本日も晴天なり本日も晴天なり。団子屋も繁盛しています。忙しいと中々外の様子も見れません。お店の中にいたが突然、ガシャン!という音がした。なんでも後から聞いた話だと「2人トラックにぶつかったらしいよ」と噂が立っていた。
大変だなぁとこの時は他人事だった。
毎回仕事終わりに余った団子を私だけでは食べきれないから銀さんに持っていっている。もう飽きてない?とかもうやめる?とか聞くけど「甘味を食えるだけありがたい」と言ってくれるので、甘えて万事屋へ持ってきている。
今日も今日とて変わりなく持っていくことにした。
「銀さーん、新八くーん、神楽ちゃーん」
ガラリと扉を開けるとしん…という空気だった。なぜ、どうした…。
失礼ながらリビングへ行くとボロボロの銀さんがソファーに正座をしていて、その反対側のソファーにあぐらをかいた新八くんと神楽ちゃんがいた。ど、どうしたの何これ何これ。
「明日こそ給料払うネクソ天パ」
「今まで未納の給料早くしてくださいね」
と2人とも怒っていた。
「どうしたの…?」
「あ、名前さんこんにちわ。はぁ…このクソ天パ、有り金全部パチンコに使ったんですよ…信じられますか?」
「…これは…銀さんが悪いね…。銀さん社長なんだからちゃんとしましょうね」
「お、おう…」
「僕は帰りますね。銀さん、明日には必ず給料くださいね」
そういい少し怒っていた新八くんは万事屋を出た。あの新八くんが怒るくらいだ、銀さんはやらかしたのだろう。神楽ちゃんも「ムカつくから酢昆布買ってくるアル」と万事屋を出て行った。
「…銀さん、ちゃんとお給料払わないとダメだよ?神楽ちゃんも新八くんも生活があるんだから」
「お、おう…」
「…銀さん?」
銀さんはいつもと違い、キョロキョロと万事屋を見ていた。何この他人行儀な感じ。しかも私のことを見ない。いつもなら「団子くれよー」とか「仕事どうよ?」とか言ってくれるのに。まぁ、私もうまく仕事していると思っているのだろう。
「…銀さん、どうしたの?」
「え!いや!あの、えーと、苗字さん、じゃなくて、名前?は、その俺のどんな関係なんだ?」
「どんな関係って…え、どうしたの?」
「い、いや!?まぁあの、一応確認というか、な!」
「え…私と銀さんは付き合ってるじゃん」
「あ、あー!そうだよなぁ、銀さんうっかりうっかり!(って万事屋と苗字さんは付き合っていたのか!そりゃ総悟があぁなるわけだよ!)」
「ふふ、どうしたの?いつもの銀さんじゃ無いみたい」
「そ、そうか!?ある意味生まれ変わったというか!あはは!」
銀さんの様子がおかしい、というかこんな他人行儀なのかな…?まぁいいか…。
「そう?あ、あのねお団子持ってきたの。食べるよね?」
「お、おう!」
「銀さんさあずき好きだから親父さんが残ってるあずき全部のせてくれたよ!」
お団子の包みを開け多量にのっているあん団子をあげた。
「お、おう!ありがとうな、銀さんうれしー!(こ、こんなのアイツ食ってんのか!?しかもこの量!多量すぎねぇか!?)」
「…銀さん、どうしたの?そんなこといつも言わないじゃん」
「え!そうなの!」
「そうなのって、銀さん…どうしたの?」
「ち、ちが…」
銀さんの顔をよーく見ると銀さんは私の目から視線を逸らした。なぜだろう、なんか、変だ。
「私に隠していることあるの…?もし私以外に好きな人ができたら言ってね…」
「ち、ちげぇよ!そんなやつできてねぇよ!うんうん!」
「本当…?」
「う、うん…(このキラキラした目、嘘をつくのが心が痛い…いや、いうべきだろう!)
あのよ、名前」
「うん…」
「…俺、万事屋じゃねぇんだ…」
「…いや銀さんじゃん」
「だからこの見た目は万事屋だけど、中身は土方だ」
「…土方さん…?」
「あぁ」
「………土方さん」
よーく見ると目元がいつもよりキリッとしている。こんな銀さん見たことがない、いやかっこいいのは変わりないがこんなキリッとしたことは無い!
