万事屋来ませんか?の一言で志村新八について行く私。緊張する、無理だって坂田銀時推しだもん!推しと会えるのすごくない?控えめに言ってすごくない?やばくない?などと考えていると「ここです」と新八くんが話しかけてきた。

「ここ…が…」

万事屋…
す、すげぇえええ!ちゃんと万事屋だ!あの世界のまんまじゃん!トリップ…すごい…

「階段上がってすぐが万事屋です」

トントンと後ろを歩いて行く私。やばい緊張してきた無理、アイドルの握手会並みに緊張する。

「ただいま戻りましたー…あれ、銀さん?神楽ちゃん?」

「お、おじゃま、します…」

…いやあのまんま!すごい…
私がいる、私が、いる!…もう何も思い残すことはない…そう思いながら「上がってください、お茶出しますね」とソファに案内された。すとんと座り周りを見る。本当にそのままだ。感動…

「はいどうぞ。すいません、銀さん…ここの社長は現在どこかに行ってしまって…それともう1人いるのですがその子もどこかへ…すいません」

「いえ!大丈夫です!」

「えーと…では僕が聞きますね。…お名前は?」

「苗字名前です」

「苗字名前さんですね」

サラサラと紙に私の名前を書く新八くん

「僕の名前は志村新八です。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

「それで苗字さんはどう今後お考えですか?」

「うーん…家出したので、とりあえず働き口と寝食を最優先に確保したいです。江戸にきてすぐなので身分証なども持ってこなかったんです。それでも雇ってくれるところはありますか?」

「そうですね…基本は免許証や身分証が必要ですが、ここは特に訳ありの方も多いので大丈夫だと思います」

新八くんの話を聞き少しほっとする。よかった…寝食さえ確保できればあとはゆっくり帰り方を模索すればいい。
そう考えていると「たでーまー、あれ客ー?」「新八ー!今日スーパーで卵安かったネ!」との声が聞こえた。ここここここの声は!まさか!

「…あれ、お客さんこんにちわぁ」

「こんにちわネ!」

「こ、こんにちわ!」

「銀さん、神楽ちゃんお客さんですよ!ここにいないから驚きましたよ」

「わりィわりィ」

目の前で坂田銀時が動いてる!見てしまう…背高い、いい声、かっこいい、無理、同じ空気吸ってる…推しカッコいいいいいー!キンブレとうちわ振りて〜!こっち向いてってやりてぇー!

「…お、俺の顔に何かついてます…?」

じっと見ていたからか坂田銀時にそう言われた。まって控えめに言って私に話しかけてるの尊いからまってこれは録音案件、と思いつつ落ち着いて返事をした。

「いえ、その、かっこいいなぁて」

…わたしは何を!言って!いるんだ!引かれるかもしれない…そう思って様子を伺っているとニヤッとして

「かっこいいって嬉しいねぇお姉さん見る目あるわ」

とそう言い、そういい新八くんの隣に座った。
いや…あの顔反則…よくみる顔じゃん。

「銀ちゃんがカッコいい…?こんなマダオダメネ、いい眼科紹介するヨ」

心配そうに私を見る神楽ちゃんは、新八くんの隣に座る。かわいい…ほっそ…え…かわいい無理じゃん?世界一チャイナ服が似合うよ!

「あ、苗字さん、こちらの銀髪の人が坂田銀時、銀さんでここ万事屋をやっている人です。こちらが神楽ちゃんです」

「坂田銀時でーす」

「神楽ネ!」

坂田銀時からは名刺をもらい、神楽ちゃんからはにっこりとスマイルをもらった。
名刺…!くっ…一生の宝物にする。神楽ちゃんのスマイルは私の心のフィルターに撮ったぜ…!

