夢を見た。
もう1人の私が出てきて、全てを忘れたいと。
でも私は思い出したい、あなたが築いてきたこの関係を。何があったのかは知らないが思い出すべきだと。

「…ぅ…」

朝から頭が痛い。夢を見たせいだろう。

「おはよう、て、頭痛いのか?」

「…銀さん、おはようございます…。少し痛くて…」

「昨日の今日だ、ゆっくり思い出せばいいよ」

そういい銀さんは台所へ向かった。朝食を作るのだろう。私も作ると言ったが「頭いてぇやつにそんなまかせらんねぇよ」と言われソファーでテレビを見せていただいた。
テレビを見ているとキャスターが、今日の天気晴れでーす!と言った。

そうだ、今日は着物の着方を教えてもらおうと思い銀さんへ言ったら「じゃあババアに教えてもらうか」と言われた。朝食を食べたあと万事屋の下の階にあるスナックお登勢へ行った。
ことの経緯を話すとお登勢さんと呼ばれた女性は「そうかい…じゃあまた初めましてだね。いつか記憶は戻るよ」と言われた。
また、切ない顔をする。
私はどんな感じだったのか。

お登勢さんの部屋で着物の着方を教えてもらっていた。意外と難しいが、慣れるしかない。

「……名前は、いい子だよ。何も知らないところへ来てそれでも自分の足で一歩ずつ進むんだ。だから絶対に記憶は戻るよ」

「お登勢さん…」

「ほら、どうだい」

「わっ…ありがとうございます!」

「…また困ったことがあったらいつでも来な」

「はい」

お登勢さんに着付けをしてもらって、今日は銀さんに江戸の町を紹介してもらいに行く。
アパート近くに行くと「名前ちゃん!」とたくさんの人に声をかけられる。お魚屋さんや惣菜屋、アクセサリー屋など。
私は凄い人らしい。

「んじゃ最後は働いてる場所に行くか」

「はい」







「オヤジー、名前連れて来たぞ」

「名前ちゃん!大丈夫かい!?俺ァ心配しちまったよ!」

「名前ちゃん平気かい?記憶がないなんて…信じられないよ。ほらうちの団子食べてくれよ、何か思い出すかも知んないからさ」

夫婦の2人が私に話しかけて来た。
そして泣きそうな顔になりながらどうやって働いていたか色んなところを見せてけれた。
お土産にお団子を持たせてくれて万事屋へ帰ることになった。

「…なんか、凄いですね」

「んあー?」

「私は、ちゃんとしてて」

「……まぁな、結構しっかりしてたぜ」

「そうですか…」

今の私とは違う、みんなの顔を見ると切ない。

「まー万事屋で団子食べて、アパートから持って来たもの見てみようぜ」

「はい」







銀さんはテーブルに化粧ポーチやスマホ、身の回りのものをアパートから持って来ていた。私は化粧ポーチを見て、前の世界の私と好みが同じようで安心した。
銀さんはノートを見ていた。

「…!」

「銀さん…?」

「…名前は会っていたのか…」

そう呟いた。会っていた?誰に?

「これ見ろ」

そういいノートもとい手帳のメモ欄を見せて来た
・私は元に戻れる
・高杉に言う
・天人達による成功者
・もう、関わらない

「…なに、これ…」

「もう関わらないっていうのは何だろうな………、待て、俺たちとってことか?」

「え…?」

「名前は、帰るからもう関わりたくないと思っていたのか?」

「…関わりたく、ない……!っ痛い…!」

「名前!」

「痛い!銀さん、痛いよ…!」

「名前、落ち着け、平気だ」

「ぅ…」

頭を抱えてしゃがむ私に銀さんはぎゅっと抱きついた。その瞬間走馬灯のように記憶が流れてくる。
頭が痛いのとその走馬灯のような映像に最後、もう銀さん達と関わらない、と切ない声で聞こえた。




「……はぁ、はっ……」

「名前…?」

「銀さん…私っ…ごめんなさい!避けててごめんなさい…!私、みんなと関わりたい、でも、私は帰る存在だから、関わっちゃ帰りたく無くなるからっ!」

「名前、落ち着け」

「だから、私っ、神楽ちゃんに遊ぼうって言われてても体調悪いって嘘ついて、でも本当は遊びたかった!銀さんともパフェ食べたり、新八くんともお通ちゃんのこと話したかった…!」

痛みとともに涙も流れる。

「名前!落ち着け…!」

「………銀さん…私…あなたが、」

「名前…」

「…っ……」

そうして記憶が閉ざされた。







名前が手帳の言葉を見ると、咳が切られたように話した。車に轢かれる前、何故こんなにも会わないのかやっとわかった。
夏祭りの時高杉と会い、すぐにも帰れると言われて、名前の中で「これ以上関わったら帰りたく無くなる」という理由で避けていた。そして最後、何を言おうとしていたんだ。

「名前…」

身体を持ち上げ布団に寝かせる。すこし汗をかいているようだ。こんな女の子が1人知らない土地で生活するのは大変だ。けれど名前はやっていた。大変なのは俺がわかる。








「ん…」

目を覚ますと隣に神楽ちゃん、隣に新八くんが寝ていた。

「…あれ…」

目を覚ますと徐々に思い出して来た。何故か私は車に轢かれ、記憶喪失という小説的な展開になっていた。
いや私すごくない?記憶喪失ってすごくない?夢小説じゃん!と1人のツッコミをしていると「起きたか?」と銀さんの声がした。

「銀さん…」

「話がある、こっちこいよ」

「…うん」

銀さんの後ろをついていき万事屋のリビングへ来た。
テーブルを見ると私の手帳を見せられた。

「これ、どういうことだ」

「…これは…」

「あの夏祭りのとき、高杉とあったんだな」

「……うん…」

「何があった」

「…夏祭りの前の日に河上万斉に会ったの。多分私を見に来たのかもしれない。そして次の日高杉に会った。
高杉は私がトリップした理由は天人が原因でこっちへ来た、唯一の成功者として結果を出しているらしい。
でも蓋を開ければ江戸で起きているのはただの瞬間移動でしか無く、何故私がトリップできたのかは謎らしい、でも帰りたければ俺に言えと高杉に言われたの。

それで確信した、私は帰るべき人間だから銀さん達と関わりすぎると、より帰りたくなくなるから避けようって」

「…はぁー…」

「ご、ごめんなさい…」

「んで?記憶を取り戻した名前ちゃんはどうしたの?」

真剣な顔をして聞く銀さん。

「…私は、まだみんなと関わりたい。みんなと思い出作りたい」

「…そうか…なら安心した。またどこか行こうぜ」

「うん!」

そう話していると、寝室から神楽ちゃんと新八くんが出てきて「名前さん!?」と叫んだ。

「新八くん!神楽ちゃん!ご心配おかけしました、もう大丈夫だよ!」

「…名前ー!心配したアル!バカバカ!」

「ごめんね神楽ちゃん、また遊ぼうね!今度神楽ちゃんが遊んでること、一緒にやりたいな」

「もちろんネ!」

「新八くんもありがとう。今度お通ちゃんのCD聞かせてね」

「はい!」

神楽ちゃんはぎゅっと抱きついて来てワイワイ話している。よかった記憶が戻って。
それと倒れる前、銀さんに好きだって言わなくてよかったと安堵した。それはまだ言えない、秘密だ。



-縁は異なもの味なもの-
(男女の縁はどこでどう結ばれるかわからず、不思議でおもしろいものであるということ)





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