「ほ、本当に土方さん!?」
「おう…」
「………あ!じゃあまさか今日の事故って銀さんと土方さん?」
「そうだ。これでヤツと俺は入れ替わったらしい。今日病院にも行ったが原因は現在わからずだ」
「そっか…」
銀さんと土方さんが入れ変わったということは、今土方さんの身体に銀さんが入っているということだ。しかし会いに行きたくても突然理由もなく行けるわけがない。
「じゃあえっと、土方さんはどうするんですか?」
「とりあえずあいつらに給料を払う。こんなまで放置しやがってあの野郎…。それと規律が現在万事屋には無い。規律があればシャキッと規則正しく動くからな。それを決める」
「な、なるほど…」
あの銀さんの見た目で土方さんがいいそうなことを言っている。いやすごいな…。
「では私はこれで失礼します」
「え!帰るのか!」
「はい、あのどうしてですか?」
「まぁその、付き合ってる男女は一緒にもっと過ごすモンだろ…ていや中身俺だから…ごめんな」
そう土方さんは言い、私の頭を撫でた。
こんな銀さん見たことがない、なんかときめいてしまった。
「ありがとうございます、土方さん。私と銀さんはそんなベタベタする様な仲ではないんです。みんなの銀さんだからこそ、一歩引いて居なきゃですからね」
「…そうか…(そんな、切ない顔するんじゃねぇよ)」
「では、私はまた後で。土方さんに会ったら、体調どうか聞いてみますね」
「お、おう、ありがとうな苗字さん」
「はい、土方さんもよく寝てくださいね」
ガラリと扉を閉めアパートへ歩き出した。
入れ替わったということは卵かけご飯製造機だろう。頑張ってほしいな…。
そう考えていると大江戸マートへ入る土方さんを見つけた。あとをつけてわたしも大江戸マートへ入る。そこで、飴を買っている土方さんをみて、銀さんだなぁと思ってしまった。
「土方さん」
「え!名前!じゃなくて…えーと、アイツなんて呼んでたんだ…えーとえーと…あ!苗字さん!」
「土方さん飴買うんですか?」
「おう!あの、久々に糖分入れねぇとイライラして仕方ねぇからな!」
「…ふふ、そんなこと言わなくていいよ、銀さん」
「え…?」
「さっき万事屋へ行ったんだ。それで土方さんが話を聞いて。銀さんに会ったら身体のこと聞いておきますね、って言ったの。
銀さん身体の調子どう?」
「お、おう…そうか…。まぁ、ヤツと大体背格好にてるから平気だけど、真選組のあの堅苦しさは嫌だなァ」
「でも土方さんがやっていたからね」
「そうさなァ…まぁ俺らしくやるわ。名前にも迷惑かけるな、毎日あの団子を食えねぇのが悔やまれるぜ」
「じゃあ銀さんが元に戻ったらなんか美味しいもの食べようか」
「お!まじで!やった、じゃああのパフェは?万事屋の裏手にできたケーキ屋の」
「いいね、じゃあそれにしよう」
「やる気出てきたわ。ありがとうな」
土方さんもとい銀さんは私の頭を撫でる。うわ、なんか変な感じ…。銀さんの目つきだけど、土方さんなわけで照れちゃう。
「…なんだよ、照れてんなよ。ってかこの身体土方クンだから?」
「だっていつも銀さんじゃん。いつもの銀さんも好きだけど、土方さんだと変な感じするっていうか」
「………(なんかもやっとする)」
「じゃあ元に戻る様に頑張ってね、銀さん!」
「おう、ありがとうな名前」
こうして大江戸ストアから一緒に出た。銀さんは真選組へ、私はアパートへ。
これからどうなるかな…大変そうだなぁ…。
とりあえず数日は会わない方がいいと思うから万事屋へ行くのはやめようと思った。
一方たまたま大江戸ストアの前を通った沖田。
「…なんでィ」
目線の先には土方と名前の姿があった。雰囲気はいつもの雰囲気ではなく、恋人同士の仲睦まじい雰囲気だった。
「あいつ、旦那がいてアイツにもそんな顔して、なんで…」
俺にはそんな顔をしないくせに。
俺には怯えた顔をするくせに。
俺には仲良く話してくれないくせに。
「…イライラしてしかたねェ」
目線を外すと歩き出す沖田。
事実を知らない沖田だった。
-及ばぬ恋の滝登り-
(どんなに努力してもとうてい不可能なことのたとえ)
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