ある夜、銀さんから電話がかかってきた。
「色々片付いたから会いたい」と。じゃあ明日万事屋へお団子持っていくね、と伝えて電話を切った。

「……いや…あの…」

「………ごめん」

「………いやごめんじゃなくて」

「………………」

目の前にいる銀さんとそれを挟むごとくいる神楽ちゃんと新八くん。
2人の姿は、茶色いかたまり、まさにアレだ。

「だって仕方ねぇだろォ、出てきたもんが汚物だっただけだ、ゲロとうんこなんてかわんねぇだろ」

「まって銀さん。ここはね原作でもアニメでもないの。ここ、夢小説。読むの大体女の子、わかる?うんことかゲロとか言えないわけ、わかる?」

「いや名前めっちゃ言ってるし」

「言ってないし何言ってるの」

銀さんはぼりぼりと頭を掻きどうすっかなーと言い出した。
その時、電話が鳴り銀さんが出る。

「はいはいーと…あ、たまか。おう、うん、うん、あ!マジか、よかったわ」

そういい電話を切ると銀さんはほっとした顔つきになった。

「おい、オメーら源外のじーさんのところ行くぞ。戻るかもしれねぇ」

「本当ですか!」
「本当アルか!」

「じゃあ行くか、っと、真選組にも電話すっか…」

銀さん真選組にも電話するんだ。優しいな…。







源外さんのところへ到着し、卵かけご飯製造機の様なものでみんなを次々と戻して行った。よかった…。

「おい」

「はい、って土方さん」

「迷惑かけたな」

「いえ、意外と楽しかったです。銀さんの姿で面白かったです」

「そーかい、よかったな」

「はい」

土方さんはタバコをふかしながら私と話していた。やはり土方さんはこうではないと、タバコをふかしながら公務を全うする姿はさすが様になる。

「何やってんの多串くん、うちの名前ちゃんにちょっかいやめてくんない?」

「ちょっかいなんかじゃねぇ腐れ天パ。お前もうちょっとそういうのやめたらどうだ」

「はァ?」

「嫉妬深い男は嫌われんぞ」

「うるっせぇ!嫉妬なんかじゃないですぅー仲良いだけですぅー、なぁ?名前ちゃん」

「私は土方さんみたいなクールでかっこいい人好きですよ」

「え!マジ!?ちょやめて!」

「嘘だよ」

銀さんはわたわたとしたりホッとしたり、ころころ表情を変える男だ。一緒にいるのは楽しい。



「では源外さん、ありがとうございました」

新八くんが源外さんへ言った。

「いいってことよ。もどってよかったなァ」

「本当アル、もうこんなのコリゴリネ!」

「俺は入れ替わる前でよかったけどな!」

「近藤さん、それは俺たちが困る」

各々やっと本来の体に戻り、安心している様だった。真選組の4人はではこれで、といい出て行った。長谷川さんも仕事決まったのに…と自負の念に押されながら公園へ戻って行った。私たちも万事屋へ戻った。

「はー疲れたアル」

「疲れたね…」

「あ、じゃあ甘いもの食べる?」

私が、万事屋の裏手にできたケーキ屋のパフェ食べよう、と提案した。
神楽ちゃんが目をキラキラさせながら食べたいアル!と言ったので外に出たついでに食べようと向かった。






パフェを食べた後、万事屋へ戻ってきたが、新八くんと神楽ちゃんは気を利かせてくれたのか私と銀さんを2人きりにしてくれた。
なんか、申し訳ない…。

「…なぁ」

「え、なに?」

なんか2人きりだと意識すると緊張してしまう。なにこのドキドキ感、やだ、なにこれ。

「…ん」

銀さんが腕を広げてくれて、こっちを見ている。まってなにこれ、緊張しちゃうよ。
私は吸い込まれる様にその腕の中へ収まる。
どきどき、と伝わる。私も銀さんも、そんな音が聞こえる。

「ぎ、銀さん…」

「…おう」

「なんか、その、緊張するよ…」

「名前すげードキドキしてんな」

「ぎ、銀さんもでしょ!」

「好きな女だからな」

「す…」

そんなこと言わないでよ、より意識しちゃうじゃん。

「………」

銀さんは私の背中や頭を撫でている。
頭を撫でる手から頬へ移る。頬から顎へ手が移動してくい、と顎を持ち上げられた。

「あ…」

「…キス、していい?」

「え、と…うん…」

「じゃ、目つむって」

多分私顔真っ赤だ、唇カサカサしてるかもしれない、まって瞼震える心臓痛い、死にそう。

「ん…」

ふに、と唇に伝わる感触と銀さんの髪がかかる。銀さんとキスしてる、私、銀さんとキスしてる。

「…ぷ、顔真っ赤」

「ぇ…」

「ほっぺ、あちぃ」

私の頬を両手で包む銀さんと目が合う。私はこの人とキスをしたんだ、心臓がはち切れちゃうくらい痛い。

「ぎ、銀さんも、耳、赤いよ…」

ふと目線を耳に向けると少し赤くなっていた。銀さん照れるんだ、照れるんだ。

「ばかやろう、好きな女とキスしてんだそりゃこうなるわ」

「う、うん…。あのさ」

「うん?」

「わ、わたし殺されちゃうかもしれない!」

「待てなんでだよ!」

「だって!あの坂田銀時だよ!?私はここにいるのも本来なら場違いなのに、この世界の人たちにも殺されそうなのに、元の世界の人たちにも抹殺されそうだよ!どうしよう!」

「落ち着け、今ここには俺と名前しかいない。誰も見てねぇよ」

「ぎ、銀さん…これ、夢?」

「現実だな」

「…げんじつ…きす、しちゃ…」

「嫌だったか?」

「やじゃない!好きだから、あの、私、不釣り合いじゃないかなって…」

「はぁ…」

ため息をつき私を再び抱きしめる銀さん。

「そんなことねぇだろって。自分を卑下するのやめろよ」

「う、うん…」

「…もっかいキスしていい?」

「え!」

「ヤダ?」

「いや、……して、ください…」

「…おう」

再び銀さんはちゅ、とキスをしてきた。
幸せだと、思う時間だ。
でも、緊張して倒れちゃいそうだ。

「なぁ名前。次はこれな」

「え…?」

べぇ、と舌を出す銀さん。待ってなにこれ。

「べろちゅー」

「べっ!ひ、卑猥!変態!」

「なんでだよ!」


-開いた口へ牡丹餅-
(努力もなしに思いがけない幸運がやってくること)







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