんでこんなになったんだっけと自分で質問してもこの答えは出てこない。

「銀さん…」

銀さんは私に軽く覆い被さり私の首元に顔を埋めてる。どうしよう、緊張する、だって好きな人だよ、顔から火が出そうなくらい熱い。ドキドキしてても銀さんに動きはない。

「ぎ、ぎんさん…?」

そう問いかけてチラリと見ると全く動かない。それどころかぐぅ、と寝息を立てている。

「…はぁ……」

助かった…と思ってしまった。このまま…なんて考えてしまったが、安心している自分と、残念がっている自分がいた。
銀さんはお酒が入ると暴走するなんて聞いていたがそんなことはなさそうだ。

私は銀さんをずらして布団をかけた。
銀さんは、みんなのものだからと遠慮をしていたが、2人の時は甘えても平気なのかな、2人の時はたくさん話してもいいのかな、なんて考えても結果は出ることなく現在に至るのだ。

「銀さんの髪の毛ふわふわ…」

手で触るとふわふわしていた。綿菓子みたい、と思ってしまう。かわいいな。さて、もう寝よう。銀さんに近づいて寝る。明日もいい日になりますように。







目が覚めて目覚ましを見たら7時を指していた。このまま寝ようとしたが、せっかくだし朝ごはんを作ろう、と思い着物を直して銀さんのマフラーを拝借し万事屋を出た。値段は高いが近くのコンビニに行こう、そう思い朝の寒さが身に染みる。はぁーと息を吐くと冬の朝の匂いがする。

「…新人」

「え、あ…沖田さん」

「…朝帰りですかィ」

「違いますよ、昨日銀さん達と焼肉食べてて、そのあと泊まっただけです」

「へぇ…」

「では、私はこれで。失礼します」

沖田さんの横を通ろうとすると腕を掴まれた。

「…沖田さん?」

「今度、飯どうですかィ。近藤さん達と」

「皆さんと?」

「行くか行かねーかはっきりしろィ」

私の目に映る沖田さんは、年相応に見えた。10代だ、私より年下でなんか今まで怖いと感じていたのが、かわいいと思ってしまった。

「行きます、皆さんと楽しみです」

「…じゃあ、あとでまた団子屋にいきまさァ」

「お待ちしておりますね、沖田さん」

「へィ」

腕を離して歩く沖田さん。みんなとご飯か、また楽しみが増えたなぁなんて思った。

沖田さんと離れたあとコンビニで味噌や豆腐、それともう出来上がっている鮭など朝ごはんらしいものを買って万事屋へ戻った。
ガラリと開けると、銀さんが迎えてくれた。

「ど、どこ行ってたんだよ」

「え…近くのコンビニに…。朝ごはん食べるかなって…」

「はぁー…よかった…」

「え、ごめんなさい…、書き置きすればよかったね」

「いや…帰っちまったかと、思った…」

帰る、とは私が元の世界へ帰ることだろう。銀さんは心配をしてくれた、それが嬉しかったのは失礼ながら事実だ。

「ふふ、私が帰るときは必ず銀さんに言うから」

「…勝手に帰ったら迎え行くからな」

「絶対に言うから」

銀さんは私を見て困ったように笑った。そのあとはずっとそばにいてくれて、料理する間も手伝ってくれた。彼好みのものが作れないかもしれないと思っていたが、出来上がった味噌汁をずっと褒めてくれていた。

陽も高くなってきた頃、万事屋へ新八くんと神楽ちゃんが帰ってきた。

「ただいまヨー!」
「ただいまです」

「おかえりなさい、2人とも」
「おけーり」

こんな日が続けばいいな、と思っていた。
あの年末のことがなければ。



-禍福は糾える縄の如し-
(災厄と幸運とは繕り合わせた縄のように表裏一体をなしていて、代わる代わるやってくるものだということ)





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