「お前、何者でィ」

本日は…なんて言えないくらいの状況。
私はどうすればいいのか、ここで「はい違うところからトリップで来ましたー!あなたたちのこと知ってます!」なんて言ってみろ…これこそ逮捕で洗いざらい言わされてここの世界の話が変わってしまう可能性がある…!これだけは避けなくてはいけない!

「知りません、田舎なのでそんなのありがちなのでは?」

「…田舎でも出生届くらい出してらァ」

ここは銀魂の世界だったー!普通の江戸みたいな感じで話しちゃったけど違うわ!ど、どうしよう…
沖田さんの目線が疑いから、確信に変わる目つきと、空気を感じた…。やばい…やばい…
そう思っていると、ぐん!と腕を持ち上げられた。

「え!」

「何してんの」

「銀さん…!」

ここにはいなかった銀さんが私を席から立たせてくれた。

「なんでィ、旦那。あんたには関係ないでしょう」

「うるせぇな、名前は万事屋のモンだ」

「………あんたこの女危ないですぜ」

「こちとらあぶねーもん3匹もいんだよ、1匹増えたくらいじゃあぶねーもんも危なくねぇんだよ」

「何を知ってるかわかりやせんがね、素性を知れない女を野放しにできるほどウチは寛大じゃねぇんでさァ」

「ふーん、そんなやつここにはたくさんいるけどなァ」

雰囲気が痛い、2人とも目が笑っていない。

「ぎ、銀さん…」

「帰るぞ、名前」

「え、うん…」

手を引かれながら歩く私と、チラリと後ろを見ると目が怒っている沖田さんが私たちを見ていた。

ファミレスから出ると、アパートの方に私の腕を引いて歩いていた。引かれる腕が痛い。

「銀さん、銀さん!」

「悪りぃ…」

パッと離された腕は少し痛かった。

「お前なんで、沖田くんに目ェつけられてんの」

「わかんないよ…」

「わかんねぇって…。いや、多分あいつ…」

「え…?」

「…いんや、なんでもねェ。帰るか」

「うん…」

銀さんが、ん、と手を出してきて、私は指を絡めた。再び繋がれた手は、優しかった。







名前と別れたあと、コンビニでいちご牛乳を買い忘れたことに気づき、すぐ出た。ついでに新八と神楽の夜ご飯もだ。
そしたら、たまたま目についたのが、沖田くんと名前がファミレスに入る姿。なんだ、あの2人仲良いのか?なんて思ってても話してる雰囲気がよくない。
俺は、多分こっちの世界に来たことを沖田は突いているんだ、と直感してそばに行けばやはり突かれていた。

名前は真選組の奴らには話そうとしていない。多分話したところでブタ箱に閉じ込められるか、それとも洗いざらい吐かされてこれからの未来が変わることが嫌だから離さないのか…、多分どちらもあるだろう。
ファミレスに入り、名前の腕をぐん、と持ち上げて、「何してんの」と声をかけた。

沖田くんは、今お前が来るんだ、と目つきをしてきたが、こいつがピンチの時に来るのが、かっこいいってやつだろ?そんなんもわかんねぇのかよ。

そのあとアパートに送り届けた俺は、一安心したが、どうも名前は人につけられているようだった。

「おい、出てこい」

そう言い放つと、「…旦那…」とジミーくんが出てきた。

「お前…なんでつけてんだよ」

「…沖田隊長に言われまして」

「なんて?」

「…この前真選組で餅つき大会をしたんです、その時に苗字さんはご両親の話をしてたみたいで。それで沖田隊長は"喧嘩して家出したなら仲を持ちたい"と」

「…はぁ…仲ってよ…どうんだ、お前らには関係ないことだろ」

「そ、そうですけど…でも…」

「でも?」

「…多分、お姉さんと重ねてるんじゃないかと」

「お姉さんって…あの?」

お姉さんとは、沖田の実の姉であるミツバのことだ。しかしその姉も騙され、そして亡くなった。

「…苗字さんは、気立もよくて優しくて、それでもちゃんと芯を持つ一歩引いた女の人だから、多分…」

「ヘェ…」

それでも、名前を嫌な思いにさせたことには変わりない。そして、沖田は名前に好意を抱いていることも。

「…本人から話したいと思った時に話すと思うから、ほっといてくれねェか」

「…はい…わかりました」

ジミーくんはそう呟くと、サッと消えた。さすが監察。

「………」

どうすっかな…。そう思い頭をガシガシとかきながら万事屋へ帰った。

山崎の数メートル後方、山崎と銀時以外にいた影があったことも知らずに。



-明るけりゃ月夜だと思う-
(考え方が単純で現実を知らないことのたとえ。外が明るいとすべて月夜だと思う意味)






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