「苗字名前です」

「んで?どんな依頼?」

「苗字さんは家出をされて、持ち物を持ってこず江戸に来たそうです。それで働き口と寝食をご相談だそうですよ」

「働くって…まぁーここなら平気だろうすぐ見つかるよ。寝食は俺のツテでアパート持ってる知り合いがいるから聞いてみるわ」

そう言って坂田銀時、坂田さんは電話をかけて話している。さすが…顔が広い…

「おねーさんはなんで家出したアルか?」

神楽ちゃんが純粋な目で私を見て質問してきた。どうしよう…うーん…と…

「…少し喧嘩をして…それで家出をしてきました。元々江戸には行きたいと思っていたのでいい機会だと思いました」

「そうなんですね…」

「アパート空きがあるから入っていいってさ。家賃は3ヶ月は待ってやるって言ってたわ」

「ありがとうございます!」

「それと…今の服はよくねぇな。苗字さんだっけ?着物は?」

「えっと…寝巻きのまま来てしまって…持ってないです」

「うーん…ババアに聞いてみるか…、待ってな」

「あっ!私も行きます!」

着物なんて着たことがない。教えてもらわなければ生活がままならない。

「そしたら僕たちも行こうか」

「オー!」





ガラッとスナックお登勢の扉を開ける坂田さん。新八くんや神楽ちゃんも来ている。壁際にはお酒の瓶が所狭しと並びスナック感をより出している。

「おやなんだい?ゾロゾロ揃って」

「あー…着物とか余ってねぇかなーて思ってよ」

「着物?」

そういい坂田さんの後ろを歩いていた私と目があった。すごい…かっこいい、美人な方だ。

「…あんたに似合う着物はないが、お古ならあるからこっち来な」

「はい…!」

お登勢さんの後ろをついて行き、和室に案内された。

「こんなもんかね、とりあえず2着はやるよ」

「え!?いや、あとでちゃんとお返しします!」

「いいんだよ、箪笥の肥やしになるよりかはお天道様の光を浴びてきてもらった方が着物も喜ぶもんさ」

その言葉がとても嬉しかった。ここの人たちは本当にいい人たちだ。だからこそ、坂田銀時を中心に人が集まるのだ。

「ありがとうございます…」

「さ、あんた着方わからないんだろう?教えてやるから鏡の前に来な」

「!…はい!」

お登勢さんに着物の着方を教えてもらいながら着物に袖を通した。






きっっつい…今まで洋服しか着ず、和服なんて夏祭りと成人式くらいしか着なかったからしんどい…でも、慣れなければ。大丈夫、私は地方から来た田舎者の私よ。大丈夫。バレないようにしなければ。もし「異世界からトリップしてきてしかもあなたたちのこと知ってまーす!」なんて言ってみろ、頭おかしいやつだって思われたくない。

「お、お待たせしました…」

「おー…さっきの服よかこっちの方がしっくりくるわ」

「似合ってますよ苗字さん」

「可愛いネ!」

万事屋の3人に言われてホッとした。江戸に馴染むような格好に見える事が嬉しい。

「あとは働き口ですね…、どうしますか?銀さん」

「それは働いてみないとわかんねぇな。苗字さんにも仕事の合う合わないがあるからな」

「そう、ですね…」

それでもアパートと着物があるからどうにか生きていける。ホッとした。

「そしたら1週間ウチで働くかい?」

「えっ」

「たまもメンテナンスをしてもらわなきゃいけないからね、その分1人かけちゃうから、困ったもんだと思っていたら、その話を聞いてあんたを誘わない奴がどこにいるんだい?」

「ぜ、ぜひ!働かせてください!」

「お、そしたら少しは働いて金稼げるな」

坂田さんがこちらをみて話しかけてきた。

「はい、良かったです」

「あんた、名前は?」

お登勢さんが話かけてきて、自分の名前を言った。お登勢さんは「じゃあ今日は疲れているだろうから帰って明日から来てくれよ。夜ご飯はここで食べていいから」と言ってくれた。ありがとうございますと返事をして、明日からの出勤時間の確認をした。

坂田さんが「アパート案内するから」と連れてきてくれたのは万事屋から少し離れたアパートを紹介された。
部屋に入ると家電製品とベッドがある部屋だった。元々備え付けのアパートだが、たまたま一部屋空いていたそうだ。大家さんに挨拶をしてここに住み始めることとなった。






「では僕たちはこれで失礼しますね」

「名前またアル!」

「うん、またね新八くん、神楽ちゃん」

「明日からまぁ、気張ることなく頑張れや。なんかあったら俺たちは上の階にいるからなんでも相談してくれよな」

「はい、ありがとうございます坂田さん。ちゃんと稼ぐようになりましたら、必ず依頼のお金を支払いに行きますので、申し訳ありませんがそれまで待っていてください」

「おー待ってるわ」

「では、また依頼お待ちしております」

わざわざアパートまで送ってくれた万事屋の3人にお辞儀をして部屋を閉めた。

「ふぅ…」

今日1日で色々なことが起きた。
トリップをして志村新八にあって、そのまま坂田銀時の人脈を頼りに次々と決まっていった。ありがたい。ここで暮らしながらものと世界に帰る方法を見つけよう。まぁ、急に戻れるかもしれないしわからないけど!トリップはこうだからね!

こうしてベッドに沈み込む。あぁ疲れた。でも楽しい。万事屋に関わるのは今回の依頼のお金を払う時にしか関わらない。悲しいがモブの出番はこんなものだ。モブになるのだ私。でしゃばっていてもストーリーを変えるだけ。変えないようにしなければならない。

そう思い目を閉じた。



-旅路の命は旅用の金-
(旅先で頼りになるのは、何よりも所持金であるということ。 旅先では命と同じくらい所持金が大切であるということ。)






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